2017年08月09日
「おそろし 三島屋変調百物語」 第三夜 邪恋
「じゃれん」・・・・よこしまな恋心・・デスヨ!
私にとっちゃ良助の方が邪に思えるが・・・( ̄∇ ̄;)
また違った感じの恐ろしい話だった。
おちか(波瑠)が江戸へ来てどれぐらい経ったのか・・・
相変わらず悪夢に苦しめられている彼女を気遣ったお民(かとうかず子)が
おしま(宮崎美子)に一緒の部屋で寝るよう頼んだ。
さらに怖い話を聞いて心身ともに疲れちまっただろうと伊兵衛(佐野史郎)が一日お休みをくれましたぞ。
でも、おちかはどこにも出かけようとせず縁側から外をぼんやりと見ている。
おしまがいろいろと誘いかけても外に出る気はないらしい。
それでもおしまの明るい雰囲気に促されたのか、おちかは「黒白の間」で会ったお客様、藤兵衛(豊原功補)とおたか(小島聖)から聞いた不思議な話を教えました。
気さくなおばちゃん・おしま。
裏表なくてあったかい情が伝わってくる。
リアクションもいいし合いの手も親身だから話やすいやね〜
おしまはそんな重たくて辛い話を聞くよう命じた伊兵衛のことを
怒ってたけど、おちかは伊兵衛の思いに気づき始めていた。
「『おちかだけじゃないんだよ』って叔父さんは私に
教えようとしてくれてるんじゃないかって・・」
おちかの身に起きたことはめったにあることじゃないって両親に言われて
いたから藤兵衛の話を聞いた時驚いていたもんね。
この世の中には実は信じられないような話が結構転がっているもんなんだよねぇ・・
だからと言っておちかの苦しみが消える訳ではないけど、人間だけの力ではどうしようもないこと、どうしてもそうなってしまうしかないこともあるってわかったら、違う見方もできるかもしれないよねぇ・・
おちかは今日はおしまが聞き手となって自分の話を聞いて欲しいと頼んだ。
内心ビクビクもんだったかもしれんが、おしまさんも受けてくれたさ。
伊兵衛が碁敵を招くためにしつらえたこの「黒白の間」。
碁石の色からきているけど、こうなってみると黒と白・・・
あの世とこの世の中間に位置する間とも取れるねぇ・・
襖を閉めてしまうと昼間でも薄い闇を感じる。
その薄い闇が普段ははっきりと別れているあの世とこの世とを繋いでいるような。




私にとっちゃ良助の方が邪に思えるが・・・( ̄∇ ̄;)
また違った感じの恐ろしい話だった。
おちか(波瑠)が江戸へ来てどれぐらい経ったのか・・・
相変わらず悪夢に苦しめられている彼女を気遣ったお民(かとうかず子)が
おしま(宮崎美子)に一緒の部屋で寝るよう頼んだ。
さらに怖い話を聞いて心身ともに疲れちまっただろうと伊兵衛(佐野史郎)が一日お休みをくれましたぞ。
でも、おちかはどこにも出かけようとせず縁側から外をぼんやりと見ている。
おしまがいろいろと誘いかけても外に出る気はないらしい。
それでもおしまの明るい雰囲気に促されたのか、おちかは「黒白の間」で会ったお客様、藤兵衛(豊原功補)とおたか(小島聖)から聞いた不思議な話を教えました。
気さくなおばちゃん・おしま。
裏表なくてあったかい情が伝わってくる。
リアクションもいいし合いの手も親身だから話やすいやね〜
おしまはそんな重たくて辛い話を聞くよう命じた伊兵衛のことを
怒ってたけど、おちかは伊兵衛の思いに気づき始めていた。
「『おちかだけじゃないんだよ』って叔父さんは私に
教えようとしてくれてるんじゃないかって・・」
おちかの身に起きたことはめったにあることじゃないって両親に言われて
いたから藤兵衛の話を聞いた時驚いていたもんね。
この世の中には実は信じられないような話が結構転がっているもんなんだよねぇ・・
だからと言っておちかの苦しみが消える訳ではないけど、人間だけの力ではどうしようもないこと、どうしてもそうなってしまうしかないこともあるってわかったら、違う見方もできるかもしれないよねぇ・・
おちかは今日はおしまが聞き手となって自分の話を聞いて欲しいと頼んだ。
内心ビクビクもんだったかもしれんが、おしまさんも受けてくれたさ。
伊兵衛が碁敵を招くためにしつらえたこの「黒白の間」。
碁石の色からきているけど、こうなってみると黒と白・・・
あの世とこの世の中間に位置する間とも取れるねぇ・・
襖を閉めてしまうと昼間でも薄い闇を感じる。
その薄い闇が普段ははっきりと別れているあの世とこの世とを繋いでいるような。




おちかの実家・川崎宿の旅籠、屋号は「丸千」。
大きな旅籠でたいした繁盛しているらしい。
「働き者の両親と大勢の奉公人に囲まれて、忙しいけれど楽しい家でした。
もう、帰ることは叶いません・・」
父の名は喜兵衛(春田純一)、母の名はお圭(高泉淳子)、
そして4つ年上の兄喜一(石垣佑磨)。
跡継ぎの兄と一緒におちかも小さい頃から家業の手伝いをしていた。
半年前おちかに縁談が持ち上がった。
相手は同じ宿場の旅籠・波乃屋の良助(松田悟志)。
幼馴染で兄とも仲が良かった良助のことがおちかも好きだった。
ほんのりとした初恋顔で良助のことを語るおちかの様子にほっとしたのか
おしまさんは泣きだしちゃったよ。
だって実家のことを話し始めた時からおちかは本当に幸せそうだったもんねぇ。
三島屋に来てからは見せたことのない顔・・・
「今のが本当のお嬢さんお嬢さんなんですねぇ・・・(´;ω;`)」おしま
でも、良助は殺されてしまった。
殺したのは松太郎(満島真之介)。
話はおちかが6歳の頃にさかのぼる。
雪の降る中、旅籠の客の安吉が慌てふためいて「丸千」に駆け込んで来た。
崖っぷちから生えている松の木に血だらけの子供が引っかかっているというのさ〜
すぐにみんなで救出し丸千で医者に診せたがその子は意識不明の状態が続いた。
おちかの両親はその子の体をさすりながら一生懸命「戻って来い!戻って来い!」と呼びかけた。
おちかも呼びかけていた4日目、男の子は目を覚ました。
ひどい凍傷のせいで右手の指はすべて失ってしまい、さらにショックのせいか
何もしゃべろうとしなかった。
そのため、その子がどこから来て、誰と一緒にいて、どうして松の木に引っかかっていたのかもわからなかったが喜兵衛は松太郎と名づけ面倒をみることにした。
ある日、松太郎をいじめた喜一と良助が喜兵衛にこっぴどく怒られていたら
松太郎は初めてしゃべった。
「ごめん・・なさい・・・ごめんなさい・・」
そんな事があって松太郎がなにか喜一に秘密を話したあと、二人は仲良くなったそうな。
その後、松太郎を発見した安吉が自分のところに引き取りたいと申し出たが喜兵衛は丸千に置くと譲らなかった。
安吉がなかなか諦めなかったため喜兵衛は松太郎にどちらがいいかを選ばせた。
「ここに・・・・ここがいいです・・・」松太郎
それからは松太郎も入れた3人兄弟のように育った。
そうなると喜一を取られたと思ったのか良助はますます松太郎をいじめるようになり、徐々におちかたちとも疎遠になっていった。
6年ほどが経ち、松太郎(満島真之介)は丸千の裏の細かい仕事を一手に引き受け働いていた。
放蕩に目覚めた喜一は仕事をサボるようになり、松太郎は、その穴を埋めて丸千を仕切るようにもなっていた。
「松太郎さんね、それはきれいな顔をしていたんです。
お人形さんみたいだったんですもの」おちか
「嫌ですねぇ・・・かえって嫌ですよ」おしま
「でもね、おしまさん・・私、松太郎さんのこと嫌いじゃなかったんです。
・・・・・むしろ・・・好きでした・・・」
そののち、波乃屋の良助とおちかの最初の縁談話が持ち上がった。
しかしその頃の良助は遊び人で評判も悪いし波乃屋の羽振りも悪かったので
父も喜一も受け入れなかったそうな。
良助はおちかと夫婦になれれば心を入れ替えると訴えたんだけど
喜一も喜兵衛も松太郎の方がおちかを幸せにできると言って追い返した。
その後も良助が頼みに来る度に二人は松太郎を引き合いに出し、
おちかは松太郎と一緒にさせると伝えた。
両親は松太郎を可愛がっていたし喜一も兄弟のように接していた。
自分も松太郎を好きだったが、どこかで一線を引いていたとおちかは語った。
表面的には仲良くし仕事の邪魔をしないよう適度な距離を置く、宿場にいる飯盛り女(売春婦)のようなものだったと。
「奉公人のように働き、家族のように扱われる。
でも、そこにははっきりした線引きがある。
松太郎さんは、そんな中途半端な立場に追い込まれていたんです。
そんな私たちの身勝手を見直すできごとがありました」
昔、松太郎を引き取ると言っていた行商人の安吉が現れ、
松太郎を江戸に連れて行きたいと申し出た。
松太郎の複雑な立場をわかっていたのか安吉は松太郎に手に職をつけさせ一人前になるまで面倒を見たいと言ってくれたのさ〜
でも喜兵衛は「松太郎はせがれ同様」と一蹴した。
「だけど・・・丸千の跡取りは兄さんなんですよ。
せがれ同様と言えば聞こえはいいけど、松太郎さんが骨身を惜しまずよく働く人だから、うちの両親はすっかりあてにして手放したくなかったんです。
あの行商人のおじさんには父の本音がよく見えていたのでしょう。
だから松太郎さんのために頼んでくれたのに追い返してしまった。
松太郎さんは働くことで助けてもらった恩を返しているのだから
給金のいらない奉公人だったんです」
「本人がそう望んだんでございましょう?」おしま
「私たちもそう思っていました。
でも・・こうして思い返してみると、あの時松太郎さんは本当は
表に出て行きたかったのかもしれないって・・・
ああいう話が出てだめになる度松太郎さんはがっかりしていたような・・」
おちかとの縁談については、松太郎はそんな話が出る度に必死で
否定し立場をわきまえていることを強調したらしい。
う〜む・・・おちかも説明が難しいてなことを言っていたけど、こりゃ本当に複雑だわ。
松太郎は自分を救って家族にしてくれた喜兵衛たちのことを本当に恩義に感じていたと思う。
だから丸千で役立てていることも嬉しかった。
でも家族のように扱われても家族じゃないことはちゃんとわかっていたし、わきまえていくつもりだった。
自由に生きられない人生だけど与えられた居場所に感謝しそれを守っていこうとしていた。
なのにお父ちゃんとお兄ちゃんがさ〜変に煽るからさ〜
ついつい夢をみてしまう。
でも、そんなこと望んじゃいけない!と自分を諫めるの繰り返し。
なのに何度も喜一たちはおちかと夫婦になるよう勧めてくる。
酷だよ・・・
「父と兄が煽っていたのは道楽息子を私に押しつけようとした
波乃屋の顔を潰したかったんです。
松太郎さんのことなんて眼中になかった。
松太郎さんをだしにしていただけなんです」
喜兵衛も喜一もはなっから松太郎とおちかを夫婦にする気なんてなかった。
そんな話を松太郎が間に受けるはずがないと都合のいいように考え・・
松太郎が傷ついているなんて思いもしない。
母親から喜兵衛たちの考えを聞いたおちかは、松太郎と距離を置くようになった。
それでも松太郎の態度は変わらなかった。
そうするうち、半年前にまた良助との縁談話が起こった。
波之屋も立ち直り、良助もすっかり真面目になったということで
すぐに話がまとまった。
おちかもその気になったさ。
そうして事件は起こった。
裏庭で良助とおちかがいちゃいちゃしていると偶然松太郎が通りかかり
二人にお祝いの言葉を伝えた。
だが良助の奴、「お嬢さんをよろしくお願い致します」と言われたことがカチンときて、松太郎を罵倒しボッコボコにしてしまったのさ〜
しかも「野良犬」扱い。
自分の代になったらお前なんかの居場所はない、今すぐ出ていけ!とまで。
お前こそ何様なんだよ?!この良助、ろくなもんじゃないよ。人間的に下の下。
いろいろ思うところあっただろうけど松太郎はお祝いの言葉を言って、おちかへの思いを終わらせようとしたと思われ・・・
立場をわきまえ殴られても自分からは手を出さなかった。
斧を手にもったのも良助の方だからね〜
しかし良助とやり合っているうちに、松太郎の中に封じ込めていた怒り(生い立ちや境遇に関しても)が爆発してしまった。
良助にやられるだけならいつのもことだから我慢できたかもしれないけど、
スイッチになったのはおちかにも汚らわしい野良犬と思われていたのかという絶望感・・・
良助を斧で叩き殺した松太郎は怯えているおちかに
「緩さねぇ。俺のこと忘れたら緩さねぇ」と言い置いて行った。
その後、松太郎は海岸で水死体となって見つかった。
昔、宿場の人達に助けられた松の木のある崖から身を投げて。
「どうして・・・松太郎さんはあの時・・・・
私のことを手にかけてくれなかったのでしょう・・・(涙
きっと松太郎さんにとって私は手にかけるほどの価値もないそんな女だっていうのが
最後の最後にわかって・・・・
そんな・・・そんな女に振りまわされた自分が情けなくて・・・それで・・・」
「お嬢さんだけが間違った訳じゃありません!
間違ったなら・・みんなが間違ったんです!
手にかけて欲しかったなんて・・そんなこと言わないで!
私はお嬢さんに会えたことが嬉しいんですから」おしま
あの時、ショックを受けている松太郎にそうじゃない、自分はそんなふうに思っていないと言ってあげられたらあんなことは起こらなかったかもしれない。
ただ回りに流されて何もできなかった、しようとしなかった自分への後悔と責め、
松太郎を深く傷つけたまま逝かせてしまった罪の意識と消えない恨みの言葉・・・
そんな思いがおちかを深い闇の中に引きずりこむ。
でも邪心のないおしまさんの温かい胸がおちかの悲しみを受け止めてくれた。
番頭の八十助さんもおちかのことを心配してくれとる。
こういう雑多だけど健やかな場所での日常がおちかを少しづつ癒してくれる。
おちかをおしまと一緒に休ませた伊兵衛には全部わかっていたのかな・・・
「おちか、おしまに見の上を話せて少しは楽になったかい?」伊兵衛
「・・・・・・楽になんかなりません」おちか
「だけど話すことでお前が抱えているものは何かを知ることができたはずだ。
違うかい?」
「わかりません・・・」
「黒白の間に次のお客を呼ぼう!」
「えっ?」
そこに灯庵さん(麿赤兒)が面白い話があると入ってきたぞ。
「おちか、さぁどうする?お前が三人目だから今度は四人目だよ」伊兵衛
「わかりました。お話お聞きいたします」おちか
おちかの目には覚悟が見えた。
自分が今いるところはどこかわからない。
それでも伊兵衛が示してくれたこの道を歩いていくしかない。
まだおちかには人を信じる力が残っている。
その頃、おちかの実家、川崎宿 旅籠・丸千でうなされて起きた兄の喜一は
松太郎の幽霊を見ていた。
そして丸千の外には、あの番頭さんが・・・
いったいどうなっているんだ〜い・・・
恐怖で固まっていたこころがエンディングの美しい曲でほどけていく。
人間とはなんとおそろしい、そして悲しい生きものなんだろうか。
第一夜 曼珠沙華(まんじゅしゃげ)
第二夜 凶宅
第四夜 魔鏡
最終夜 家鳴り


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大きな旅籠でたいした繁盛しているらしい。
「働き者の両親と大勢の奉公人に囲まれて、忙しいけれど楽しい家でした。
もう、帰ることは叶いません・・」
父の名は喜兵衛(春田純一)、母の名はお圭(高泉淳子)、
そして4つ年上の兄喜一(石垣佑磨)。
跡継ぎの兄と一緒におちかも小さい頃から家業の手伝いをしていた。
半年前おちかに縁談が持ち上がった。
相手は同じ宿場の旅籠・波乃屋の良助(松田悟志)。
幼馴染で兄とも仲が良かった良助のことがおちかも好きだった。
ほんのりとした初恋顔で良助のことを語るおちかの様子にほっとしたのか
おしまさんは泣きだしちゃったよ。
だって実家のことを話し始めた時からおちかは本当に幸せそうだったもんねぇ。
三島屋に来てからは見せたことのない顔・・・
「今のが本当のお嬢さんお嬢さんなんですねぇ・・・(´;ω;`)」おしま
でも、良助は殺されてしまった。
殺したのは松太郎(満島真之介)。
話はおちかが6歳の頃にさかのぼる。
雪の降る中、旅籠の客の安吉が慌てふためいて「丸千」に駆け込んで来た。
崖っぷちから生えている松の木に血だらけの子供が引っかかっているというのさ〜
すぐにみんなで救出し丸千で医者に診せたがその子は意識不明の状態が続いた。
おちかの両親はその子の体をさすりながら一生懸命「戻って来い!戻って来い!」と呼びかけた。
おちかも呼びかけていた4日目、男の子は目を覚ました。
ひどい凍傷のせいで右手の指はすべて失ってしまい、さらにショックのせいか
何もしゃべろうとしなかった。
そのため、その子がどこから来て、誰と一緒にいて、どうして松の木に引っかかっていたのかもわからなかったが喜兵衛は松太郎と名づけ面倒をみることにした。
ある日、松太郎をいじめた喜一と良助が喜兵衛にこっぴどく怒られていたら
松太郎は初めてしゃべった。
「ごめん・・なさい・・・ごめんなさい・・」
そんな事があって松太郎がなにか喜一に秘密を話したあと、二人は仲良くなったそうな。
その後、松太郎を発見した安吉が自分のところに引き取りたいと申し出たが喜兵衛は丸千に置くと譲らなかった。
安吉がなかなか諦めなかったため喜兵衛は松太郎にどちらがいいかを選ばせた。
「ここに・・・・ここがいいです・・・」松太郎
それからは松太郎も入れた3人兄弟のように育った。
そうなると喜一を取られたと思ったのか良助はますます松太郎をいじめるようになり、徐々におちかたちとも疎遠になっていった。
6年ほどが経ち、松太郎(満島真之介)は丸千の裏の細かい仕事を一手に引き受け働いていた。
放蕩に目覚めた喜一は仕事をサボるようになり、松太郎は、その穴を埋めて丸千を仕切るようにもなっていた。
「松太郎さんね、それはきれいな顔をしていたんです。
お人形さんみたいだったんですもの」おちか
「嫌ですねぇ・・・かえって嫌ですよ」おしま
「でもね、おしまさん・・私、松太郎さんのこと嫌いじゃなかったんです。
・・・・・むしろ・・・好きでした・・・」
そののち、波乃屋の良助とおちかの最初の縁談話が持ち上がった。
しかしその頃の良助は遊び人で評判も悪いし波乃屋の羽振りも悪かったので
父も喜一も受け入れなかったそうな。
良助はおちかと夫婦になれれば心を入れ替えると訴えたんだけど
喜一も喜兵衛も松太郎の方がおちかを幸せにできると言って追い返した。
その後も良助が頼みに来る度に二人は松太郎を引き合いに出し、
おちかは松太郎と一緒にさせると伝えた。
両親は松太郎を可愛がっていたし喜一も兄弟のように接していた。
自分も松太郎を好きだったが、どこかで一線を引いていたとおちかは語った。
表面的には仲良くし仕事の邪魔をしないよう適度な距離を置く、宿場にいる飯盛り女(売春婦)のようなものだったと。
「奉公人のように働き、家族のように扱われる。
でも、そこにははっきりした線引きがある。
松太郎さんは、そんな中途半端な立場に追い込まれていたんです。
そんな私たちの身勝手を見直すできごとがありました」
昔、松太郎を引き取ると言っていた行商人の安吉が現れ、
松太郎を江戸に連れて行きたいと申し出た。
松太郎の複雑な立場をわかっていたのか安吉は松太郎に手に職をつけさせ一人前になるまで面倒を見たいと言ってくれたのさ〜
でも喜兵衛は「松太郎はせがれ同様」と一蹴した。
「だけど・・・丸千の跡取りは兄さんなんですよ。
せがれ同様と言えば聞こえはいいけど、松太郎さんが骨身を惜しまずよく働く人だから、うちの両親はすっかりあてにして手放したくなかったんです。
あの行商人のおじさんには父の本音がよく見えていたのでしょう。
だから松太郎さんのために頼んでくれたのに追い返してしまった。
松太郎さんは働くことで助けてもらった恩を返しているのだから
給金のいらない奉公人だったんです」
「本人がそう望んだんでございましょう?」おしま
「私たちもそう思っていました。
でも・・こうして思い返してみると、あの時松太郎さんは本当は
表に出て行きたかったのかもしれないって・・・
ああいう話が出てだめになる度松太郎さんはがっかりしていたような・・」
おちかとの縁談については、松太郎はそんな話が出る度に必死で
否定し立場をわきまえていることを強調したらしい。
う〜む・・・おちかも説明が難しいてなことを言っていたけど、こりゃ本当に複雑だわ。
松太郎は自分を救って家族にしてくれた喜兵衛たちのことを本当に恩義に感じていたと思う。
だから丸千で役立てていることも嬉しかった。
でも家族のように扱われても家族じゃないことはちゃんとわかっていたし、わきまえていくつもりだった。
自由に生きられない人生だけど与えられた居場所に感謝しそれを守っていこうとしていた。
なのにお父ちゃんとお兄ちゃんがさ〜変に煽るからさ〜
ついつい夢をみてしまう。
でも、そんなこと望んじゃいけない!と自分を諫めるの繰り返し。
なのに何度も喜一たちはおちかと夫婦になるよう勧めてくる。
酷だよ・・・
「父と兄が煽っていたのは道楽息子を私に押しつけようとした
波乃屋の顔を潰したかったんです。
松太郎さんのことなんて眼中になかった。
松太郎さんをだしにしていただけなんです」
喜兵衛も喜一もはなっから松太郎とおちかを夫婦にする気なんてなかった。
そんな話を松太郎が間に受けるはずがないと都合のいいように考え・・
松太郎が傷ついているなんて思いもしない。
母親から喜兵衛たちの考えを聞いたおちかは、松太郎と距離を置くようになった。
それでも松太郎の態度は変わらなかった。
そうするうち、半年前にまた良助との縁談話が起こった。
波之屋も立ち直り、良助もすっかり真面目になったということで
すぐに話がまとまった。
おちかもその気になったさ。
そうして事件は起こった。
裏庭で良助とおちかがいちゃいちゃしていると偶然松太郎が通りかかり
二人にお祝いの言葉を伝えた。
だが良助の奴、「お嬢さんをよろしくお願い致します」と言われたことがカチンときて、松太郎を罵倒しボッコボコにしてしまったのさ〜
しかも「野良犬」扱い。
自分の代になったらお前なんかの居場所はない、今すぐ出ていけ!とまで。
お前こそ何様なんだよ?!この良助、ろくなもんじゃないよ。人間的に下の下。
いろいろ思うところあっただろうけど松太郎はお祝いの言葉を言って、おちかへの思いを終わらせようとしたと思われ・・・
立場をわきまえ殴られても自分からは手を出さなかった。
斧を手にもったのも良助の方だからね〜
しかし良助とやり合っているうちに、松太郎の中に封じ込めていた怒り(生い立ちや境遇に関しても)が爆発してしまった。
良助にやられるだけならいつのもことだから我慢できたかもしれないけど、
スイッチになったのはおちかにも汚らわしい野良犬と思われていたのかという絶望感・・・
良助を斧で叩き殺した松太郎は怯えているおちかに
「緩さねぇ。俺のこと忘れたら緩さねぇ」と言い置いて行った。
その後、松太郎は海岸で水死体となって見つかった。
昔、宿場の人達に助けられた松の木のある崖から身を投げて。
「どうして・・・松太郎さんはあの時・・・・
私のことを手にかけてくれなかったのでしょう・・・(涙
きっと松太郎さんにとって私は手にかけるほどの価値もないそんな女だっていうのが
最後の最後にわかって・・・・
そんな・・・そんな女に振りまわされた自分が情けなくて・・・それで・・・」
「お嬢さんだけが間違った訳じゃありません!
間違ったなら・・みんなが間違ったんです!
手にかけて欲しかったなんて・・そんなこと言わないで!
私はお嬢さんに会えたことが嬉しいんですから」おしま
あの時、ショックを受けている松太郎にそうじゃない、自分はそんなふうに思っていないと言ってあげられたらあんなことは起こらなかったかもしれない。
ただ回りに流されて何もできなかった、しようとしなかった自分への後悔と責め、
松太郎を深く傷つけたまま逝かせてしまった罪の意識と消えない恨みの言葉・・・
そんな思いがおちかを深い闇の中に引きずりこむ。
でも邪心のないおしまさんの温かい胸がおちかの悲しみを受け止めてくれた。
番頭の八十助さんもおちかのことを心配してくれとる。
こういう雑多だけど健やかな場所での日常がおちかを少しづつ癒してくれる。
おちかをおしまと一緒に休ませた伊兵衛には全部わかっていたのかな・・・
「おちか、おしまに見の上を話せて少しは楽になったかい?」伊兵衛
「・・・・・・楽になんかなりません」おちか
「だけど話すことでお前が抱えているものは何かを知ることができたはずだ。
違うかい?」
「わかりません・・・」
「黒白の間に次のお客を呼ぼう!」
「えっ?」
そこに灯庵さん(麿赤兒)が面白い話があると入ってきたぞ。
「おちか、さぁどうする?お前が三人目だから今度は四人目だよ」伊兵衛
「わかりました。お話お聞きいたします」おちか
おちかの目には覚悟が見えた。
自分が今いるところはどこかわからない。
それでも伊兵衛が示してくれたこの道を歩いていくしかない。
まだおちかには人を信じる力が残っている。
その頃、おちかの実家、川崎宿 旅籠・丸千でうなされて起きた兄の喜一は
松太郎の幽霊を見ていた。
そして丸千の外には、あの番頭さんが・・・
いったいどうなっているんだ〜い・・・
恐怖で固まっていたこころがエンディングの美しい曲でほどけていく。
人間とはなんとおそろしい、そして悲しい生きものなんだろうか。
第一夜 曼珠沙華(まんじゅしゃげ)
第二夜 凶宅
第四夜 魔鏡
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