2025年02月24日
「御上先生」 episode 6 -confession-
週刊誌に載った御上の記事
『天下り斡旋疑惑の官僚教師の壮絶な過去』
気遣う神崎(奥平大兼)の言葉に無言の拒絶を示し、東雲(上坂樹里)たち生徒の思いに「君たちには関係ない」と応えた御上(松坂桃李)だったが・・・
富永(蒔田彩珠)のまっすぐな言葉が刺さる。
「考えろ。
考えて自分の頭で。
それはいいんです。間違ってない。
教師と生徒なら、これ大正解です。
でも、人と人ならどうですか?
私達素っ裸です。
服着こんでたら、
オカミが出してくる難問に答えられない。
みんな丸腰、丸裸で戦ってる。
それわかってます?
なのに、なんでアンタだけ
鋼の鎧着こんでるんですか?」
そして同じく兄・宏太(新原泰佑)の死を背負い生きてきたであろう養護教諭の一色先生(臼田あさ美)の存在。
文科省の前で再会した一色先生は御上を隣徳高校に誘ったのだった。
「うちの学校に来て闇を暴いて」と。
影で連絡は取っていただろうが、兄の死以来、精神に支障をきたし施設に入っており、
自分のことを宏太と呼ぶ母の存在を初めて一色先生に見せた御上。
「あなたも・・・
私をここに呼んだってことは、
先に進もうとしているのかな・・って」
生徒達には、もう受け止める準備ができていた。
御上だけが抱える問題ではない。
これは自分達全員が向き合うべき問題だと。
御上は生徒達に兄のこと、
そして自分自身の思いを教室で伝えることにした。
ここにいるのは導く者と導かれる者ではない。
それぞれがひとりの人間として、人間・御上孝と向き合おうとしている。
「死因は学校への抗議行動による自死。
放送部だった兄は学校への抗議を全校放送した後に
自ら作った装置を発動させて感電死した。
君たちは兄の行動をどう考える?」
宏太の抗議内容は、学校側が中等部から高等部への進学にあたり、テストの点数には問題のない発達障害のある生徒を落としたことに対するものだった。宏太は校内で署名活動を行ったが、当時はまだ「発達障害」という言葉も一般化しておらず同級生たちから理解を得られず、その存在は透明化していった。それでも訴え続けた宏太は精神に不調をきたし、あの行動にでた。
『僕は、この状況を生み出した学校に抗議します。
声を上げた僕に対しての冷淡な無視に抗議します。
そんな環境を生み出した社会に対して抗議します。
死をもって・・・僕は・・・
この抗議を完遂する!!』
何が彼をそこまで追い込んだのか。
担任は家にまで来て相談に乗ってくれた。
しかしそのことで状況を知った母・苑子(梅沢昌代)は「もう止めて勉強に集中して欲しい」と泣いてすがった。
「そんな子達のために
自分の人生を犠牲にする必要なんてない!」
母親の、この言葉は彼を絶望させただろう。
しかし御上を未だに苦しめているのは、
兄に放った自分の言葉だった。
「友達に言われたんだよ。
『お前の兄さん、この頃おかしいぞ』って」
「兄に最後の絶望を与えたのは母じゃない。
僕なんだ。
そして今ならわかる。
兄がゆがんでいたんじゃない。
世界の形がいびつだっただけだ。
兄はそのいびつな形の世界に
合わせることができずに
死んだんだ」
御上のすべてだった兄。
尊敬し、慕い、信じられた世界の中心。
それが突然消えてしまった。
「でもそれやらないと
自分じゃなくなっちゃうんだよ」宏太
転校し兄とは別の世界で生き始めた御上だったが、
兄の、この言葉が彼の中から消えることはなかった。
だからここにいる。
そうすることが自分を守ることだから。
でも、自分を守るために死を選ぶしかないなんてことがあってはならない。
「兄のような存在を繰り返してはならないと僕は思った。その為には教育を変えなければと、文科省を目指した。
でもそこにあったのは巨大すぎる思考を停止した組織だった。
小さな細胞のいくつかは必死で動こうとしているけど、硬直していく本体はどうやったって動かなかった。
ここの学校のことを教えてくれた人がいた。
一も二もなく行くべきだとわかった。
小さな細胞は小さな細胞とせめて向き合うしかないと。
でも全く向き合えていなかったと気づいた。
君たちはこんなにも向き合ってくれてたのに。
これからは絶対に目をそらさない。
約束する」
この生徒達との時間が御上の新たな出発点となる。
踏み越えてきたつもりだったが、まだ暗闇の中にいた御上が掴んだ光。
でも御上の行動が、そして生徒達の思いが導いた光。
『パーソナル イズ ポリティカル』
生徒達の個人的な問題がそうだったように、
今、御上の問題も彼自身のものでありながら
生徒達みなが自分自身の問題であり、
社会の問題としてとらえ、考えている。
子供達、いやもうこの表現も違う。
彼らは御上が思っている以上に逞しく賢く、
自分自身の未来を信じて行動しようとしている。
次元(窪塚愛流)はネットで集めた『御上宏太』情報を消すことにした。
それを見守る富永。
ネットは便利だけど、自分達の目で見て知って感じたものを大切にしたいと思ったんだね。39歳に生成した宏太の写真がオカミそっくりなのを見て涙ぐむ二人に、こっちまで泣けてきちゃったよ。結構前のドラマで聞いた『人間は終わっている』というセリフをよく思い出すんだが、彼らを見ていると終わっていない、人間は大丈夫だよと思えたよ。
そしてオカミに真山弓弦(堀田真由)と会えたことを嬉しそうに伝えた神崎。
神崎と弓弦の間には特別なつながりができた。
神埼は弓弦には隠して来た思いを話せる。
そして弓弦も神崎にはもう隠さない。
「俺も、あなたも、もう戻れない」
神崎は御上であり、宏太であり、そして弓弦でもある。
彼も1人の人間として地に足をつけ成長し続けている。
人の正面の顔しか見ていなかった彼が、その人の横顔も、後ろ姿からもまっすぐに見つめ包んでいこうとするようなものを感じる。
そして槙野(岡田将生)だよ。
彼もまた文科省にいながら改革を行おうとしている。
彼の原点は、もしかしたら宏太の抗議活動の元となった発達障害のある生徒?
事件の責任を感じて宏太の後を追ったが果たせず、入院中に命を絶った?
彼が見つけられずにいる光はどこにあるんだろう。
次回は椎葉春乃(吉柳咲良)のターン。
ヤングケアラーで精神的にも肉体的にも経済的にも疲弊していた彼女は何をしたのか。
第1話 -destruction-
第2話 -awareness-
第3話 -beginning-
第4話 -fate-
第5話 -confidence-
第7話 -delusion-
第8話 -strategy-
第9話 -joker-
第10話(最終回)- Puppets can't control you -

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そして自分自身の思いを教室で伝えることにした。
ここにいるのは導く者と導かれる者ではない。
それぞれがひとりの人間として、人間・御上孝と向き合おうとしている。
「死因は学校への抗議行動による自死。
放送部だった兄は学校への抗議を全校放送した後に
自ら作った装置を発動させて感電死した。
君たちは兄の行動をどう考える?」
宏太の抗議内容は、学校側が中等部から高等部への進学にあたり、テストの点数には問題のない発達障害のある生徒を落としたことに対するものだった。宏太は校内で署名活動を行ったが、当時はまだ「発達障害」という言葉も一般化しておらず同級生たちから理解を得られず、その存在は透明化していった。それでも訴え続けた宏太は精神に不調をきたし、あの行動にでた。
『僕は、この状況を生み出した学校に抗議します。
声を上げた僕に対しての冷淡な無視に抗議します。
そんな環境を生み出した社会に対して抗議します。
死をもって・・・僕は・・・
この抗議を完遂する!!』
何が彼をそこまで追い込んだのか。
担任は家にまで来て相談に乗ってくれた。
しかしそのことで状況を知った母・苑子(梅沢昌代)は「もう止めて勉強に集中して欲しい」と泣いてすがった。
「そんな子達のために
自分の人生を犠牲にする必要なんてない!」
母親の、この言葉は彼を絶望させただろう。
しかし御上を未だに苦しめているのは、
兄に放った自分の言葉だった。
「友達に言われたんだよ。
『お前の兄さん、この頃おかしいぞ』って」
「兄に最後の絶望を与えたのは母じゃない。
僕なんだ。
そして今ならわかる。
兄がゆがんでいたんじゃない。
世界の形がいびつだっただけだ。
兄はそのいびつな形の世界に
合わせることができずに
死んだんだ」
御上のすべてだった兄。
尊敬し、慕い、信じられた世界の中心。
それが突然消えてしまった。
「でもそれやらないと
自分じゃなくなっちゃうんだよ」宏太
転校し兄とは別の世界で生き始めた御上だったが、
兄の、この言葉が彼の中から消えることはなかった。
だからここにいる。
そうすることが自分を守ることだから。
でも、自分を守るために死を選ぶしかないなんてことがあってはならない。
「兄のような存在を繰り返してはならないと僕は思った。その為には教育を変えなければと、文科省を目指した。
でもそこにあったのは巨大すぎる思考を停止した組織だった。
小さな細胞のいくつかは必死で動こうとしているけど、硬直していく本体はどうやったって動かなかった。
ここの学校のことを教えてくれた人がいた。
一も二もなく行くべきだとわかった。
小さな細胞は小さな細胞とせめて向き合うしかないと。
でも全く向き合えていなかったと気づいた。
君たちはこんなにも向き合ってくれてたのに。
これからは絶対に目をそらさない。
約束する」
この生徒達との時間が御上の新たな出発点となる。
踏み越えてきたつもりだったが、まだ暗闇の中にいた御上が掴んだ光。
でも御上の行動が、そして生徒達の思いが導いた光。
『パーソナル イズ ポリティカル』
生徒達の個人的な問題がそうだったように、
今、御上の問題も彼自身のものでありながら
生徒達みなが自分自身の問題であり、
社会の問題としてとらえ、考えている。
子供達、いやもうこの表現も違う。
彼らは御上が思っている以上に逞しく賢く、
自分自身の未来を信じて行動しようとしている。
次元(窪塚愛流)はネットで集めた『御上宏太』情報を消すことにした。
それを見守る富永。
ネットは便利だけど、自分達の目で見て知って感じたものを大切にしたいと思ったんだね。39歳に生成した宏太の写真がオカミそっくりなのを見て涙ぐむ二人に、こっちまで泣けてきちゃったよ。結構前のドラマで聞いた『人間は終わっている』というセリフをよく思い出すんだが、彼らを見ていると終わっていない、人間は大丈夫だよと思えたよ。
そしてオカミに真山弓弦(堀田真由)と会えたことを嬉しそうに伝えた神崎。
神崎と弓弦の間には特別なつながりができた。
神埼は弓弦には隠して来た思いを話せる。
そして弓弦も神崎にはもう隠さない。
「俺も、あなたも、もう戻れない」
神崎は御上であり、宏太であり、そして弓弦でもある。
彼も1人の人間として地に足をつけ成長し続けている。
人の正面の顔しか見ていなかった彼が、その人の横顔も、後ろ姿からもまっすぐに見つめ包んでいこうとするようなものを感じる。
そして槙野(岡田将生)だよ。
彼もまた文科省にいながら改革を行おうとしている。
彼の原点は、もしかしたら宏太の抗議活動の元となった発達障害のある生徒?
事件の責任を感じて宏太の後を追ったが果たせず、入院中に命を絶った?
彼が見つけられずにいる光はどこにあるんだろう。
次回は椎葉春乃(吉柳咲良)のターン。
ヤングケアラーで精神的にも肉体的にも経済的にも疲弊していた彼女は何をしたのか。
第1話 -destruction-
第2話 -awareness-
第3話 -beginning-
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この記事へのコメント
1. Posted by sannkeneko 2025年02月25日 17:14
こんにちは。
御上兄の話なんですけど、発達障害という概念が普及した今でも、理解されなかったんじゃないかな・・・以前の3年2組ならば。やっぱり校内でも浮いた格好になってしまって、悲劇は起きてしまったんじゃないでしょうか。
>今、御上の問題も彼自身のものでありながら
>生徒達みなが自分自身の問題であり、
>社会の問題としてとらえ、考えている。
今の3年2組は自分のこととして受け止め、もっと広い視野で見られるようになっている。
御上の想いや考え方は確実に細胞たちを変えてきている。
・・・ただ、今回見ていて思ったんですけれど、この子たちの未来は大丈夫なのだろうかと。巨大すぎる思考を停止した組織は文科省だけじゃない。進歩的(というか当たり前)な考え方をすればするほど、歪んだ世界とのズレは大きくなってしまわないかな?バッドエンドになるような気がしてならないのだけれど。
御上兄の話なんですけど、発達障害という概念が普及した今でも、理解されなかったんじゃないかな・・・以前の3年2組ならば。やっぱり校内でも浮いた格好になってしまって、悲劇は起きてしまったんじゃないでしょうか。
>今、御上の問題も彼自身のものでありながら
>生徒達みなが自分自身の問題であり、
>社会の問題としてとらえ、考えている。
今の3年2組は自分のこととして受け止め、もっと広い視野で見られるようになっている。
御上の想いや考え方は確実に細胞たちを変えてきている。
・・・ただ、今回見ていて思ったんですけれど、この子たちの未来は大丈夫なのだろうかと。巨大すぎる思考を停止した組織は文科省だけじゃない。進歩的(というか当たり前)な考え方をすればするほど、歪んだ世界とのズレは大きくなってしまわないかな?バッドエンドになるような気がしてならないのだけれど。
2. Posted by きこり→sannkenekoさん 2025年02月26日 17:26
こんばんは〜寒いようなあったかいような・・( ̄▽ ̄;)
> 御上兄の話なんですけど、発達障害という概念が普及した今でも、理解されなかったんじゃないかな・・・
誰かのために行動する、学校を変革する、それは学生にとってはかなりハードルが高いかもしれないですよね。他の生徒たちにとっては降ってわいたような話。意識が御上兄とはまるっきり違ったと思われ・・・
> 今の3年2組は自分のこととして受け止め、もっと広い視野で見られるようになっている。
やっぱり下地が大切というか・・・一色が言っていたように、その時御上のような教師がいてくれたら、お兄さんは死を選ばなくても良かったかもしれない。他の生徒たちと共有できたかもしれない。
> 進歩的(というか当たり前)な考え方をすればするほど、歪んだ世界とのズレは大きくなってしまわないかな?バッドエンドになるような気がしてならないのだけれど。
そうなんですよね。生徒達の目と心を開くだけでは御上兄を大量に生むだけなのかもしれない。やはり大元から変えていかないとせっかく芽吹いた生徒達の思いが行き場をなくしてしまうような。でももしかしたら生徒たちは御上の想像を超えていくのかもしれない。そこに期待ですなぁ
> 御上兄の話なんですけど、発達障害という概念が普及した今でも、理解されなかったんじゃないかな・・・
誰かのために行動する、学校を変革する、それは学生にとってはかなりハードルが高いかもしれないですよね。他の生徒たちにとっては降ってわいたような話。意識が御上兄とはまるっきり違ったと思われ・・・
> 今の3年2組は自分のこととして受け止め、もっと広い視野で見られるようになっている。
やっぱり下地が大切というか・・・一色が言っていたように、その時御上のような教師がいてくれたら、お兄さんは死を選ばなくても良かったかもしれない。他の生徒たちと共有できたかもしれない。
> 進歩的(というか当たり前)な考え方をすればするほど、歪んだ世界とのズレは大きくなってしまわないかな?バッドエンドになるような気がしてならないのだけれど。
そうなんですよね。生徒達の目と心を開くだけでは御上兄を大量に生むだけなのかもしれない。やはり大元から変えていかないとせっかく芽吹いた生徒達の思いが行き場をなくしてしまうような。でももしかしたら生徒たちは御上の想像を超えていくのかもしれない。そこに期待ですなぁ