「心の傷を癒すということ」

2020年02月13日

『心の傷を癒すということ』 最終話 残された光

 2000年4月。
新しい病院に移った和隆(柄本佑)は今まで通り患者と向き合いながら
精神科医としてできることを探り続けていた。
さらに精神疾患についてのわかりやすい本を著そうとしていた。

 そんな時、和隆に癌が見つかった。
父・哲圭(石橋凌)の遺品のなかから癌関係の本を手に取る和隆。
そして父の手元にあった和隆の著作には線を引いたり付箋付けた部分があった。

 あんなに精神科に進むことを反対していたのに
きっと何度も何度も読んでいたんだろうねぇ(ノω・、)
父親として、そして患者として、和隆の言葉に真摯に向き合っていたんだろうなぁ。
父の思いに改めて涙する和隆に涙・・・
そして患者としての自分を意識して初めて感じる恐怖や無念さ。


『お父さん・・・怖いねん・・
僕・・・なんにもやってへん・・・』


 震える手でノートを取り出し、改めて書いた。
『やりたいこと』

 今までも『やりたいこと』は次々とメモしていたんだが・・
死を意識した今、『やりたいこと』・・・


 6月。入院し癌治療が始まった。
和隆は自分の口から終子(尾野真千子)に癌であること、
手術ではもう治らないことを伝えた。

『ここで泣いて帰り・・』
和隆の言葉に抱きついて泣き続ける終子の姿に
お互いがお互いの半身のような結びつきが伝わってきて・・
もう・・・(TmT)ウゥゥ・・・


 アメリカから兄・智明(森山直太朗)もかけつけた。
そして永野先生(近藤正臣)も。

 ただむせび泣く和隆に
『「辛い時は言葉にしたほうがええ。
悲しみや苦しみを表現するのははしたないことやない」
君、本にそう書いてた』

 自然治癒率は500分の一。
和隆は退院し『やりたいこと』を書いたノートの内容を実現
するために動き始めた。
HPはこちら
精神科医・安克昌さんが遺したもの: 大震災、心の傷、家族との最後の日々心の傷を癒すということ (角川ソフィア文庫)
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matakita821 at 18:57|PermalinkComments(6)

2020年02月07日

『心の傷を癒すということ』 第3話 見えない命綱

 震災から2ヶ月。
人々は混乱の中から必死に歩き出そうとしていた。
湯浅(濱田岳)の病院も再建のめどが立った。

 どこからか立ち上るイカナゴを炊く匂い。
関西出身の友人からイカナゴの炊いたんは郷土料理というだけでなく
食卓にないのはありえないほど大切なものと聞きました。
こういう時期だからこそ炊かなきゃならんと気張ってくれたんでしょうなぁ。
一瞬でも「日常」に戻してくれるにおい。


 和隆(柄本佑)とセッションする湯浅・・・(* ̄m ̄)
サックスは無くなってしまったんやろな。
代りにダックスフンドのぬいぐるみで吹いとりました。

 まだ二ヶ月。
『今』を大切に味わおうとする二人、そして終子(尾野真千子)。


 和隆は避難所の校長先生(内場勝則)から、ある患者を紹介される。
片岡(清水くるみ)という女性で頭痛に苦しめられているため
壁に頭を打ち付けたり、ぶつぶつつぶやいてしまうため
同室の人たちから奇異に思われていた。

 彼女はかつて和隆がいた病院でアルコール依存症で救急搬送されてきた人で
翌日逃げるように退院していったのだった。

 和隆は避難所の教室に入る時も、そ〜っと『お邪魔しますね・・』という感じで
しずしずと入ってくる。
人と対している時は声のトーンも抑え、
ゆるやか〜に静かに存在している。
でも患者の言葉や様子はしっかり捉えている。
病状のメモも患者さんから一瞬も目を離さず書いていた。

 実際の安先生もきっとこのような向き合い方だったんだろうね。
この先生は自分をちゃんと見てくれている、
自分の話を聞こうとしてくれている・・
この向き合い方がどれほど患者を力づけるか。
不安だった患者さんも安先生を通して
自分の存在を感じることができたと思う。

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精神科医・安克昌さんが遺したもの: 大震災、心の傷、家族との最後の日々心の傷を癒すということ (角川ソフィア文庫)
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matakita821 at 18:18|PermalinkComments(2)

2020年01月27日

『心の傷を癒すということ』 第2話 僕たちの仕事

 第2話は新聞記者・谷村(趙ο臓鵬鸛曚ら始まる。
HPはこちら

『震災の直後、私は一人の精神科医と
        忘れられない仕事をした』


 地震発生後、勤務先の病院に向かった和隆(柄本佑)は
廊下にもあふれている患者たち、さらに次々と運ばれてくる
負傷者たちの姿に衝撃を受けた。

 そして精神科の入院患者たちのケアをしながらも
医師としての無力さを感じ、その辛さを永野(近藤正臣)に訴えた。

『申し訳なくてたまらんのです。
建物の下敷きになっている人たちを助けにも行かんと
こうやってただ座っているのが・・苦しいんです』

 和隆の自宅はなんとか倒壊を免れ
終子と子供にも怪我は無かった。
和隆は二人を大阪の実家に避難させた。

 湯浅クリニックは焼失したが湯浅(濱田岳)は無事で
避難所で働いていた。

『お前・・・大変やったな・・』和隆
『ええ。生きてるだけで、ええ』湯浅

 避難所は混乱していた。
被災した人々も地震のショックから抜け出せなかった。
そして和隆自身も地震の衝撃に戸惑う被災者の一人だった。

 そんな時馴染みの記者・谷村から被災地の状況、
精神科医として見たことを内側から書いて欲しいと
頼まれるがとても書く気にはなれなかった。

『無理やと思います。
僕自身、今は頭も混乱していますから。
それに文章を書くよりも医者として働くべきやと思ってます。
現場を放棄したくはないですし・・・
何より被災地のことを文章にするのは・・・
不謹慎のように思えて・・・・・・・・・・・・・
理由がいっぱいあるのは、ないのと同じか・・・』

 和隆は谷村の依頼を受けた。
そして避難所のひとつ、朝日小学校で保健室を設置し
被災者たちの『心のケア』にあたることにした。

『「心のケア」ってどんなことするんです?』校長
『僕にもまだ、はっきりとはわかりません。
精神科医にとっても初めての事態でノウハウがないんです。
ただ・・人間は身体と同じように心も傷つきます。
この震災でたくさんの人の心が傷ついているのは確かです』

 試行錯誤だった。
対応した校長も避難所を維持することに疲れきっていた。
誰もがみな被災者だった。

精神科医・安克昌さんが遺したもの: 大震災、心の傷、家族との最後の日々心の傷を癒すということ (角川ソフィア文庫)
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matakita821 at 18:04|PermalinkComments(2)

2020年01月19日

『心の傷を癒すということ』 第1話 神戸、青春の街

 今回は精神科医・安和隆(柄本佑)の生い立ちと青春の日々が
描かれました。
簡潔に、でも人物と背景が伝わってくる繊細な場面の積み重ねでした。
次回は阪神・淡路大震災発生。
ここからが始りなのだと思う。
HPはこちら


 大阪。1970年。和隆10歳。
お父さん(安哲圭)(石橋凌)が帰宅したら母(朴美里)(キムラ緑子)と
兄弟三人で礼とともにお出迎え。

 帰る頃を見計らって母はちゃんと口紅を塗っていました。
そして帰宅した父は『メシ!』のみ。
家長として絶対的な存在である父。
その父に従い支える母。
『家庭』という国の中で守られながらも窮屈さを感じていた和隆が見えました。


 偶然見つけた母の外国人登録証から、兄弟は父も母も自分たちも
在日韓国人だと知った。

 余計なことはなんも言わなかった母。
『在日韓国人』であること、
『安藤』は偽名で、その理由は「色眼鏡で見られるから」、
本当は『安』という苗字だと。

 でも和隆の心に自分たちは嘘の名前をついて生きなければならない存在なのかという疑問と
自分にとって大切な人たちに嘘をつかねばならない罪の意識、
複雑な思いが生まれた。


 高校生になった和隆は『こころ』への興味を強める。
親友の精神科医の息子・湯浅浩二(濱田岳)と共に医学部進学を希望していた。

 何やら教師に提出する「反省文」のことを浩二から言われとったが
「どうでもええわ」と書こうとしない和隆。

 反骨精神はありながら、本心を出すことへの迷いと恐れから
もやもやしている模様。
『どうでもええわ』は捨てようとしても捨てられない和隆のこだわり
なんじゃないだろうか。
そんな自分の心の動き、そして対する人間たちのこころというものへの
探求心が育っているようです。


 家庭では相変わらず父中心に回っている。
優等生の兄・智明(森山直太朗)は父の希望通り東大に入り、
父の勧める「原子力工学科」に進むことにした。

『世界の大舞台に立てる立派な学者になるんやぞ』父

 父を恐れつつも父から示される生き方(祖国に貢献する)に
違和感を感じる和隆。
夜の公園の浩二との場面が清々しかったなぁ。

 親友の浩二にも言えなかった在日韓国人であることをやっと伝えられた和隆。
『安和隆』として自立して生きるために医学部を目指し
人知れず努力し続けてきたことが伝わってきた。
そして本来の自分として生きたいというほのかな覚悟も。


『どっちで呼んで欲しい?「安田」か「安」か』浩二
『どっちも嫌いや。
自分が誰なのか、まだようわからへんねん。
まぁ、せやけど嘘の名前を使うてるっていう後ろめたさがない分
安の方がましやわ』和隆

精神科医・安克昌さんが遺したもの: 大震災、心の傷、家族との最後の日々心の傷を癒すということ (角川ソフィア文庫)
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matakita821 at 16:18|PermalinkComments(0)