「おそろし 三島屋変調百物語」 第三夜 邪恋華麗なるニャッツビー

2017年08月11日

「おそろし 三島屋変調百物語」 第四夜 魔鏡

 さて、今回のお客様はおしま(宮崎美子)の昔の奉公先のお嬢様・お福(佐藤江梨子)。
おちか(波瑠)の身の上話を聞いたおしまがセッティングしたらしい。
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 お福はこんな前置きをして話始めた。
「私の話を聞いた後は少しばかり鏡を見るのがお嫌になるかもしれません」

 それは今から20年ほど前のこと・・・
お福の実家は新場橋近く小松町にある三代続いている仕立て屋・石倉屋だった。
お福が10歳の時、14年もの間病の療養のために大磯に預けられていた
姉・お彩(中村ゆり)が戻って来た。

 初めて会った姉の美しさとその輝きにお福ちゃんはぽ〜っとなっちゃいましたョ。
お福には市太郎(井出卓也)という兄もおり、その夜は14年ぶりに家族で賑やかに食事をした。
父の鉄五郎(中本賢)も母のおかね(筒井真理子)も本当に嬉しそうだった。

 お福は家にいる時はいつも大好きな姉のあとを追いかけていた。
それでお彩がお福の寺子屋の送り迎えをしてくれることになった。
しかし美人の姉が外を歩くとあっと言う間にファンがついてくるようになり
警護のため古参の職人・宗助(久保酎吉)が付き添うことになった。

 宗助が忙しい時は兄の市太郎が付き添ったが、そうすると姉と兄に吸い寄せられた男女が行列になってついてきたものだった。


 誰もが振り返らずにはいられない美しい姉と兄。
14年ぶりに会った二人にしてみたら肉親というよりも特別な異性でしかなかったのかもしれないねぇ・・


「ねぇ、お嬢さん、姉と弟が女と男として思いあうなんてことが
この世にあるとお思いになりますかしら・・」お福
「・・・・・・間違いなく・・・そういうことがあったのでございますか?」おちか

「生まれた時からずっと一つ屋根の下で暮らして、
物心ついた時には兄弟として馴染んで・・・
おかしな言い方ですけど兄弟としてできあがってしまっていたのなら、
そんなことにはならなかったと思うんですよ。
今更言っても詮無いことですけれど。
ええ。だって私は兄にそんな思いを抱くことはございませんでしたから。
ですからあれは・・・
姉の身に絡みついた病がしでかした悪さだったんです


姉が幼いうちは親兄弟から引き離し、
姉が美しく育ちあがったらけろりと本復させて返してきた。
姉の病はそういうふるまいをしたんです。
いじわるじゃございませんか!
病というより呪いみたいなものでございます。
ええ。呪いでございますよ!」


 呪い・・・ならば誰がかけた呪いなのか・・・
ホントにねぇ、何かのせいにしなきゃならないとしたら、お彩さんに憑りついた病としか言いようがないよ。でも好きで病になった訳じゃないからなぁ。
魔に魅入られちまったのかねぇ・・・

 
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 姉が戻ってきて半年ほどで女中も奉公人たちも二人の尋常じゃない様子に気が付き始めた。でも口に出すこともできない。もやもやもや〜

 それで職人頭の宗助が勇気を振り絞って主人夫婦に打ち明けた。
もちろん鉄五郎もおかねも、その話を信じようとしない。
で、揉みあっているうちに鉄五郎は宗助を殺してしまった。
このことは内密にされ宗助は酔って階段から転げ落ちて死んだこととして処理された。

 しかし宗助の死をきっかけに奉公人たちの陰口は大きくなり
耐えられなくなったお彩は両親に本当のことを打ち明けた。

「私には・・・それが悪いことだとは思われません・・
私が市太郎さんを思ってはいけないのですか?
市太郎さんが私を愛おしいと思ってくれることも・・・いけないのでしょうか?
・・・・市太郎さんのことが好きで好きでなりません!」

 宗助が言っていたのは真実だった。
なのにその宗助を父は殺してしまった。

 市太郎の方は自分が姉に惹かれるのは人の道に外れることだと
わかっていた。
でも気持を抑えることができなかったそうな。

 両親は二人を引き離すため市太郎を知り合いの仕立て屋に奉公に
出すことに決めた。
そうして市太郎が家を出るという前日、お彩は首吊り自殺をして亡くなった。

 遺書にはすべては自分の責任であり自分のことは元々いなかった者として
忘れて欲しいと書かれていた。


 って、ここでお福さんが、ここまでが「長い前置き」だったと白状・・・
なんですと〜〜?!ゞ( ̄∇ ̄;)ヲイヲイ
 

 姉は病死ということなった。
残されたお福は姉の死が理解できず、気鬱になっていた。
次々といなくなる奉公人たちについても両親に聞くことができず
寂しくなっていく我が家が悲しかった。

 両親は姉の持ち物をすべて処分してしまった。
しかし修行に出る直前、市太郎は姉の手鏡を出してきてお福に渡した。
焼かれる前に隠しておいたらしい。

 一年後、市太郎は奉公先の娘・お吉を嫁として連れてきた。
お福によるとお吉は姉とは大違いの「おかめさん」。
でも明るくておおらかなお吉のお陰で実家は陽が射したようになった。
 

 正反対のタイプのお吉さんに市太郎は癒されたんだろうね。
姉のことを忘れた訳じゃないだろうが、生きていくってことはそういうことだもんね。
すべては変わって行く。

 でも、死者は変わらない。
お福が姉の手鏡を覗いていると・・・一瞬怒り顔の姉が映った。


 よくさ、夜中の12時に鏡を覗くと未来の旦那さんが映るとか、
夜中に合わせ鏡にするとあっち側に連れてかれるとか、
寝る時に鏡をそばに置くと魂吸い取られるとか・・・
迷信がいろいろあるよねぇ・・((;゚Д゚)

 現代になっても鏡っていうのは「魔」のイメージを消せない。
鏡を見ていると理屈じゃない畏怖の感情が湧いてくるというか
(わたしゃ、原始人か( ̄∇ ̄;))
異世界への入口になっているとしても納得しちまうわ。


 そんなある日、兄がお福にあの手鏡を返すよう言ってきた。
そうしてその手鏡は何故かお吉の手に渡っていた。
それを知ったおかねは不吉なものを感じうまいこと言って隠したんだが・・・
そんなおかねの背後には亡くなった宗助がーーーーーー(llllll゚Д゚)ヒィィィィ

 宗助の幽霊は鉄五郎の前にも姿を見せた。
作業場に現れた宗助はなにやら指をを指して教えようとしていた。
その夜の夕ご飯の時、鉄五郎とおかねはお吉の顔がお彩に変わって行くのを見た。

 二人とも気になって眠れやしない。
そこにお福が「鏡!姉さんの鏡はどこ?!」って言ったもんだから
宗助はそのことを教えようとしていたと気づいたさ。


 子供は大人よりも「あの世」に近い存在なのかもしれない。
大人にはない感覚で何かを察知する。


 慌てて引き出しに入れておいた鏡を見てみると・・・・
にゃんとお吉さんが閉じ込められ助けを求めていた!

 その手鏡を手に市太郎の部屋に行ったおかねは布団の上にいるお彩を見た。
「お彩・・・市太郎を連れていかないでおくれ・・」

 おかねは手鏡でお彩を叩き続けた。
しかし・・・息の根を止めたと思ったのはお吉さんだった・・・
今度ばかりは隠しおおすことはできず、両親は牢に入れられてしまった。

 石倉屋はおとがめを受け、身代をすべて召し上げられた。
気のふれた母親はそのまま獄死。
父親は死罪は免れたものの百叩きの上江戸払いの刑となり、
牢を出た後は職人仲間の元で息を引き取った。
市太郎は母がお吉さんを殺めたその夜のうちに姉の部屋で同じように首をつって死んだ。


「こうして石倉屋は滅んだのでございます。
これが私の昔語りでございます」お福
「・・・・・・・・」おちか

「私はひとりぼっちに・・・
でも、今ではこうして幸せに暮らしております」

 父の仕事仲間の家に引き取られたお福さんは息子の許嫁として
愛情をかけられ育った。


「舅も姑も人がいいったらありゃしない。
奇特な家もあったものです。
『捨てる神あれば 拾う神あり』
ひとつ悪いことがあっても、それがどんなに悪いことであっても
だからってみんなダメになる訳じゃございません。
おしまが私の身の回りの世話を焼いてくれました」

 突然の事件で親も家も失い呆然として話もしない食事もしない状態になっていた
お福だったが、奉公人のおしまの存在が彼女を変えていった。
おしまの笑い声や楽しそうに働く姿、歌ってくれる童歌がお福をこちら側に呼び戻した。


「もう当たり前に暮らしていいんだって教えてくれたんです。
そりゃあ途方もなく不幸で悲しいことでしたからね。
時々思いだして泣いたり、怖い夢を見て夜中に飛び起きたりするのはしかたない。
でも・・・それはもう済んだことなんだよって。
だから・・・おちかさんも・・・ねっ」

 お福はおしまさんからおちかのことを聞いており、それで話をしてくれたんだね。
そうだよね、被害者遺族は「遺された者」として常に事件と結びつけて見られるし、
自分たち自身も罪の意識から普通の生活を送ることを許さなかったりする。
でも、そうじゃない。
残された者は事件から自由になり生きていくべきだ。
そうして幸せにならなきゃならない。

 お福さんのからっとした人柄・・・
これは周りの人からの優しさや愛情を受けて彼女自身が人生をつくりあげた
結果だと思う。
忘れちゃいけないのかもしれないけど忘れることでしか生きていけないこともある。

 でも、おちかにはまだ済んだことと思えない。
それにお福には罪はなかったが自分には罪があると感じている。
すべては自分の存在が招いたことだと。


 お福さんは自分の家のことだって姉のせいではないし、兄のせいでもない。
おちかの両親だって松太郎のことを思って助け、一緒にやってきたはず。
家に来た時から冷たくしてきた方が良かったのかと問いかけた。

「いっそその方が親切でございました・・・」おちか
「・・・・・できもしないくせに。
どうしようもなかったんですよ、おちかさん。
誰のせいでもない。本当にどうしようもなかったんですよ」お福

 おちかの大きな目から涙が流れおちた。
理屈ではわかっていても自分が許せない。
松太郎が亡くなった今、どうすれば償えるのかもわからない。
流れる涙は心の奥に封じ込めたおちかの「助けて」という声のように思える。


 お福は姉の幽霊が一人残った自分を殺そうとしていると思い恐ろしかった。
姉の幽霊は何も言わず座っているが怖くてたまらなかった。
しかし一緒に寝てくれるようになったおしまが教えてくれた。
「お彩さんが(笑っているなら)大丈夫ですよ」

 それで勇気を出して姉の幽霊に話しかけ、ずいぶん元気になったことを報告し
姉が出てくると少し怖いと伝えた。
「福ちゃん・・・ごめんね」

 それっきり姉の幽霊は現れなくなったそうな。


「おちかさん、亡者は確かにおります。
けれど・・それに命を与えるのは私たちのここ(こころ)でございます。
同じように浄土もございますよ。ここにございます」
「・・・・・はい」

 人は死を恐れ、亡者を恐れる。
親しかったとしても得体のしれない何かになってしまったようで。
でも、亡者になったとて違うものになってしまう訳ではないのかもしれない。
生きている人間と同じように家族を心配しそばに居たいと願う。

 憎しみに囚われる亡者もいるけれど、この世から離れてやっと
己の過ちに気づき大切に立ち返ろうとする者もいるのかもしれない。


 「お元気で」と別れた二人。
黒白の間での出会いは一期一会。
もう会うこともないのかもしれないけど、お互いにとって忘れられない時間に
なったと思う。


 お福さんが去ったあとの三島屋に、また例の番頭さんがおった・・・
少しづつ三島屋の入り口に近付いとる!!

 おちかからお福さんの話を聞いたお民(かとうかず子)は
「恐ろしいというより哀れだねぇ・・・」と言っていた。

 濡れ衣を着せられ殺されたのに主人の身を心配して幽霊になって出た宗助さん、
なんの罪もないのにたたき殺されてしまった嫁のお吉さん・・・
成仏できたのか案じておりました。

 そうして「凶宅」のおたかさん(小島聖)再び!
家が鳴り、強風が吹き荒れた。
その目の中には番頭が!!

「蔵が・・・蔵が開いた・・・」おたか

 なにかが動き始めた!
そしておちかの兄・喜一は三島屋に向かっていた。
いよいよ最終夜。亡者大集合ョ。


 第一夜 曼珠沙華(まんじゅしゃげ)
 最終夜 家鳴り
 第二夜 凶宅
 第三夜 邪恋

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