黒い天使
2020年11月25日
「永遠に僕のもの」
ルイス・オルテガ監督 2018年 アルゼンチン/スペイン (録画)(wowow)
1971年、ブエノスアイレス。17歳の少年カルリートス(ロレンソ・フェロ)は盗みに入った邸でレコードをかけ一人で踊っている。彼には罪悪感も恐れもない。自由で美しい。
ある日、学校でラモン(チノ・ダリン)という青年を見つけた彼はケンカを売って仲良くなる。ラモンの父親も盗みで生計を立てており3人はチームで稼ぐことにした。ラモンもラモンの父親も普通の小悪党だから盗みに入る前には計画を立て恐怖を感じながら慌てて強奪作業に入る。でもカルリートスは違う。これは友達との遊びだ。ショーケースの美しい宝石を眺め、身に着けてみたり。『生きているんだ。楽しまなきゃ』と余裕。
邦題はちょっとアレかも。原題の『天使』の方が合っている。天使は善を無意識に行っている。カルリートスも無邪気に欲しければ盗み邪魔だと思えば殺す。やっていることは人間界では悪とされていることだが大好きなラモンと一緒にいるための行動のひとつにすぎない。お金にも興味がない。カルリートスの感情が動くのはラモンに関する時だけ。ラモンと出会ってカルリートスは初めて人間らしい感情を持ったのかもしれない。
演じるロレンソ・フェロが唯一無二の存在感を放っている。体形もお腹がちょっとぽこっと出ている幼児体形なところも天使っぽい。甘すぎず適度な湿り気をまといながら軽やかで汚れることがない。
拘置所から逃げ出したカルリートスは列車の中で涙を流す。それはラモンを失ってしまった自分自身を憐れんでいるのか。初めて知った孤独の痛みなのか。誰もいなくなったラモンの家で過ごすカルリートスは置いて行かれた子どものようだ。
ラスト、多分警官に囲まれていることに気づきながらラジオから流れる曲に合わせて踊るカルリートスは相変わらず美しく魅力的だ。でもオープニングの時と違ってその姿からは痛みさえも楽しもうとする凄みのようなものが伝わってくるのだった。
モデルとなった『黒い天使』は終身刑を言い渡され現在も刑務所の中で生きているそうだが、私の中でカルリートスには踊りながら警官たちにハチの巣のように撃たれ、血みどろの中、美しい笑顔で死んでいるのです。
1971年、ブエノスアイレス。17歳の少年カルリートス(ロレンソ・フェロ)は盗みに入った邸でレコードをかけ一人で踊っている。彼には罪悪感も恐れもない。自由で美しい。
ある日、学校でラモン(チノ・ダリン)という青年を見つけた彼はケンカを売って仲良くなる。ラモンの父親も盗みで生計を立てており3人はチームで稼ぐことにした。ラモンもラモンの父親も普通の小悪党だから盗みに入る前には計画を立て恐怖を感じながら慌てて強奪作業に入る。でもカルリートスは違う。これは友達との遊びだ。ショーケースの美しい宝石を眺め、身に着けてみたり。『生きているんだ。楽しまなきゃ』と余裕。
邦題はちょっとアレかも。原題の『天使』の方が合っている。天使は善を無意識に行っている。カルリートスも無邪気に欲しければ盗み邪魔だと思えば殺す。やっていることは人間界では悪とされていることだが大好きなラモンと一緒にいるための行動のひとつにすぎない。お金にも興味がない。カルリートスの感情が動くのはラモンに関する時だけ。ラモンと出会ってカルリートスは初めて人間らしい感情を持ったのかもしれない。
演じるロレンソ・フェロが唯一無二の存在感を放っている。体形もお腹がちょっとぽこっと出ている幼児体形なところも天使っぽい。甘すぎず適度な湿り気をまといながら軽やかで汚れることがない。
拘置所から逃げ出したカルリートスは列車の中で涙を流す。それはラモンを失ってしまった自分自身を憐れんでいるのか。初めて知った孤独の痛みなのか。誰もいなくなったラモンの家で過ごすカルリートスは置いて行かれた子どものようだ。
ラスト、多分警官に囲まれていることに気づきながらラジオから流れる曲に合わせて踊るカルリートスは相変わらず美しく魅力的だ。でもオープニングの時と違ってその姿からは痛みさえも楽しもうとする凄みのようなものが伝わってくるのだった。
モデルとなった『黒い天使』は終身刑を言い渡され現在も刑務所の中で生きているそうだが、私の中でカルリートスには踊りながら警官たちにハチの巣のように撃たれ、血みどろの中、美しい笑顔で死んでいるのです。
matakita821 at 10:04|Permalink│Comments(0)