読書(マンガ含む)

2006年05月18日

「うさ男とねこ男」まきのゆうき

 さて、これは、この前、夫が出張に行った時おみやげに娘に買ってきたものだ。
急いでいたんで、話題本のコーナーに置いてあった本を
中身も見ずに掴んできたそうで・・
ほのぼの系の漫画のつもりで買ってきて、私も表紙を見たときは
「珍しいな・・・大人の絵本系?」と思ったのですが・・・
見事に裏切られました。
 しょっぱなから、衝撃が・・・娘も「げっ・・」
「ちょっと、アンタ、よくもこんな残虐な本、家に持ち込んでくれたね」
感謝から一転、責められる夫。

 な〜んて、大騒ぎしてみましたが、わりかし好きかも・・
簡単に言うとねこぢるの漫画に似た雰囲気の漫画です。
 子供の世界独特の残酷さと不条理、かわいらしさが同時に存在していた
不思議な雰囲気のねこぢるの漫画に
私もかつて夢中になりました。
 



 この漫画とねこぢるとの違いは湿度と光度。
ねこぢるの漫画にはいつも昭和を感じさせる湿り気のようなものがあった。
そして、主人公達はリアルな悪夢のようなぎっしりと詰まった闇の中を
ひたひたと歩いていた。
 たとえその場面が昼間でも主人公の周りには闇が見えた。

 でも、「うさ男とねこ男」の方は、どこまでもドライ。
そして軽い。
乾燥した砂場を連想させる。
湿り気なんてまったく感じさせない真昼間の照りつける太陽の下って感じ。
それは、健康的って意味じゃなく、
まるでお酒をしこたま飲んで徹夜でぐらぐらした頭に
陽がカーーーッっと刺してきてる様な。
 
 時々コマの間に漂う妙な間に笑ってしまう。
しかし、この漫画、犬はけっこう虐待されるので、
愛犬家の方は覚悟して読んだほうがいいかも・・
ねこぢるうどん 1 (1)
ねこぢる食堂
ねこぢるまんじゆう
ぢるぢる日記


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2006年05月01日

「とりぱん 1」とりのなん子

 「とりぱん」って何だ?アヤパンとかそういうたぐいのものか?
と疑問に思いつつもついレジに行ってしまったのは、
表紙に書かれていたアオゲラ(アカゲラなら知ってるが)の絵がすごくきれいだったから。
 読んでみたら、「とりぱん」とは鳥たちのためのパンでした・・。
(絵を見た段階でわかれよってね〜)
著者は鳥達のためにパンの耳を大量に買っているのだ。
 
 私、そんなに鳥には興味ないんだけどな〜完全な猫派だし・・
猫派から見ると、鳥って獲物だし・・(汗
いや・・うちの猫がよく捕ってきたり獲ろうとしたりするんで、
私もついそういう視線で見てしまうんですよ。
決して私がどうこうしてる訳では・・
 と、このように猫派から見る世界と鳥派から見る世界は違うんですよ。
だから、鳥派の意見も聞いてみよっかな〜と・・・

 帯には
「ちょっと変わってて、少しクールで割りと背が高い、北の町にすんでいるイトコからの手紙 
そんなような漫画です」
と書いてありますが、本当にそんな感じ。
 ちょっと天気のいい日に(暑すぎず寒すぎず)一人で買い物に行った帰りに
ふと空を見上げたら気持ちがよくて「もうすぐ春だな〜」と思わずつぶやいてしまうような、
そんなせいせいとした雰囲気が味わえる漫画です。
 
 北の町ってどこよ?と思ったら東北のとある住宅地だそうです。
小学校は最北端にあったって書いてたからそこら辺なのかな?
同じ北の町でも、北海道より来る鳥の種類が多いな〜と思っていたら
やはり多少は南の方だったのね。

 この漫画にも猫は出てきますよ。
裏表紙にも載っているちょい太目の猫は著者の裏のお宅に住んでいるミーちゃん、
たっま〜に出てきて、猫派に潤いを与えてくれます。
 現在モーニングに連載中で、鳥以外の動物もけっこう出てきてるらしい・・
 
 ところで、鳥って牛脂も食べるんだね。初めて知ったよ・・・
この本を読んで、私も鳥と仲良くなりたくてえさ台に水とクラッカーの砕いたのを
置いてみましたが・・・・まだ鳥が来たのを見たことがありません。
とりぱん 1 (1)


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2006年04月07日

「さんさん録 1」こうの史代

 突然の事故で妻を亡くしてしまったじいさん参平は、
息子夫婦の家に引き取られ一緒に暮らすことになる。
荷物の整理をしているうちに、妻がいつも書き記していたノートを発見する。
 
 『参さん あなたがこれを読んでいるということは
わたしはもしかするとこの世にいないのかもしれませんね。
 あなたの背中に笑って 怒って 
そして勇気をもらってわたしは年をとりました
わたしはあなたにこんなものしか遺せないけれど
この世でわたしの愛したすべてが どうかあなたに力を貸してくれますように』

「奥田家の記録」と名づけられているそのノートには、
自分が死んだ後、夫参平が困らないように、
生活の事(料理、洗濯、掃除の仕方)、家族の事(息子夫婦の事、孫の趣味)
などが全て書かれていた。

 こう書くと何やら哀しいストーリーのように聞こえるが、
「長い道」と同じような、のんびり落ち着いた雰囲気とちょっとニヒルな笑いが溢れてる。
そして、この作者の漫画の中では時間がゆったりと流れている。
読みながらこっちの角をまがって・・とかあそこに寄ってみようかというような
散歩でもしているような気分が味わえるのだ。

 参平のキャラクターがいい。
息子にしてみたら気難しいじいさんなのだが、
奥さんの書いたノートに素直に従っているところを見ると、
妻とは静かに愛し合っていたのがわかる。
 『気楽と言えば気楽だが、以外と大ざっぱ』でほのぼの系の息子の嫁礼花や、
『わが孫ながらほんとにうすきみ悪いガキだな』・・虫好きでちょっと変わった小学生の
乃菜との関係をノートと相談しながら、少しずつ作っていこうとする。
 読んでいるとこういう何気ない日常生活の繰り返しが、
家族を作っていくんだな〜と伝わってくる。
 後半、嫁が働くことになったので主夫宣言をした参平、孫と関わる時間も増えるだろう。
第二巻が楽しみだわ。
 


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2006年03月28日

「モリのアサガオ」 第四巻 郷田マモラ 著

 さて、第三巻では死刑を執行する側にいる直樹の心の中に生まれた「死刑制度」への疑問が
描かれたが、第四巻では死刑囚や被害者の家族との関わりの中から「死刑制度」について
さらに深く模索していこうとする直樹の姿が描かれる。

 直樹の心の中では「死刑は必要だ」という思いと「死刑はどこかおかしい」という思いが常に交錯し結論が出せない。
「理不尽に殺された被害者の家族のためにもその殺した犯人を同じ目に合わせるという事が必要なんや」
「反省もせずにのうのうと生きている死刑囚は刑に処されても当然や。
しかし、心から悔い改め償いの日々を過ごしながらいつ執行されるかもしれない死刑の日に怯えながら待ち続ける死刑囚はもう十分罰せられとるんやないやろうか?」
「自分は刑を執行する側の人間なのにそんな疑問を抱いていてもいいんか?」
一人の人間として、執行する側の人間として、直樹の心はモリの中をさまよい続ける。

 同僚の「復讐の連鎖を断ち切るためにも死刑は必要なんや」という言葉から
「死刑制度」には、犯罪を抑止する力があるのだと思う直樹。
しかし、死刑になるのが怖くて殺人をを重ねてしまった死刑囚粂野と関わった事によって、
また疑問が湧き上がる。

 もし「死刑制度」がなかったら粂野は犯罪を重ねなかったかもしれない。
さらに、死刑制度があるにもかかわらず凶悪犯罪が増えるばかりの日本。
ならばその意味は・・・?
 直樹は同年代で死刑囚となった渡瀬満の心の中を探れば答えがわかるかもしれないと思い始める。

 刑務官になった頃に比べるとその悩みをしっかりと見つめ積極的にその闇の正体をさぐろうと真摯に働きかける直樹。
「死刑」という問題の重さから、繊細すぎるがゆえに傷ついて逃げていた直樹が、
徐々に自分自身を肯定しながら自らを試練にさらしていこうとする。
 確実に成長していこうとする直樹の姿が丹念に描かれる。
その姿は、今まで死刑囚を虫けらのように扱ってきた同僚の里中の心にも変化を与える。

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2006年03月27日

「女湯のできごと」益田ミリ

 これは、昨日買ってきてすぐ読んじゃいました。
文庫のために書き下ろしされた益田ミリの知恵の森文庫第二弾です。

 銭湯に関するエッセイとミニ漫画の組み合わせ。
著者は20代の半ばで一人暮らしを始めるまでずっと銭湯に通ってきた
そうです。
 そんな銭湯と付き合いの長い著者ならではの観察眼で描かれた
女湯の世界、耳にしたおばちゃんトーク、風呂場でのマナー、ムカついたこと、
ほのぼのしたこと、銭湯に通っててよかったな〜そんな事が楽しく書かれています。

 考えてみれば他人同士が一緒の風呂に入ってるってすごく不思議な場面ですよね。
年齢も赤ちゃんからおばあちゃんまで様々、
私の住んでいるところは10時か11時までしか開いていなかったと思うけど
時間帯によっても客層に違いがあるだろうし・・。
番台のおっちゃん(あるいはおばちゃん)はそれを動じないふうに
見つめてきてるわけですよね〜

 さて、著者は小さい頃から銭湯に通っていた。
来てる人いつも挨拶する近所の人、番台のおじさん、おばさんももちろん顔なじみ。
子供時代から大きくなっていく姿を見られてきたわけだ。
 で、困ったのがワキ毛の処理なんだそうだ。
少女から大人になるに従って当然毛も生えてくる。
洗い場では堂々とワキ毛を剃っている大人もたくさんいた。
でも、いざ自分がそうなると恥ずかしくてたまらなかったらしい。
母親に「ワキ毛剃るから剃刀貸して」と言うのも嫌だし、
周りの人に「あの子ももうワキ毛を剃るようになったのね〜」と思われるのも
たまらない。
 ゆえに水泳の授業の時の体操ではいつも小さく腕を回して隠していた。
この時ほど家にお風呂があったらと願った事はなかったそうな。
まあ、結局トイレでこっそり抜くという方法で解決。
その後、同級生が剃っているのを見て、「な〜んだ、私だけがワキ毛じゃないんだ!」と簡単に自分もそのグループに入れたそうだ。
 多感なお年頃ですからね〜そりゃ悩むさ〜 

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2006年03月15日

「キッチンの穴」たけだみりこ

 猫を飼っているせいか、漫画でも小説でも猫が出てくるものはとりあえず
見る癖がついている。んで・・つい買ってしまう。
それも、猫がメインになっているものじゃなく、
ちょいと出てくるだけの方がなぜかうれしかったりする。

 映画で言うと「ティファニーで朝食を」これには寅猫が出てくる。
「時代屋の女房」にもアブサンという貫禄のある猫が印象的に使われている。
「動物のお医者さん」に出てくるミケはかなり個性的だ。

 で、この「キッチンの穴」にも猫がけっこう出てくるみたいだったんで
つい手に取ってしまいました。
 たけださんは夫の両親との二世帯住宅にすんでいて、猫は上下合わせて三匹。
副題に「漫画お料理事件簿」とあるように、
キッチンを中心として起こる事件を扱っています・・って、
別にそんな恐ろしいもんではなく、
「かにを生きたままゆでたら暴れだして怖かった」とか
「包丁を足元にシュタッ!と落としたけど怪我はなかった」
「猫のシロがそれを見ていたけど動じなかった」
「煮豆を落としたら足の間にはさまって大やけど」という笑えるものです。

 義父さんが家庭菜園をやってるので取れた野菜を利用した
お料理レシピもけっこう載ってます。
このたけださん、料理を作る時もけっこう適当らしくて
「テキストを読みながらも自分流に分量とかを自動変換」してしまうらしい。
 私も、たいていテキストの言うことをきかなかったり、
勝手に足したり引いたり、違うもの加えたりと暴挙が多いほうなので
親近感をもってしまった。
 
 アバウトクッキングとして、
ホットケーキミックス一袋を全部使って、フライパンで大きな
ホットケーキを一個作るというのが出ていて、娘に
「ねぇ、ねぇ、これ良くない?」(大発見ふう)と誘ってみたが
「え〜どうせ私とお母さんしか食べないんだからでかすぎるよ」と
冷静な意見が・・・確かに。
 でも、やってみたいぞ!

 失敗談もけっこう載っていて、
イクラをもらったんで前から気になっていた「イクラわっぱ飯」を
作ってみたが、見ていたレシピは「鮭わっぱ飯」だったとか。
 五香粉を餃子を作る時ひとふりしたら、中華街の味になったが
ふたふりしたら漢方薬の味になったとか。
 きりたんぽ鍋のセットをもらったので作ったら煮すぎて
崩れてぞうすい鍋に変更したとか・・(あるある!!)

 けっこう、他の人もいろいろ失敗したりするのね〜
でも、この方は失敗してもすぐに路線変更してうまいもんへ変えるところが
すごい・・
料理好きの方はもちろん、これから一人暮らしを始めようって方の
気軽な入門編としても楽しめるエッセイ漫画ですよ〜
 
キッチンの穴―マンガお料理事件簿


たけだみりこの極楽ゴハン―簡単美味!驚異のレシピ〈1〉


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2006年03月07日

「フリーな二人」コンドウアキ、「ダーリンはアキバ系」里中ミナ

 ちょっと札幌に行ってきたので車中で読むのにエッセイ漫画を
二冊も買ってしまった。

 「フリーな二人」はリラックマのキャラクターデザインをしている
コンドウアキさんの話。
娘がリラックマの本を持っているのだが、
そこに出てくるカオルさん(リラックマが住んでる家の主)は
輪郭だけしか出てこないんで、カオルさん=コンドウアキさんのように
思っていて、興味があったのだ。

 コンドウさんのところは旦那さんもフリー(フリーランサー、一定の会社や団体に属さないで自由契約で仕事をしている人)なんで、
フリーゆえの大変さや苦労などもかなり具体的に書いてある。
 病気になったときの保障は何もなし、時間を好きなように使えるように
思われているが何の保障もないから働けるときにがんばって働くことになり
けっこう締め切りに追われる毎日・・とか。
 でも、自分が入院した時は夫もフリーなんで融通が利く、
スケジュールは自分しだいなのでストレスからも開放されたとか・・

 しかし、フリーということにこだわらず、
普通に共稼ぎ夫婦の協力の仕方とか
家計のやりくりとか家事の分担の仕方とかも描かれてるので興味深く楽しく読めた。
 何より、二人のキャラクターがかわいい。
エッセイ漫画はたくさんあるけど、まず絵で掴まないと次には続かないでしょ。
コンドウさんの絵はプロの部分と素人くささ(学生が書いてるような)も
残してあってそこが味になっている。

 結婚生活のエッセイ漫画といえば、けらえいこさんのものが有名だが
けらさんが細かく検証しているのに対し、コンドウさんの方は
夫婦のスタンスというかカラーをなにげなく見せている感じ。

 須藤真澄さんの「長い長いさんぽ」を読んだ時にも思ったのだが、
一緒に暮らすもの同士、やっぱり振り子の触れ具合というか揺れ方が同じほうがいいな〜と。
 たとえば須藤さんの場合、愛猫の死という大変な事態に直面するわけだが、
悲しみの深さが旦那さんも同じっていうか、ゆずの死の受けとめぐあいが
二人とも一緒なんである。
二人はゆずの死というものを受け入れ、
一緒に少しずつ少しずつその悲しみを癒していく。
悲しみを分け合うなんて幻想なのかもしれないけれど、
そばにいる人が同じ歩調でいてくれたらすごく救われると思う。

 「ダーリンはアキバ系」
こっちは、好きになった人がたまたまアキバ系だったんだけど、
それを理解しようとがんばっている奥さんの話。
何か読んでたら、この旦那さん優しい人ではあるんだけど
女心がまるでわかっていないタイプ・・・この奥さん辛抱強いよな〜って感じで
読みました。 
フリーな2人

リラックマ生活―だらだらまいにちのススメ

長い長いさんぽ ビームコミックス

ダーリンはアキバ系


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2006年02月28日

「白夜行」東野圭吾

 やっと読み終わった。おもしろかったわ〜。
こういう形式の小説って初めて読んだ気がする。
惜しむらくは、ドラマを見る前に読んでおけばよかったなあ・・・
どうしても、余白をドラマで見た部分で繋げて読んじゃうし、イメージを修正しながら読むのが大変だったわ。 
 それに、ドラマを見ていなかったら、この小説の形式への衝撃度ももっと大きかったし、違った読み方になったと思う。

 この小説では主人公である雪穂と亮司の内面というか心の中はいっさい書かれていない。
しかも、笹垣の視点で書かれているので、この二人の関ったと思われる事件の記述はあるのだが、
実際のところはわからないし、あくまで笹垣の推理ではこうなってますよ・・・という話になっている。
 
 証拠はラストまで出てこない。それも、しらばっくれようと思えば逃れられる。
なぜ、二人がこういう人生を歩むことになったのかも、他の人の断片的な台詞で推察することになっている。

 先ほど、イメージの修正が大変と書いたが、唯一ドラマに左右されることなく小説の中に厳然と存在していたのが主人公の雪穂だ。
 原作の雪穂はドラマの雪穂よりも強くて完成されていて、もっと魔性な感じ。
ドラマの中の雪穂は普通の女の子が悲惨な目にあったためにゆがんで苦しむ姿が描かれるけど、
原作の雪穂にはブレがないというか、自分の邪魔になる存在をどんどん排除していくことに迷いがないし、亮司はその手足になって実行していく。
白夜行
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2006年02月06日

「美味い話にゃ肴あり」「大江戸酒道楽」ラズウェル細木

 久々にラズウェル細木の「酒のほそ道」を読み返してる時に
出会ったのがこの二冊。

 「酒のほそ道」は主人公のサラリーマンで酒好きの岩間宗達が
仕事の帰り、休日、営業の合間、一人で、友達と、同僚と、上司と、
とにかくいろんな場面でいろんなメンバーと酒を飲むだけの話。
 宗達はどんな種類の酒でもオッケーんの筋金入りののん兵衛だから、
読みながらお酒のミニ知識や肴の情報も仕入れることができる。
つーか何より、読みながら自分も飲んでる気分になれる。
そして、今度こんな酒に挑戦してみっか・・とか
こういう酒の肴もいいねぇ・・・と読みながら飲みたくなる漫画。

 「大江戸酒道楽」はこの宗達のご先祖様じゃないか?
と思われるような江戸時代の酒売りを生業にしている大七が主人公。
呑み助の大七は酒を売りに行っちゃあ〜どっかでひっかかって
商売よりも美味い酒を飲むことの方に気がいってしまう。
 雨が降ったっちゃあ飲み、やんだっちゃあ飲み、
仕事が終わったっちゃあ飲む、ついでに一休みっちゃ飲む。
のん兵衛って言うのは昔から変わらないんですかね〜
 落語みたいに江戸っ子のお気楽な日常生活が楽しく描かれています。
江戸時代の酒もうまかったんだろうなあ・・・

 「美味い話にゃ肴あり」
これは、居酒屋「酔庵」を舞台にした客達の世間話とマスターの心のつぶやきが
描かれている漫画。
 居酒屋での会話なんで堅苦しい話は出てきません。
あ〜あるあるっていうたぐいの会話です。
「おつりの渡し方の不満」とか「鳩サブレーとかたい焼きどこから食べるか」
「居酒屋における困った客とは」「居酒屋にTVは必要か」とか・・・
 酔庵ではマスターのおまかせで料理が出てくるんだけど、
それが毎回違っていて、季節と酒の種類の合わせた肴が出てくる。
非常にうまちょ〜
 一話ごとに出た肴の中から「今宵の一品」として作り方が載っているんで
そちらも楽しみ。

 ところで、先週TBSラジオ「ストリーム」の「コラムの花道」で
居酒屋巡りの達人 太田和彦さんがゲストでいい居酒屋の見分け方を話していました。
 その条件とは「小さい店で、一軒家、古くて清潔」
古い建物を大事にして、打ち水とかしてきれいに使ってるところは間違いがない。
そして、長く続いているということは、良心的で誠実な仕事をしている証だそうです。で、その二階に住んでいたらベスト。

 そして、いつ行ったらいいのかと言うと、「開店最初が一番いい」そうです。
食べものは全部そろっているし、最初の客だから気持ちよく迎えてくれる。
どこの席でも座り放題だし、煙草とかで空気が汚れていない。
 注文はまずお酒を頼む。
お通しが来たらそれを食べながらじっくりと選んでその店の一品を見抜くべし。
お通しが美味い所は信用できる。
にゃるほどね〜
 あと、女性が一人で行く場合は女将さんがやっている店に行くといいそうです。
酔っ払いが来てもガードしてくれるし、面倒も見てくれるんだって〜
 う〜む・・今晩は居酒屋メニューにしようかな〜
美味い話にゃ肴あり


大江戸酒道楽~肴と花の歳時記


太田和彦の全国居酒屋巡礼
太田和彦の居酒屋味酒覧 精選172


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2006年01月11日

ダ・ヴィンチ「きょうの猫村さん すりすり大特集」

 日月さんのブログ「日々の書付」にTBをいただいて訪ねて見れば、
今月号の「ダ・ヴィンチ」で「きょうの猫村さん」の特集が組まれていて、
しかも、あの有名な「生協の白石さん」とコラボですって?!
 さっそく、買いに走りましたともさ。
ダ・ヴィンチ 02月号 [雑誌]


 「すりすり大特集」の表紙では、枯れ葉の掃除をしながら
木の枝に頭をすりすりしている猫村さんの絵が・・・うう、か、かわいい。
そうじする猫村さんあの人もこの人も






 そして、村田家政婦紹介所の奥さんの謎につつまれた一日が
描き下ろし漫画で紹介されています。
 なるほどね〜、奥さんは猫村さんや他のみなさんを見送った後、
このように過ごされていたのね〜

 お次は「きょうの猫村さん」キャラクター紹介&相関図。
皆さんもちろんご存知とは思うけど、確認されるとさらに楽しいわよ。

 「あの人も、この人も、ネコムラー」のページでは
意外なあのお方も実はネコムラーだった?!著名人ネコムラーの紹介。

 さらに、有栖川有栖さん、角田光代さん、群ようこさんによる
書き下ろし小説orエッセイ「もしも猫村さんがうちに来たら・・・」
 私は、この三人の中では、文章から猫村さんへの愛情にじみ出ている
群さんのエッセイが好きでしたわ〜。

 そして「猫村さんから「生協の白石さん」へ質問です」では、
猫村さんの素朴な疑問に白石さんがユーモアととんちの効いた回答を
出しています。
 決して毒舌になることなく、さらりとしたユーモアで
質問を煙にまくことなくきちんと答えていらっしゃる白石さんの
姿に好感を抱きました。
やっぱり「生協の白石さん」読もうかしら・・・。
 私も地元の生協では「組合員さんの声」のコーナーには必ず立ち寄ります。
たまにおもしろい質問とかがあるのでけっこう楽しみなんですよ。
まあ、たいていは不平不満なのですが、どのように答えるかに興味があるんで。
そこの回答をされる方は多分非常にまじめで堅実な人柄なのでしょう、
笑わされるということはないのですが、いつもなるほどね〜と納得させられます。
 
 おもしろ企画としては、
「猫村さんのようなカワイイおばさんになりた〜い 
そんなあなたの猫村さん的おばさん力をチェック!」
 そうね、猫村さんのように働き者で気立てが良くて、言葉づかいもきれいな
昭和ふうのきちんとしたおばさんにはあこがれるわあ〜
診断に従って、おばさん力に磨きをかけたいと思います。

 そして、なんと!料理研究家の内田真美さんによる
ネコムライスオリジナルレシピが!
切り抜けばネコムライス用旗になるお楽しみ付録つきですよ〜
 やはり、本職の方の作られたものはキレイだわ〜
内田さんも「小魚」には悩まれたようね・・・じゃこと豆アジにしてみたんですって。

 最後に皆さんが楽しみにされている「きょうの猫村さん 2」
の場面がちらっと見ることができますよ。
やはり2巻は春になるのね・・・待ちどうしいわあ〜

 「カーサの猫村さん 1」の記事
 「カーサの猫村さん」
 「カーサの猫村さん」年末スペシャル!
 「きょうの猫村さん 1」
 「きょうの猫村さん 2」
 「きょうの猫村さん 3」
 「きょうの猫村さん 4」 

生協の白石さん
きょうの猫村さん


ねこちゃん
私もネコムラーよ!という方 ポチッとお願いいたします。 

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2006年01月08日

「もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング」

 発売された時から、ずっと気になってはいたのだ。
でも、前回の「脳を鍛える」のやつはもう何ヶ月も触っていない・・・
ごめんなさい、川島教授、うちの家族三人とも飽きっぽくて・・

 そんな時、私よりははるかにゲーム好きの姉がこっちに帰省すると聞いたんで
多分買っているであろう「「もっと脳を鍛える」持ってきてよ」と電話したら
「もう入れました」グッジョブ!さすが姉。
 で、私も姉も夫の実家から一緒の汽車で(北海道じゃ汽車!電車なんて言っちゃだめよ)帯広に帰ることになってたんでさっそく車中でやらしてもらった。

 久しぶりの川島教授、元気だった?
教授からは「どこかでお会いしたような・・・」
「そうだよ。前のやつで会ったんだよ!」 
「脳年令測定」では、「大きな声が出せる場所ですか?」と聞かれたんで
「だめだめ、ここは汽車の中なのよ」
そしたら、静かにできる暗算を出してくれました。

 でも・・・それが難しくて・・・
つーか、いかに私の脳が固まったいるか働いていないかということを
実感しました。
たしか・・(それすらも、おぼろげな記憶)
「90からどんどん7を引いてその数字を書いていく」って
問題だと思ったんだけど、
最初はいいよね、90−7=82?・・・
そっからどんどん間違って、72?73?74?
タッチペンを持って、ずーーーーっといちおう考え続ける私。
 3分ぐらいたって姉が覗くと「わっ!まだやってる!」
そして、はてしなく続いた暗算地獄からやっと開放されてみてみると
私の脳年令は「80歳」・・・・
 全員から「あーーー終わってるわ・・・」
すっかり気の毒な人に・・うう。

東北大学未来科学技術共同研究センター 川島隆太教授監修 もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング


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2005年12月19日

「おろち」1、2

 今日久しぶりに本屋に行ったら、楳図かずお先生のumezz perfection4「おろち 1」「おろち 2」が出てたのでもちろん買っちゃいました。
それと、「ダ・ヴィンチ」ラズウェル細木の「大江戸 酒道楽」も。
 好きな漫画を大人買いできる幸せ・・・子供の頃は漫画禁止だったから
隠れて読んでたからな〜

 「おろち」を初めて読んだのは中学生とか高校生とかだったと思うんだけど
まずこの主人公の「おろち」って名前が不思議だった。
しかも、この漫画じゃ「私の名はおろち」って言ったっきり何の説明も
なし。そこがまたいい。
 
 いろんな場所をさすらいながら、ちょっと気になった人間に関わって
その人間の行く末を見つめていく。見つめながら人間のこころの中を、その謎を
知ろうとするおろち。
 おろちはいちおう人間の若い女性の姿で出てくるが(年齢不詳)、
その存在はいろんな次元に渡っているような変幻自在さがある。
しかし、神のように上から見ているのではない。
まるで鏡の中から人間を見ているような距離感というか・・・まっすぐにありのままの人間をを知ろうとしている。
 そして、ほとんどは見つめるだけでその不思議な能力を人間のために使うことはない。
自分の身を守るためかよっぽど興味のある人間の生死に関係するときだけ。
関わり方のスタンスがかっちょいい。

 今回の「おろち」の中で最も好きな作品は「秀才」というもの。
子供が生まれたことを嬉しそうにお地蔵さんに報告する母親に抱かれている
赤ちゃんがあまりにもかわいかったので、おろちは興味を持つ。
 幸せそうな夫婦のもとで育っていく子供がある事件に出会ってから
この優という子とこの一家の行く末を見届けようと決める。
 事件をきっかけに父親は飲んだくれになり、母親は異常な執拗さで優に
勉強を強要して夫と同じK大を目指させる。

 さて、このおろち雨の日も風の日もこの家をみつめ続ける。
ある時は窓から、ある時は物陰から、またある時はあとをつけて、
そして、優が高校生になった時は同級生となって。
 おろちは人の記憶もあやつることができるので簡単なのだ。
って・・でも、いままでトレンチコートとか着てしぶい感じだったのに
セーラー服姿のおろちって・・・
このように、時と場合によってどのような時代のどんな服装もオッケーよという
おろち・・・いったい誰がやるのでしょうか?!

 そう、コミックスの帯に「映画化決定」と出てたのですが・・実写ですよね?
私の中ではずっと梶芽衣子だったんだよな〜
年令行きすぎ?もっと若い子って感じ?
でも、筒井康隆の「七瀬ふたたび」で七瀬役を多岐川裕美がやった時も
わたしゃ、びっくりしましたけどね〜
 え〜もっとホントに若い子がやった方が・・・とか。

 んーー、若くてこの不思議な雰囲気を出せる女優さんって誰だろう・・・
柴咲コウ・・・目がでかすぎ・・おろちと言うよりは鬼太郎とかと
同じジャンル・・むにゃむにゃ・・。

 市川実日子・・違うね〜
何か、人間臭さを排除したような硬質の感じで、神々しい雰囲気もあって、
刹那的なとこもあって、でも、目は子供みたいな澄んだ感じ・・・むずかし〜
監督もどなたが・・・気になるわ〜

おろち 1 (1)


おろち 2 (2)


 おろち誰がやるか気になるわ〜という方 ぷちっとお願いします。
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2005年12月16日

「カーサの猫村さん」年末スペシャル!

Casa BRUTUS (カーサ・ブルータス) 1月号 [雑誌]

つやつやリーダーさんからの「カーサ・ブルータス」で
「カーサの猫村さん」の特集が組まれているという情報を得て
本屋さんに走りました。
 買わずにいられますかっての・・・
猫村さん1
あった、あった!猫村さんが表紙だよ!
見開きにもカラーで猫村さんが・・
ポイントを貯めてもらった本屋の商品券を
震える手でレジに差出し、自分のものに。

 うう・・・かわいい・・・
何と増ページ48コマですよ〜!
猫村さん2猫村さん3







 今回も猫村さんは大活躍。
副編集長が英語をペラペラ話しているのを聞いて、
初めて海外出張もありの職場だと気づいた猫村さん。
「そのうち、猫村さんも一緒に来てもらわないといけないかもねー」
とミトミさんに言われ、さらに身を引き締め仕事に励むのでした。

 がんばれ!猫村さん。
海外出張のついでにぼっちゃんに会えるかもよ! 

 しかし、編集長自転車に乗って配本とは・・・
「カーサさん」から目が離せませんね〜

 このブログ内の猫村さんに関する記事
 「カーサの猫村さん 1」
 「カーサの猫村さん」
 ダ・ヴィンチ「きょうの猫村さん すりすり大特集」
 「きょうの猫村さん 1」
 「きょうの猫村さん 2」
 「きょうの猫村さん 3」
 「きょうの猫村さん 4」
ねこちゃん


猫村さん、働きすぎなんじゃ・・?と心配になったアナタ・・
ぽちっとしてみてくださる?ヾ( ´Ω`)ノ

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2005年12月06日

吾妻ひでおの「失踪日記」がドラマ化するって・・

 姉のブログに載ってたのだが、
吾妻ひでおの「失踪日記」がドラマ化されるんだそうだ。
うっそ〜ん!見たいような見たくないような・・・

 でも、あのマンガって、浮浪者として生活したりしてる間は特に
そんなに事件とかって起こらないからすごく単調な世界だと思うんだけど・・・。
マンガだと、その何もない毎日の記述が逆におもしろかったりするんだけど。
淡々としたところが笑えるっていうか・・・。
入院してからの様子に重点置くのかな〜

 さて、問題は誰が吾妻ひでおの役をやるかってことですよ。
あの複雑なキャラクターをやって無理のない、ビジュアル的にも納得のいく
役者さん・・・
 うーん、一人中年のおっさんでよく脇にでてくるんだけど、丸顔で
イガグリ頭でめがねかけてる人いるんだけど・・・名前がわからない!
けっこうがっしりした感じで背はそんなに高くない。
愛嬌のある顔で、でも、怒ると怖そう・・・って分かる訳ないってね。

 あとは〜井筒監督とかは?
ちょっとパワーありすぎるか・・・もっと抜けた感じの人がいいんだけど・・・
意外と松尾スズキとかは?何かダークサイド面が強調されすぎるか・・・
荒川良々・・・・抜けすぎか・・・。
中村勘九郎・・今は、勘三郎か・・とかは?
ちょっと上品すぎるかな〜倦怠感が欲しいよね〜
難しいわ〜
 ほっしゃん。とかは?冒険?
タモリとかおもしろいかも・・普段ぽい感じなら・・

 あと気になるのが配管工として働いている時の同僚で
すごく性格の悪い柳井という人の役。
 私はねちっこくて小ズルイというと「キッズリターン」以来
モロ師岡さんが浮かんじゃうんですよね〜
意外と、爆笑問題の田中とかやったらおもしろいかも・・・

 どっちにしろすごく楽しみだわ。

失踪日記


   このブログの「失踪日記」に関する記事

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2005年11月15日

「わたしの渡世日記」高峰秀子

 11月17日号の「週間文春」にこんな記事が載っていた。
「高峰秀子「二億円肖像画寄贈」見事な人生の後始末」(記事 斉藤明美)
海原龍三郎画伯の描いた、高峰秀子さんの肖像画十一点を高峰さんが世田谷美術館に寄贈した。その評価額は二億円を超える・・・と。

 私は高峰秀子さんのことを著書でしか知らないが、
さもありなん、この人だったら金額なんて関係なく、自分の死後のことを考えて、海原龍三郎氏から贈られた絵のことのみ心配してこういうことをするだろうな〜と思った。

 彼女の著書「わたしの渡世日記」は何度読み返したかわからないぐらいの愛読書だ。
 この本には、自分自身の複雑な生い立ち、義理の母との戦いの日々、
歌手東海林太郎との不思議な親子関係、
若き日の黒沢明との出会いと別れ、女優として関わった様々な監督との逸話、
文豪谷崎潤一郎や海原龍三郎との交流、ご主人である松山善三氏のことが
率直に、多分仕事を始めた5歳のころから見つめ続けてきたであろう厳しい目を通して描かれている。

 特に映画「細雪」のこいさん役に出演したことから始まった、
谷崎潤一郎一家との関わりを描いた文章は、興味深く読んだ。
 谷崎夫人とお嬢さんに導かれて初めて谷崎潤一郎と会った日のことを
高峰さんはこう書いている。
 
「当時六代目菊五郎とウリ二つと言われることを自他共に許していた
谷崎潤一郎の顔は、さすがに貫禄があって立派だった。
だだし、彼の顔には、天女の如き彼女らとは違って強烈な「人間臭さ」があった。
 その臭さも並大抵ではない、ギラギラと脂ぎり、ドロドロと煮えたぎる、
あらゆる煩悩をたたえた紛々たる生臭さがカッと見開いた大鯛のような
彼の目の奥に燃えているのを見て、私は圧倒された」

 上からでもなく、下からでもない。
ただまっすぐに対象に向きあおうとする高峰さんの強い意志を感じる。
彼女の文章を一言で表現するなら「潔さ」だと思う。

 そして、大画伯梅原龍三郎のことを親しみをこめて「梅ゴジ」と呼んでいた
高峰さんが初めて絵のモデルとなってその絵が完成した時の思いも綴られている。

 「当時二十五歳の私は、好むと好まざるとにかかわらず、
人さえ見れば歯をムキ出して愛想をふりまかねがならぬ「人気女優」という立場にいた。(略)
人には見せたくない部分、つまり売り物にはならぬ部分はすべてひっくるめて
心の底に隠しこんでいたつもりだったのに、
カンバスの中の私の表情は明らかにけわしく苛立って今にも泣き出しそうに歪んでいた。
キャメラの前では絶対に見せない、私だけしか知らない本当の私がそこにいた。」

 「ルノアールは目で絵を描いたかもしれないが、
海原龍三郎は「愛情」で絵を描いていると、私には思えてならない。
そうでなくて、なぜ、このように人の心の奥底まで写すことができるだろう?」

 その絵を、私もいつか見に行こうと思う。

 最後の章「骨と皮」で高峰さんは書いている。

「私は「週間朝日」の連載を書くに当たって「ええかっこしい」はやめて、
私の恥のありったけをブチまけようと覚悟を決めた。
 思い出すまま、筆の走るままに書き散らした「恥」の数々を読み直してみて・・・
私にはやはりその覚悟は浅く、筆の力も足りなく、
だだ、恥の上ッ面だけ撫でたような気がして不満が残る。
 正直に言えば、私の歩んできた渡世の道は、もっと恥多く、貧しく、
そしてみじめだったからである」

 私はこの本を読んで、文章はその人自身を表すということを改めて感じた。
真実の出し方、見せ方はいろいろあるだろうが、どうしたってその文章の中には
その人自身が潜んでいるものなんである。
 そういう意味では、この著書は彼女自身であると思う。

 女優を引退されて、記事によるとめったに外出せず大好きな読書三昧の日々を
送られているようだ。
 戦いすんで日が暮れて・・・
彼女の平和で穏やかな日々がこのままずっと続くことを遠く北海道から祈りたいと思う。

わたしの渡世日記〈上〉


わたしの渡世日記〈下〉


細雪 (上)


私の梅原龍三郎


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2005年11月07日

「トトロの住む家」宮崎駿

 これはね〜けっこう前に(1991年刊)出版された本なのですが、
時々眺めてはほわ〜んとしてしまう・・・そんな本です。

 宮崎駿さんが散歩をしていて気になった家、いいなあ・・と思った家にお邪魔させていただくという内容です。

 はっきり言って、古くて不便そうな、冬になったら寒そうな家ばかり。
でも、「『闇』みたいなものがある家。それを作った人が住む人の、
心の襞の奥行きが感じられるような」家。
 私も、そんな家が気になる。
どんな人が住んでいるんだろう。
中はどんなふうになっているんだろう。
庭はここからは少ししか見えないけど、奥はどんなふうになっているのかな・・・
 だいたい昭和ふうだったり、こじんまりした古い洋館ふうだったりする。
空想の中のおばあちゃんの家みたいな・・・
そんな家に住んだこともないのに郷愁を感じるような・・・

 本の中には家の中の写真がたくさんあるのですが、
見ていると、この家は主に愛されている家だな〜と伝わってきます。

 庭の感じは、宮崎さんも書いているように「ちょっと荒れた感じの庭がいい」。
あまりにもきちんと整えられていて、落ち葉も落ちていないような庭には風情を感じない・・・好みだと思うが。

 「となりのトトロ」を見たとき、いいなあ、こんな家に住みたいなぁと思った。
お父さんが「おばけのいる家に住むのが子供の頃からの夢だったんだ」と言って
さつきやめいが「おばけ!おばけ!」と喜ぶ場面がありますが、
そんなふうなものがいるかもしれない・・・と思わせる空間が好きなのです。

トトロの住む家


となりのトトロ


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2005年11月06日

「夕凪の街 桜の国」こうの史代

 「夕凪の街」は広島に原爆が落ちた時から十年後、
母と共に生き残った平野皆実が主人公。
「桜の国」は(一)と(二)に別れており、(一)は皆実の弟の娘七波が主人公。
(二)は成長した七波とその父との関わりを描いている。

 原爆投下から十年の月日が流れ、貧しいながらも平和に暮らしているかにみえる
が、皆実のこころの中には、以前にはなかったあるものが住みついていた。
『ぜんたい、この街の人は不自然だ。
誰もあのことを言わない。いまだにわけがわからないのだ

 わかっているのは「死ねばいい」と誰かに思われていたこと。
思われたのに生き延びているということ。

 そしていちばん怖いのは
あれ以来、本当にそう思われても仕方のない人間に自分がなってしまったことに
自分で時々気づいてしまうことだ』

 同じ職場の打越に惹かれるものを感じながらも、あの日を思い出すと
前に進めない皆実。
『お前の住む世界はそっちではないと誰かが言っている』

 多くの死んだ人たちの犠牲の上に成り立っている自分の生。
あの日自分も死んでいたんじゃないのか・・
なぜ、自分は生きているのに、他の人は死んでしまったのか・・・
自分は生き残るために他の人を殺したんじゃないのか・・・
死体を踏みつけ踏みつけ生きようとした自分は何なのか・・・
そんな自分は生きていていいのか。幸せになどなってもいいのか・・

 一筋の糸にすがりつくように皆実は打越に問う。
「教えてください。うちはこの世におってもええんじゃと教えてください」
「生きとってくれてありがとうな」

 打越の言葉に救いを得た皆実だったが、逃げ切れたと思っていたあの日は
すぐそばまで追いかけてきていた。
『十年経ったけど原爆を落とした人はわたしを見て
「やった!またひとり殺せた」とちゃんと思うてくれとる?』

夕凪の街桜の国


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2005年10月23日

「長い道」こうの史代

 この、こうの史代さんは「ダ・ヴィンチ」で何度も紹介されていて、前から気になっていた作家でした。

 「長い道」は簡単に言うとある夫婦の話です。
この2人は親同士の取り決めである日急に夫婦になることになります。
何の疑問も抵抗もなく「父親が決めたことだから」と突然やってきた道に
遊び人で定職にもついていない荘介どの(道はそう呼ぶのです)は、抵抗を試みるのですが、つい道の不思議なペースに巻き込まれて一緒に暮らすことになるのです。
 
 この道さん、ぼーっとしているようでいて実はきちんといろんなことを見ている。
やさしいんだけど、怒る時は一言で荘介殿を震え上がらせます。
まじめで生活というものを大切に生きている道を知る度に、
なぜ俺のような遊び人のそばに居続けるんだ?との疑問がわく荘介どのですが、
あえて何も話し合わずゲームに参加するようかのように
この生活を楽しみ始めていくのです。
 
 道は自分のことは何も言いません。
過去に好きな男性はいたようで、ばったり会う場面に荘介も立ち会ったりするのですが何も語ろうとはせず、静かに楽しげに荘介との生活を続けます。
 荘介は仕事についてもすぐにクビになったり、続かなくてやめてしまったりで
毎日の生活にも困る始末。ガスや水道が止められたり、食べるものがなくなったり・・でも、道は動じずそんな毎日を楽しんでいるかのようで、荘介もそんな道に少しずつ惹かれていくのですがそんなことはおくびにもだしません。

 大きな感情の動きも事件も起こらない2人の平凡な毎日。
どこか風にふかれているような2人だけれど、毎日の生活の積み重ねが何かを生んだのです。
 この2人のどこかひょうひょうとしたキャラクターがおもしろくて笑わされて
一気に読んでしまいました。
 そして、こういう結婚もありかも・・・と憧れたりして・・・・。

  長い道


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2005年10月11日

「暴れん坊本屋さん」久世番子

 姉がブログでこの漫画を紹介しており、
漫画家で本屋でも働いているという著者と変な自画像に興味がわいて買ってみたら
すんげーおもしろかった。

 表紙の本人自画像は、実際見たら変なオバQみたいでちょっと引くが、
読み出したらむしろかわいく思えてくるから不思議。
 同僚の店長さん、腐女子のハチさん、万引きを捕まえるプロ 本読盛くん、
警備員の武田さん、全てのキャラが個性的で本屋さんで働く意欲に燃えた(萌えた?)人ばかり。
 本屋さんの裏側(一日の仕事の流れ、本の流通での苦労、いろんなお客さん、
万引きの対応、安い自給なのになぜ本屋で働くか、担当の売り場の盛り上げ方)
についても書かれていて、本屋が好きな人には興味深い話が満載。

  中でもおもしろいエピソードは本の名前をうろ覚えで買いに来るお客さんとの
交流を描いた回。
「本屋さんはお客さんの言う本のタイトルを信じていません。
六割がた間違ってるね。ぶっちゃけ・・・」
 いろんな間違い方を例をあげて紹介していますので、ここで紹介しちゃもったいないので買うなり立ち読みするなりして見て下さい。

 私も図書館で働いていましたので、こういう本探しているんだけど・・・
というお客さんには悩まされました。
 先週の(先週じゃない)
何とかっていう雑誌(うろ覚え、誌名を真に受けて捜すとえらいことに)
の誰々(似た名前の他人であることしょっちゅう)が紹介していたとか、
こういう登場人物(思い込みにより捏造あり)が
出てきてあんなことしたりするんだけど・・・
という雲をつかむような話から本を推理するのはかなり難しい。
 ベストセラーとか新刊、有名な人が書いたものなら予想がつくんだけどね・・・。
まあ、それだけに推理が当たった時はすごくうれしかったりする。

最近じゃ、ネットで本を買う事が多いですが(住んでる町の書店が品揃えが悪いんで)
平積みにされてる本や棚に並んでいる本を見ながら迷う楽しみというのは、
やはり本屋さんに行ってこそ。見ているうちに思いもかけぬ本に出合えることもあるしね。それだけに個性のある陳列をしている本屋さんや、おもしろい品揃えを
している本屋さんに行くとうれしくなってしまう。
 『おっ、勝負かけてきてるね・・・』『おっと、こんな本があったとは・・・』
やっぱりがんばっている本屋さんは入った途端にわかりますからね。

 暴れん坊本屋さん (1)


 全編この作者の本と本屋さんに対する炎のように激しい愛情につらぬかれており
見ているこちらも熱くなります。
 これは、二巻目も絶対買いますよ〜

matakita821 at 14:44|PermalinkComments(4)TrackBack(1) このエントリーをはてなブックマークに追加

2005年10月02日

魔の「ガラスの仮面」と「「妄想」はオンナの幸せ」益田ミリ


 昨日眠くて眠くて布団の所へ行ったのに、途中にあるマンガ本棚で
つい「ガラスの仮面」を手に取ってしまった。そしたら案の上とまりゃーしない。
今も10巻目を読み終わったところ・・・
夫にも「あ〜あ〜「ガラスの仮面」読んでるよ。もう終わりだな・・。
しかも一巻目から読んでるし・・・」と言われるしまつ。
 そう、読み始めたら最後、ノンストップで読み続けるしかない悪魔の書・・
それが「ガラスの仮面」なのです。

 でも、何度読んでも感動で胸が苦しくなるのはなぜ?
全日本演劇コンクールでマヤが一人で「ジーナと5つの青い壷」をやりとげた
時なんてもう泣きそう・・・
 「紅天女」をやるために、いろんな役に挑戦しようといろんな舞台のちょい役と
して出演するマヤ。最初は「なんであんな子を採用したんだ?」
と見向きもされないのに・・・そのうち、マヤの凄さに気づいた人が一人出ると
芋づる式にみんなも気づき始める。
「あの子だわ・・・全日本演劇コンクールでは姫川亜弓と同じ「たけくらべ」の美登里役をやって同位入賞」
「ええっ!あの天才少女と?!」
「しかも全国大会ではたった一人で1時間45分もの舞台を演じぬき一般投票で
第1位・・」
「ええっ・・?!」
「前進座のあの原田菊子が「舞台あらし」と恐れるという・・」
「えらい子が飛び込んできたもんだな・・・」
とみんな恐れるのです。

 しかしあらためて読むと月影先生よくもってるよな・・・
第一巻からもうすでに死にそうだったも・・・

 この普段はなんのとりえも無い子が舞台に上がったとたんに天才性を発揮して
サラブレッドの姫川亜弓を「マヤ・・恐ろしい子。この敗北感はなぜ・・」と
言わしめる。姫川亜弓が「ヘレン・ケラー」のオーディションを受けると決めた際、
サリバン役に母親が決まっていたから7光で役を得たと思われるのが嫌で家を出て行く。
「なぜ止めなかったんだ?!」という父親に対して
「止められるわけがないじゃありませんか!あなた、
あの子はまだ少女でも誇り高き女優ですのよ」と答える歌子。
 ウキャーーー!!
「ガラスの仮面」のおもしろさはその時代ががった設定と台詞回しにもあるわけだが
もー、ぞくぞくしますよ。

 ところで、益田ミリの「妄想はオンナの幸せ」が文庫本で出てので、また寝る前に
読むという生活だったのだが、
 「妄想」・・・ほとんど毎日と言ってもいいけど、何分かは妄想してしまう私。
特に妄想しようと思わずとも、仕事中でも妄想にふけってしまうことがある。
で、「ガラスの仮面」を読んでいて、よく若い頃にした妄想を思い出したんで
披露します。

 マヤと同じく演劇を志している私(実際演劇部だった。妄想評論家の益田ミリ先生もおっしゃってましたがリアルな部分があると妄想も広がっていくんですよね〜)
たまたま外国から映画の主役を捜していた監督が、私に目をつけ(町を歩いていただけでもその原石のような魅力は監督に発見されてしまうのだ!)
「主役は君だ!」と言うのだ。
 私はいちおう「私にはムリです」と断るんだけど監督は
「○○役(主役)は君のためにあるんだ」といって聞かない。
しかたなく(あくまでしかたなくね・・・)引き受け演じた私は、
この役を絶賛されて世界各国からオファーが殺到・・・
 というね・・・今思うとむなしいわ・・・若さって恐ろしい・・・

 でも、この本はそんなばかばかしい妄想がいっぱいでかなり笑えます。

「妄想」はオンナの幸せ 「もしもパワー」でストレス解消!
ガラスの仮面 (第42巻)
ガラスの仮面 (第23巻)
ガラスの仮面 第1幕
BSマンガ夜話 ガラスの仮面 -美内すずえ-



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