「この声をきみに」 第5回 キスはどうですか?「この声をきみに」 第7回 ヒーローになる時

2017年10月28日

「この声をきみに」 第6回 もつれる二人

『♪ あめが ふったら ポンポロロン
あめが ふったら ピッチャンチャン ♪』 


 雨の中踊るおじさん二人はとってもかわいかった。
晴れ晴れとして心が解放されたようだった。

 りっぱな傘を開くのは勇気がいったでしょう。
でも女の子の言葉がおじさんの心に
美しい雨しずくのように浸みて誘惑した。
傘を開くことで広がった新しい世界。
おじさんはもっともっと傘が愛おしくなったはず。

 孝(竹野内豊)も勇気を出して傘を開き、父(平泉成)も
いつのまにか傘を開いていた。
遅すぎることなんてないんだよね。
偏屈なおじさん二人の生活は相変わらずケンカが
絶えないかもしれないけど、二人は傘をさす楽しさを
知ってしまった。だから大丈夫。

 今回の本も素敵なチョイスでした。
孝の心情にもいろんな面でリンクしていたし。
うちの本棚にもありますよ〜
子供ってなぜかこういう偏屈おじさんの話が好きなんです。
読んでいる私も楽しい。
久しぶりに読み聞かせをしていた頃を思いだしました。
HPはこちら


 さて・・・孝は結局、京子先生(麻生久美子)の部屋で一晩を過ごしました。
おんや?|゚д゚)・・・と思ったけど、もちろん何もありませんよ〜
でも、あの本を読むことで二人は特別な時間を過ごしてしまった。
孝の心の中にはある思いが生まれていた。

『メビウスの輪を作りまくっていた子供の頃・・・
秘密を解明したいがどうにも解けそうにない。
果てしない迷宮に足を踏み入れた怖さと興奮』


 何事もなかったかのようにしようとする京子でしたが、
この気まずさはいったい・・・

『僕らはまるで誤ってセックスでもしたかのような
緊張感でその場を離れた』


 ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープが主演した映画
『恋におちて』を思いだしました。
お互いに惹かれ合いながら不倫に陥るのを恐れ、会うだけで
満足しようとした二人でしたが、その関係を知ったデ・ニーロの奥さんは
『その方が悪いわ・・・』とショックを受けるという。

 朗読を通して、二人は心の深いところで求めあい
結びついてしまった。
それは二人が同じ魂を持っていたから。
気づいてしまったら無かったことにはできないよね。


ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈1〉 (新潮文庫)おじさんのかさ (講談社の創作絵本)


 さて、実鈴(大原櫻子)も相談に乗ってくれ
優しく話を聞いて慰めてくれた雄一(戸塚祥太)に
ぽわ〜ん・・・
朗読教室でもドキドキ・・・

 一方、すっかり仲間にうちとけた孝は福島(杉本哲太)と泰代(片桐はいり)
から『オノマトペ(擬音語・擬態語のこと)』のことを教わりましたぞ〜

『オノマトペは僕の脳でも聞こえていた。
ぐるぐるぐるぐる・・・あの夜の事が巡る・・・』


 朗読教室では来月にある年に一度の発表会に何を朗読するか
で悩みつつみなさん楽しそう。
そんな中、にゃんと雄一は『数学的媚薬』という本を
一緒に読まないかと孝を誘いました。

 こちらもしんみり素敵なお話でした。
男性二人の心が結ばれて行く過程を描いているのですが
一人は数学好きなんだと。
あらら・・・雄一君、さりげなく思いを告白でしょうか〜

 やっぱり竹様、いいお声。
そして戸塚君も。男らしくて、でもシャイな雰囲気が
伝わってきて。不器用だけど信じられる。

 この年になると『ロマンチック』な気配はこっぱずかしくて
めんどくさくもあるんで否定しちゃうけど、
やっぱり『ロマンチック』って大切ねって思ったわ〜


 その後、雄一は『トランスジェンダー』であることを告白しましたが
みなさん、何となくわかっていたようで
ショックを受けたのは実鈴だけでしたとさ。

 帰り際、佐久良先生(柴田恭兵)は孝にある本を差し出した。
それは佐野洋子 作・絵の『おじさんのかさ』。

「おもしろいオノマトペが出てきます。
実はその主人公・・・穂波さんに似てる気がして。
生き方が不器用で、でも、どこかチャーミングで」

 さすが佐久良先生、わかってらっしゃる!
コレさ、今のその人にピッタリの本を推薦するって
ひとつの仕事として成り立つと思うワ〜
こういう出会いをセッティングできるってすばらしい才能だと思う〜


 そして教室の間中、お互いに意識し合っていた孝と京子も
話すことができた。
はっきりと距離を置こうとした京子でしたが孝は思わず言ってしまった。

もっと知りたい!・・・・先生のことを・・・
「(メビウスの輪の)謎は数学的に解明するのは
そんなに難しいことじゃないんだ。
しかし、あの夜の謎はどう計算しても答えが出ない。
鍵は・・・あなたにあるんだ。だから・・・だから・・・僕は」

 いいとこに迫りそうだったんだけど、柏原さん(堀内敬子)に邪魔
されてしまったわ〜
でも彼女が誘ってくれた老人ホームの朗読ボランティアのおかげで
お父さんに心を開くことができたもんね。

 で、京子先生さ〜
孝はなんとか謎を解明しようとあの夜に起きたことを京子に訴えた。

「じゃあ何で本を読めなんて言ったんだ?あんなふうに・・
あの瞬間僕は四次元空間の迷宮のような君の不思議な
空間の中に放りこまれたんだよ!
しかもあんな危険な朗読で困惑させた。
鋭敏な言葉を一つ一つ口にする度に
僕らはあの空間でねじれてほどけて絡み合ったんだ!」

「そんな言い方はやめて」
「少なくとも講師と生徒、いや、それだけじゃない。
それ以上の何かが生まれていると感じたんだ!
触れ合う以上の何かが。
いや、頭で考えたことじゃない。全身で感じたんだ。
こう・・・ぐらぐらと!」

「じゃあ・・・それ以上の何かって何ですか?!
恋に落ちたとでも言うつもりですか?
離婚が決まったばかりのくせに?」

 ここまで言われちゃさすがに黙るしかない。
でも・・・孝はいつのまにか『Don't Think. Feel.』を
体感できるまでになっていたんだね。
こんなにも繊細に深く感じている。
だから余計辛い。

 そして繋がりは拒否しながらも朗読は辞めないで
と言った京子先生。
まだ怯えているんだね・・・


 さて、施設の父に離婚のことを報告しに行った孝だが・・・
例によって人生を全否定され反発しキツイ言葉を投げつけてしまった。

 初めてなんじゃないのかね・・・
こうやってぶつかり合うことを恐れ、つかず離れずにやってきたんだろうけど。
やっぱり朗読教室のみんなに指摘されたように孝は変わったね。


 そして二人はやっぱり似たもの親子。
孝のものは全部捨てたって言ってたけど押入れの中には
孝が昔実験に使ったものやテストなんかがほとんど取ってあったし、
孝が載った新聞の記事が丁寧にスクラップブックに
貼ってあった。その字は父のものだった。

 本に出合うタイミングってありますよね。
心にすっと入ってくる、気づかせてくれる・・・
その瞬間はやはり選ばれたもの。偶然のような必然のような。
別の時に出会っていたら2,3ページで放りなげていたかもしれない。

 『おじさんとかさ』のおじさんは孝の中で自分と重なり・・・
そして自然と父と重なっていった。
すばらしいのは孝がこの本と出会って得た感動を父親と
共有できたこと。
それは多くを語り合うよりもお互いを深いところで
感じあえたんじゃないだろうか。
 

 古本屋で偶然孝と会った京子先生は12年前に会っていたことを
認め、過去のことを話したいと言ってきた。
やっと京子先生にもタイミングが来たのかしら・・・


 第1回 つまらない男
 第2回 友だちはカエルくん
 第3回 雨にも負けぬ男
 第4回 飛べ!くじらぐも
 第5回 キスはどうですか?
 第7回 ヒーローになる時
 最終回 美しくひびきよく

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matakita821 at 21:32│Comments(2)「この声をきみに」 

この記事へのコメント

1. Posted by emi   2017年10月30日 14:59
孝と京子先生、行為(?)は何もなかったとはいえ、あれだけお互いを意識しまくっていたら、ノリでキスしちゃうのよりも、いやらしい感じですよね(笑)
その感情を口にしてしまう孝に、こちらまで赤くなってしまいました( *´艸`)
京子先生が次回どんな告白をするのか、とても気になります。

>偏屈なおじさん二人の生活は相変わらずケンカが
>絶えないかもしれないけど、二人は傘をさす楽しさを
>知ってしまった。だから大丈夫。
まさかお父さんまで踊りだすと思いませんでしたが(笑)、
お父さんも殻を破ることが出来て、新しい楽しみを知ることが出来て、とてもいいシーンでしたね。
これからも怒鳴り合うことはあるでしょうけど、似たもの同士だから分かる部分も多いのかも〜。

今回は、色んな人たちの恋心も描かれていて、面白かったです!
2. Posted by きこり→emiさん   2017年10月30日 19:36
emiさん、コメントありがとうございます。
>ノリでキスしちゃうのよりも、いやらしい感じですよね(笑)
ですよね〜!心はしっかり結ばれちゃったのに無かったことに
しようとして〜w このこの〜( * ̄▽ ̄)σ" ツンツン...
そして中学生みたいに抑えきれずに告白してしまう孝・・・
も〜危なっかしいったらありゃしない(笑
>まさかお父さんまで踊りだすと思いませんでしたが(笑)、
ホントホント!でも平泉成さん、すごく楽しそうでしたね。
あんなに険悪だった二人のこころが近づいていく様子がとても自然で
ほろりとしてしまいましたよ〜
雄一君のさりげない存在感も良かったですね。
それと彼のカミングアウトを普通〜に受け入れるメンバーのみなさんも。

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