日曜劇場「VIVANT」 第10話(最終回)連続ドラマW 『落日』 第3話

2023年09月19日

連続ドラマW 『落日』 第2話

「監督は・・・
『知りたい』って言い続けてますけど、
知ることで、その先に何があるんですか?」真尋(吉岡里帆)

「知らないと・・前に進めないから。
・・・知ることによって、次の道を探して・・・
やっと生きて来た」香(北川景子)


 香は知りたいんだと思う。
人間とは、なんなのか。
自分とは、どんな人間なのか。
私は生きていていい人間なのか。

 香の「知りたい」は、まるで叫びのようだ。
暗闇の中を這いずりながら光を探し求めている。そして、やっと見つけたおぼろげな灯を決して逃したくないというような、静かな横顔から必死な思いが伝わってきた。

 彼女の「知りたい」は「生きたい」なのだと思う。
それを彼女自身も気づいていないのかもしれないけれど。

 医師の葛城は、カウンセリングで得た立石力輝斗(竹内涼真)の「真実」を語ってくれた。

「僕は妹が嫌いでした。
自分勝手でわがままで何でも自分の思い通りになると思ってた」


 事件当日、沙良(久保史緒里)は両親が買っておいてくれたクリスマスケーキを手に2階の部屋へとあがってきた。
沙良の部屋は力輝斗の部屋を通らないといけない造りになっており、その度に彼女は引きこもりの兄に毒づくのが日常だった。


「あんたさ・・・そろそろ死んでくれないかな」

 オーディションに合格した沙良は、高校卒業後に東京でアイドルデビューが決まっており、「引きこもりの兄」がいるのは都合が悪いと吐き捨てた。
彼女はケーキを切る為に持ってきたナイフで挑発しながら、蹴り、叩き、罵り続けた。


「わかるよね。
アンタなんて生きてる価値ねぇんだよ!!


 無反応だった力輝斗は静かに立ち上がると、ナイフを拾い、沙良の腹部を刺した。
一階で酔っぱらって寝ていた両親、「親も嫌いだった」「子供の頃から妹ばかりかわいがっていた」からそのまま火をつけた。


 虐待の有無を確認したら力輝斗は否定したが、
葛城は「うそかもしれない」と思っていた。

「死刑になりたくて。
あえて虐待のことを言わなかったのかもしれない。
情状酌量の余地を残したくなくて」
「どうしてそう思うんですか」香
「彼は・・・死にたがっているように見えたからです」


 カウンセリングの時の力輝斗の言葉には何パーセントかの真実はあるのだろう。
しかし話された「真実」は「本当の動機」を隠すため彼が創った「真実」かもしれない。

「僕は正常です。死刑にしてください」力輝斗

 ヤケになっているふうでもなく、思いつめている訳でもない。
「死刑」を求めることが彼の救いに繋がってでもいるような。
彼も香とおなじ?自分が生き続けることへの疑問を持ち続け、それでも静かに繋いでいた細い糸を断ち切られてしまったんだろうか。





 笹塚町の役所の人から当時の児相担当者と連絡が取れたと電話が入った。
確認したところによると立石家には虐待の疑いがあったらしい。虐待を受けていたのは力輝斗だった。

 香と真尋は現地へ行き、力輝斗が住んでいたアパートを訪ねた。
アパートは老朽化が激しく解体予定になっていた。
力輝斗がいたのは二階の右側。
8歳までそこに居り、その後、事件を起こした家に移っていた。

 近所の人も力輝斗が虐待を受けていることはわかっていた。
酒癖の悪い父親に殴られ、毎日のようにベランダに出されていたらしい。
妹はそんな兄を見つけては笑っていたという。


 なぜ兄の力輝斗だけが虐待を受けていたんだろう。
母親が浮気してできた子だったとか?
母親は庇ってくれなかったんだろうか。
なぜ彼だけが家族にしてもらえなかったんだろう。

 真尋と別れた香は、再びあのアパートに行ってみた。
同じ2階の力輝斗たちの隣の部屋。
そこのベランダで香は母親が出世の遅い父を罵る声や母親の考える能力に達することのできない香に呆れる声を聞き続けた。

 香は、まだあの場所にいた。
冷たいコンクリートに座って、こごえる心で。
傷だらけの、あの手の子だけが救いだった。

 香の深いトラウマ・・・
救いでありながら、その場面は恐怖と絶望の時間だった。
彼女はどうやって生き延びてきたんだろう。

 香は力輝斗に会って欲しいと手紙を書いた。
隣に住んでいたことは書かなかった。

『あなたと沙良さん、ご両親の間になにがあったのか
あなたがどういう思いで生きてきて
どうしてこの事件が起きてしまったのか
あなたが一人で抱えている真実があるのだとしたら
話していただけませんか。
私はあなたを知りたいのです』


 力輝斗は会うことを断ってきた。

「裁判で話したことがすべてなので。
それ以外の真実なんかありません」
と。

 さて、真尋は映画会社のプロデューサーから脚本を実績と知名度のある大畠凜子(黒木瞳)に変更すると告げられた。

 どうやら大畠の方から声をかけてきたらしい。
やっぱりね〜なんかやると思っていたよ。
でもこの人に香が満足できる脚本が書ける訳がない・・と思わせてくれる黒木さんがすごい( ̄▽ ̄;)

 憎らしいけど、大畠は真尋の弱点をズバッと指摘してくれた。

「真尋ちゃんが書くものは主人公がみんな同じ。
きれいで優しくて芸術的な才能にあふれてて・・・
あなたが憧れてるお姉さんの姿なんでしょ?

でも今度は、あの長谷部香が監督をするの。
人間の心の奥底にあるきれいなものも汚いものも全部えぐり取って、大衆の目の前にさらす。登場人物をみ〜んなガラスの破片の上をはだしで歩かせる。
そんな中にふわふわしただけのあなたのお姉さんを立たせることなんてできないでしょ?」


 姉の千穂と仲が良かったらしい真尋。
憧れの存在でありながら強いコンプレックスを抱いてきたはず。
死は真尋の中で、その存在感が生きている時以上に大きく濃くなり、彼女の心をふさいでしまうほどになってしまったのかもしれない。
真尋もまた、生きるために闘っている。

 香は力石家の親戚にも話を聞いた。
力輝斗の父親は酒癖が悪く、金銭問題でも迷惑をかけたことがあり、縁を切られていた。優しかった力輝斗が沙良にばかにされてカッとなってやったとは信じられないとも言っていた。

 さらに沙良がデビューする予定だったアイドルグループの所属事務所にも行って話を聞いてみたら、沙良はオーディションは受けていたが二次審査で落ちていた。デビューは沙良の嘘であり、事件後、美談がおいしいと思った事務所もそれに乗っかったのだった。

 大畠がプロットを完成させているのを知った真尋は焦り、対抗するためにサイコパスの沙良と力輝斗を中心にしたドキュメンタリータッチのプロットを香に提出したが受け入れてはもらえなかった。加害者である力輝斗の真実をもっと調べてから書きたいという香の言葉に真尋は苛立っていた。

「監督は過去の思い出を美化しすぎて、
それこそ真実が見えなくなってるんじゃないですか?
それに、もし力輝斗に本当の動機があったとして、
どんな理由だったら人を殺してもいいんですか?
家族全員を殺した殺人鬼なんですよ。

何がどうしたって殺された被害者が一番かわいそうに決まってます。
殺した方にどんな理由があっても、
それを世間に公表して同情を買ってやる必要なんてないです」


 真尋の加害者に対する強い憎しみを感じた香は探求モードオン!
千穂のことを調べたら17年前に交通事故で亡くなったという記事を見つけたと伝えた。

「ごめんなさい。
どうして生きているふりをしているの?」香


 香はいろんな場面で「ごめんなさい」と言う。
自分を否定することで許して欲しい「ごめんなさい」、気まずい間を繋ぐための「ごめんなさい」、習慣的に出てしまう無意識の「ごめんなさい」。

 この時の「ごめんなさい」がいつもの弱弱しいものではなく「知りたい」という意志の強さが出ており、北川さんの「ごめんなさい」バリエーションの豊かさに、わたしゃ「ガラスの仮面」第2巻 亜弓さんとマヤの「はい」「いいえ」「ありがとう」「すいません」のエチュード対決を思い出したよゞ( ̄∇ ̄;)ヲイヲイ

 千穂さんは高校一年の時、ピアノ教室を終え自転車で帰宅しているところを自動車にはねられ死亡した。運転手は彼女が赤信号で飛び出してきたと証言した。彼はまじめないい人で、警察も周りの人達も彼の言葉を信じた。彼は結婚一年目、会社での人望も厚く、近々子供が生まれる予定で、減刑を求める署名が社内で集められた。

「結局、その人は刑務所に入ることもなく、
会社をクビになることもなく、
子供も無事に生まれて、
その赤ん坊と奥さんを連れて謝りに来たんです。
怒れますか?」


 子供と奥さんを連れてくるってのはどうなんだろう?
それはずるいよ。

 怒りと悲しみをぶつける矛先を失った両親は、姉の死を受け入れられず、パリに留学していることにしてしまった。怪我の治った姉はピアニストとして海外で活躍している・・・それが姉の死後、家族の中で生まれた「真実」だった。二年前に母が亡くなった後もそれは変わらない。姉のことを聞かれる度に父は誇らしげに語るのだった。

 両親の創り上げた「真実」の世界に真尋は存在するんだろうか。
姉が死んで生き返った時、真尋も死んだような気がする。

 真尋の告白を一言一句聞き逃さないほどの気迫でメモを取り続ける香は異常だ。
でも香は止められない。知りたくて知りたくてたまらない。

「知らないと・・前に進めないから。
知ることによって、次の道を探して・・・やっと生きて来た」香
「・・・どういう意味ですか?」真尋
「私ね、人を殺したの」


 殺したのは母親かと思ったが・・・予告を見たら違うような。
積極的に殺したのではなく、結果的に命を奪うことになってしまったという意味?

 力輝斗の「真実」を探しながら、香と真尋、そして力輝斗の心を覆っていた固い殻に少しづつヒビが入ってきているような。
血を流しながら殻を脱ぎ捨てることが彼らを自由にしてくれるんだろうか。
こちらの心にもその痛みが伝わってきそうだけど、続きを見ずにはいられない。

 第1話 第3話 第4話(最終話)

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