2025年06月01日
「慶次郎縁側日記 3」 第6回 ふたり
慶次郎(高橋英樹)が留守にしている間に、にゃんと根岸の別荘が盗人に入られるという事件が起こった。慶次郎が大事にしている本所の殿様から頂いた茶碗も手文庫の銭も佐七(石橋蓮司)の小遣いもやられた。しかし佐七は茶碗は自分が割ったし銭も自分が使ったと言い張るのだった。
盗んだ男は優しい態度で近づき、佐七の話し相手になり、一緒に酒まで飲んで泊まっていったそうな。いつの世にも人のまごころに付け入る奴はいるんだね。昔は一人ぐらしだったのに、そんなヤカラに騙されるとは・・とあきれる慶次郎だったが・・
「二人暮らしを覚えたからでしょう。
二人ってのは、どういうんだか
一人の時より寂しい時があります。
どっちかいなくなった時のことを
思っちまうせいでしょうか・・」辰吉(遠藤憲一)
そうだねぇ・・
一人で気ぃ張って暮らしている時には気づかなかった寂しさが、二人のうちの一人がいないと感じるようになってしまう。そうなるともう一人には戻れない。戻るのが怖い。知らない間に頼っているんだねぇ。
そんな時、辰吉の女房・おぶん(邑野みあ)が女に土手から突き飛ばされ怪我を負った。おぶんは誰にも話さなかったが突き飛ばす瞬間、女は「恨むなら常蔵を恨みな!」と憎々し気に言ったのさ〜
常蔵とは、おぶんの父親。
シリーズをずっと御覧の皆様はご存じだろうが慶次郎の娘・三千代に狼藉を働き死に追いやった男。悪行ざんまいの常蔵を恨んでいる人間はたくさんいるはず。
まったくどこまで娘を苦しめりゃいいんだよ。
生きている間も散々苦労をかけ惨めな思いをさせて、やっと死んだと思ったら、その後も娘というだけで恨まれる。
おぶんは女の着物の柄と鈴の音から、料理屋で働くおれん(小嶺麗奈)だと突き止め、後をつけたのだが、返り討ちに遭ってしまった。助けに現れた辰吉の前で開き直った態度のおれんの言い分は同じ常蔵の娘のくせに、おぶんだけが守られ幸せそうにしているのが許せない!だと。
慶次郎が調べさせたところによると確かにおれんはおぶんの腹違いの姉だった。母親のお初(北原佐和子)は木綿問屋の娘だったが常蔵に騙され身ごもり、家を出たのち捨てられたのだった。病気がちの今はおれんに面倒を見てもらっているらしい。
おぶんに見せた顔は悪鬼のようだったが、おれんは近所での評判も良く店でも働き者ということだった。母親は未だお嬢様気分の抜けない見栄っ張りなかまってちゃん。そんな母親のわがままにも黙って耐えているそうな。
そのおれんがおぶんの元を訪ねて来た。
怯えるおぶんにお金を集るつもりはないとタンカを切ったと思ったら、もの心ついた頃からおぶんのことを見てきたと話し始めた。母親に言われずっと蔭から常蔵の様子を見に来ていたらしい。
おれんは何かしでかしたら「あの父親の娘だから」「あの父親に騙された母親の娘だから」と言われると思い、いい子ちゃんを完璧に演じ、人一倍身を固くして生きて来た、だから憂さ晴らしが必要だと吐き捨てるように告げた。
「私より不幸な女がね。
お前だよ!!
常蔵に苦労しているお前を見ると、いつもほっと安心した。
まだお前がいる。
私より不幸せで、
私より苦しんでいる娘が!
まだ私はどん底じゃない」
「冗談じゃないよ!
アンタに何がわかるんだい?!
この家はね、
いろんな人にたくさん辛い思いをさせて、
やっとの思いで立っている暮らしなんだ!
それを・・・アンタの憂さ晴らしなんかで
壊されてたまるか!!」おぶん
おぶんはおれんに向かって行ったが
押し倒され、辰吉からもらった櫛を奪われてしまった。
恐ろしい・・・まるで通り魔のような。
今まで立派な娘として表の顔を取り繕ってきたんだろうが、おぶんを突き飛ばした時から抑え込んできた裏の顔が暴走している。鬱屈した思いが、怒りが、憎しみが、激しいうねりとなっておぶんに向かっている。
これは姉妹だからなんだろうか。
血の繋がった姉妹だからこそ嫉妬や恨みが燃え盛る。
様子を見に来た慶次郎にお茶をいれてもらい、
おぶんの波立った心はやっと落ち着いた。
「親ってのはな、死なないんだ。
死んでもどういうんだか、残るんだな。
いいことも悪いこともみんな」慶次郎
親と縁を切ることができるもんならアレだろうが、
おぶんは憎んでも恨んでも、結局、
あの父親を見捨てることはできなかった。
だからこそ残る。
そしてその父親が残した縁を受け継ぐことになる。
なんともなぁ・・・
慶次郎はおれんが彼女を見初めた宿屋の若旦那に騙され捨てられたことを教えた。あんまりにもショックで今まで必死で守ってきた自分自身の糸がプツンと切れ、そんな時、辰吉に守られ幸せそうなおぶんを見て抑えられなくなったのだろうと。
「今わかりました。
あの女・・・私です。
常蔵ってろくでなしの亡霊に取り憑かれて
ずっとさまよってる、もう一人の私です」おぶん
いろんな人に支えられ、辰吉の愛情に包まれ、なんとか笑顔になれているおぶんだが、ふとした拍子にあの頃の恨みや憎しみが蘇る。手放したくて手放せず苦しんでいる自分の尻尾が見える。
根岸に入った泥棒の情報が入った。
その男は一人暮らしの老人や長患いの病人に取り入り、世話を焼き、隙をみて盗みを働くことを繰り返しているらしい。その男・政吉の今度のターゲットがおれんだと知ったおぶんは彼女の元に走った。
いや〜小料理屋で働いているとはいえ、こんな病人がいる貧乏長屋にたいしたお金もないだろうよ。人たらしの正体は鬼かよ。
世間体を考え政吉にツンツンしていたおれんだったが内心は憎からず思っていた模様。お金を盗もうとしたところを見ても、おぶんに「コイツは泥棒だよ!」と言われても、引っ立てて行く晃之助(比留間由哲)達にも「その男は私の亭主です!亭主が女房の金を使って、それが盗みになるんですか?!」とかばった。心の中ではもう一度男を信じてみよう、この人ならって思っていたんだろうか。
なんかねぇ・・・
そのおれんの言葉をきっぱり否定した政吉にも、おれんへの誠があったように思うんだけどねぇ・・金を盗もうとはしたけどさ。おれんとならまっとうな暮らしを始められるかもと期待してたんじゃないのかなぁ。それとも疑り深い私にまでそう思わせるほど政吉は騙しのプロなのかい?
被害に遭った者(おれんも佐七も)誰もが、政吉のことを「あの男は泥棒ではない」「よく話を聞いてくれるいい男だ」と言い張り訴え出る者はいなくなった。みんな自分の寂しさを悟られた恥ずかしさなのか、騙された思いたくないのか、あるいは自分に対してだけは誠があったと本当に信じているのかもしれない。
サブタイトルの「ふたり」・・・
いろんなふたりがいたね。
政吉とおれん。
おぶんとおれん。
お初とおれん。
そして慶次郎と佐七。
おれんのために走り、泣きながらおれんが守ってきた暮らしの苦労を訴え、葛藤を越え「お姉ちゃん」と呼んだおぶんと、そのおぶんの思いに心動かされ、初めて素直になれたおれん。
一大事になり、初めて娘のために母親として行動したお初。お荷物と恨んだ母親だったけど、この時の言葉で苦労は帳消しになった。母親の胸で思いっきり泣くことができたおれんは、この時、妬みや恨みも流すことができたんだね。
恨みで繋がっていたおぶんとおれん。
それが消えた今、もう会うことはないだろうけど、おぶんの中には自分には姉がいるというあったかい思いが残った。奪った櫛をそっと返しにきたおれんの中にもきっと。
第5回 可愛い女

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怯えるおぶんにお金を集るつもりはないとタンカを切ったと思ったら、もの心ついた頃からおぶんのことを見てきたと話し始めた。母親に言われずっと蔭から常蔵の様子を見に来ていたらしい。
おれんは何かしでかしたら「あの父親の娘だから」「あの父親に騙された母親の娘だから」と言われると思い、いい子ちゃんを完璧に演じ、人一倍身を固くして生きて来た、だから憂さ晴らしが必要だと吐き捨てるように告げた。
「私より不幸な女がね。
お前だよ!!
常蔵に苦労しているお前を見ると、いつもほっと安心した。
まだお前がいる。
私より不幸せで、
私より苦しんでいる娘が!
まだ私はどん底じゃない」
「冗談じゃないよ!
アンタに何がわかるんだい?!
この家はね、
いろんな人にたくさん辛い思いをさせて、
やっとの思いで立っている暮らしなんだ!
それを・・・アンタの憂さ晴らしなんかで
壊されてたまるか!!」おぶん
おぶんはおれんに向かって行ったが
押し倒され、辰吉からもらった櫛を奪われてしまった。
恐ろしい・・・まるで通り魔のような。
今まで立派な娘として表の顔を取り繕ってきたんだろうが、おぶんを突き飛ばした時から抑え込んできた裏の顔が暴走している。鬱屈した思いが、怒りが、憎しみが、激しいうねりとなっておぶんに向かっている。
これは姉妹だからなんだろうか。
血の繋がった姉妹だからこそ嫉妬や恨みが燃え盛る。
様子を見に来た慶次郎にお茶をいれてもらい、
おぶんの波立った心はやっと落ち着いた。
「親ってのはな、死なないんだ。
死んでもどういうんだか、残るんだな。
いいことも悪いこともみんな」慶次郎
親と縁を切ることができるもんならアレだろうが、
おぶんは憎んでも恨んでも、結局、
あの父親を見捨てることはできなかった。
だからこそ残る。
そしてその父親が残した縁を受け継ぐことになる。
なんともなぁ・・・
慶次郎はおれんが彼女を見初めた宿屋の若旦那に騙され捨てられたことを教えた。あんまりにもショックで今まで必死で守ってきた自分自身の糸がプツンと切れ、そんな時、辰吉に守られ幸せそうなおぶんを見て抑えられなくなったのだろうと。
「今わかりました。
あの女・・・私です。
常蔵ってろくでなしの亡霊に取り憑かれて
ずっとさまよってる、もう一人の私です」おぶん
いろんな人に支えられ、辰吉の愛情に包まれ、なんとか笑顔になれているおぶんだが、ふとした拍子にあの頃の恨みや憎しみが蘇る。手放したくて手放せず苦しんでいる自分の尻尾が見える。
根岸に入った泥棒の情報が入った。
その男は一人暮らしの老人や長患いの病人に取り入り、世話を焼き、隙をみて盗みを働くことを繰り返しているらしい。その男・政吉の今度のターゲットがおれんだと知ったおぶんは彼女の元に走った。
いや〜小料理屋で働いているとはいえ、こんな病人がいる貧乏長屋にたいしたお金もないだろうよ。人たらしの正体は鬼かよ。
世間体を考え政吉にツンツンしていたおれんだったが内心は憎からず思っていた模様。お金を盗もうとしたところを見ても、おぶんに「コイツは泥棒だよ!」と言われても、引っ立てて行く晃之助(比留間由哲)達にも「その男は私の亭主です!亭主が女房の金を使って、それが盗みになるんですか?!」とかばった。心の中ではもう一度男を信じてみよう、この人ならって思っていたんだろうか。
なんかねぇ・・・
そのおれんの言葉をきっぱり否定した政吉にも、おれんへの誠があったように思うんだけどねぇ・・金を盗もうとはしたけどさ。おれんとならまっとうな暮らしを始められるかもと期待してたんじゃないのかなぁ。それとも疑り深い私にまでそう思わせるほど政吉は騙しのプロなのかい?
被害に遭った者(おれんも佐七も)誰もが、政吉のことを「あの男は泥棒ではない」「よく話を聞いてくれるいい男だ」と言い張り訴え出る者はいなくなった。みんな自分の寂しさを悟られた恥ずかしさなのか、騙された思いたくないのか、あるいは自分に対してだけは誠があったと本当に信じているのかもしれない。
サブタイトルの「ふたり」・・・
いろんなふたりがいたね。
政吉とおれん。
おぶんとおれん。
お初とおれん。
そして慶次郎と佐七。
おれんのために走り、泣きながらおれんが守ってきた暮らしの苦労を訴え、葛藤を越え「お姉ちゃん」と呼んだおぶんと、そのおぶんの思いに心動かされ、初めて素直になれたおれん。
一大事になり、初めて娘のために母親として行動したお初。お荷物と恨んだ母親だったけど、この時の言葉で苦労は帳消しになった。母親の胸で思いっきり泣くことができたおれんは、この時、妬みや恨みも流すことができたんだね。
恨みで繋がっていたおぶんとおれん。
それが消えた今、もう会うことはないだろうけど、おぶんの中には自分には姉がいるというあったかい思いが残った。奪った櫛をそっと返しにきたおれんの中にもきっと。
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