「ST 赤と白の捜査ファイル」 第10話(最終話) シリーズ最大の難事件 モモタロウの謎今夜完結!黒幕の正体は?ドラマ10 「聖女」 第5話 最後のキス

2014年09月22日

「トト・ザ・ヒーロー」 1991年 白/仏/独 監 ジャコ・ヴァン・ドルマル

 wowowがTSUTAYAと連携した「発掘良品」というコーナーで見ました。
いつのまにかDVD化されてたのね〜
3回目の視聴です。この映画は見れば見るほど好きになる。
そして劇場で見てから23年・・・主人公のトマ老人の年齢に近付き始めたせいか、さらに味わいは深くなり心に響くようになった気がします。


 老人ホームで暮らすトマ老人(ミシェル・ブーケ)の日常は退屈。
朝起きて、食事をして、薬を飲んで、煙草を吸い、大嫌いな老人達と過ごし、あっと言う間に夜が来て、また朝になる・・・でも実はトマ老人はある男の殺人計画をめぐらし続けていた。

『殺すぞ。・・・君を殺す。アルフレッド。
バカな警察はどう推理するかな。
”キャンデーで窒息死”?”カーテンで絞殺”?”背中を撃たれて溺死”?
私は疑われない。これだけ歳月がたち誰が私を覚えてる?
君にもわかるまい。
第一、”殺人”ではない。
私が生まれた日に、君が奪ったものを返してもらう。私の人生を!全人生を!

私が誰でなぜ殺すのか君にはわからない。
だが私は覚えている。すべてをね。アルフレッド。
君は私の人生と愛を奪った。おかげで私の人生はからっぽ。
これという事が何一つ起こらない人生だった。何一つ。』


 アルフレッドとは、幼い頃向かえの家に住んでいたアルフレッド・カント。
トマは生まれた病院も日にちも同じアルフレッドと自分は病院の火事の時取り違えられたと信じ、本当の自分の人生を取り戻そうとしていたのだ。

 世捨て人のように静かに暮らすトマの現在と
めまぐるしく繰りひろげられる脳内の妄想、
そして忘れられない過去の記憶が優しい走馬灯のように描かれます。


 トマは裕福なカント家を見る度に取り違えられた運命に憤りを感じたけれど、
家庭の中にはいつも歌声と笑顔が溢れていた。
陽気で子煩悩なパイロットのパパ(クラウス・シンドラー)、いつもいい匂いがして優しいママ(フェビエンヌ・ロリオー)、『洗濯機から産まれてきた』愉快な弟・セレスタン(パスカル・デュケンヌ)、トランペットが上手で美しい姉のアリス(サンドリーヌ・ブランク)と過ごす日々は輝いていた。

 その象徴がパパの弾き語りで歌われるシャルル・トレネの『ブン』。
明るくリズミカルで、その歌を聴くとチューリップの花までが踊ってしまう。
人生の喜びが伝わってくる歌です。


 8歳のトマ(トマ・ゴデ)の夢はTVドラマの名探偵・トトになることだったが、
探偵が活躍する必要はなさそうだった。
だがある嵐の夜、カント氏の依頼で英国からジャムを運ぶために飛んだパパの飛行機は行方不明になってしまう。悲嘆にくれたママはスーパーで肉を万引きするほどダメージを受けてしまう。
すべてはカントが無理やりパパを飛ばせたせいだ。
探偵トトが悪人カントを倒し、ママとアリスを守らねば!

 その後、父が乗っていた機体が発見され、ママは遺体確認のため海外へ。
その間夏休みのキャンプへ行くと嘘をついて家に残ったアリス(サンドリーヌ・ブランク)とトマは二人だけの自由な時間を過ごす。

 アリスを演じるサンドリーヌ・ブランクが鮮やかに記憶に残ります。
小悪魔的でありながら清らか、蝶のように軽やかで優しく、蠱惑的。
トマは自分が取り違えられてると信じているので、彼にとってアリスは姉ではなくて恋人なんだよね。
そんな訳で二人がじゃれあう場面は近親相姦的雰囲気も漂いドキドキ・・・
でも、神聖で美しい特別な時間・・・・


 ここからは、ラストの内容も書きますのでご注意を。
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 だが、そんな蜜月も長くは続かなかった。
にゃんと、にっくきアルフレッドがアリスに接近。
アリスも親が留守という二人だけの秘密を話しとるしーー
それに自分にくれると思っていたペーパーフラワーの薔薇をアルフレッドが手にしとる!嫉妬メラメラになったトマは激しくアリスを責めた。

 その後、アルフレッドのせいで傷を負ったトマはアリスにカント氏の家に放火する復讐を思いだすよう迫りました。
「彼が好きで弟は愛せないのか?」トマ
「バカね。私が愛しているのはアンタよ」アリス
「じゃ、あいつの家に火を!」
「それが望みなのね」
「嘘つき!」
「やったら信じる?」

 カント家の倉庫に灯油を運び込むアリスを見たトマは慌てて追いかけたが、
炎と共にアリスは消えてしまった・・・

 トマの心に焼きついたアリスの愛・・・・
でも、その愛がよみがえると同時に激しい喪失感が襲うようになる。
そしてアリスを奪ったアルフレッドへの憎しみも。


 青年になったトマ(ジョー・ド・バケール)は測量技師として働いていた。
ママの葬儀の後、気晴らしにサッカーを見に行った競技場でアリスそっくりな、最期に見た時と同じようなレモンイエローのワンピースを身に着けた女性を見かけ、追いかけたが見失ってしまった。

 その女性を捜すためトマは会社を辞め、競技場の前でずっと張り込みを続けた。
ついに見つけたその女性はエヴリーヌ・デシャンという人妻だった。
でも髪の色も佇まいも、トランペットを演奏するところもアリスそっくり。
アリスは生きていたのかもしれない・・・

 その後、二人は愛し合うようになり、かけおちの約束をするんだけど、時間に遅れたエブリーヌを心配し家に行ってみたら、出てきたのは、にゃんとアルフレッドだった!
彼女はアルフレッドの奥さんだったのさ〜
室内にはかつてアリスがプレセントした紙の薔薇が大切に置かれていた。
トマと同じようにアリスのことが忘れられないアルフレッドは似ているエヴリーヌをアリスに創り変えたのだった。

 実はトマは、その少し前に大人になったアルフレッドに再会しているんだけど、
いたたまれなくなり逃げるように離れたんだよね。
逃げても逃げてもアルフレッドは影のように付いてくる。
でも、トマにとっては自分がアルフレッドの影のように感じただろうね。


 そして、エヴリーヌは夫もトマも同じ女性を追いかけているとわかっていたはず。
切ないのう・・・
それでも今のトマを愛し一緒に生きる道を選んでくれたのに、トマにはその事実が受け入れられなかった。
一人、列車に乗り町から離れたのでした。

 やはりアリスは生きていなかったということ、アルフレッドに翻弄される自分の運命、またアリスを失ってしまったという悲しみに泣き崩れるトマも哀れだよ。

 その後、トマがどう生きたのかはわからない。
でも、今は生まれた町の老人ホームにいる。
ある日、トマはTVのニュースで実業家として成功していたアルフレッドが破産し、
殺し屋に命を追われていることを知った。

『いかん。私が彼を殺すんだ。他の誰にも殺らせない』

 荷物をまとめ、警備室から銃を盗んだトマは老人ホームを飛びだした。
ついに名探偵トマが活躍する時が来たのだ。

 アルフレッドは殺し屋たちから逃れるため生まれ育った家にいた。
あの懐かしい家・・・
アルフレッドも白髪の老人になっていた。

「君は僕と入れ替わりたいと・・・
僕はずっと君が羨ましかった。好きなことを自由にやっていた」アルフレッド

 あの後エブリーヌとは別れて、別の女性と再婚したそうな。
「彼女とは時々会っている。今も友達だ。
君が好きで・・・僕も彼女が恋しい。今もね」

 アルフレッドこそトマに大切なものを奪われてきたのではなかったか・・・
自分はアルフレッドから逃れられないと感じていたが、アルフレッドもまたトマから逃れられなかった。
2人を繋いでいたのはアリス。
でも、もうアリスは死に、自分もアルフレッドもエヴリーヌも老いて、すべては遠い昔になってしまった。
いつまでも鮮やかに美しく輝いているアリス・・・


 トマがエヴリーヌ(ギーゼラ・ウーレン)に会いに行くと、彼女は
「ずっとあなたを待っていたのよ。
突然何も言わず姿を消して・・・とても幸せそうだわ」と言ってキスをした。

 おばあさんになったエヴリーヌも儚さが残る雰囲気で美しかった。
今では彼女も再婚しているんだけど、エブリーヌにとってはトマは永遠の恋人だったんだね。
アルフレッドもトマもエヴリーヌも苦しんだはずだけど・・・
今はその苦しみさえもきらめいているのかもしれない。


 自分の人生には何もないと思っていた。
すべてをアルフレッドに盗まれたと思っていたけど、ちゃんとトマは持っていたんだよね。


 ヒッチハイクで乗せてもらったトラックの運転手が口笛で「ブン」を口ずさむ。
前方を一台のトラックが通り過ぎ、荷台のテントが開くと、そこにはピアノを弾きながら歌う父とトランペットを吹くアリスの姿が・・・
トマの心は幸福感に満たされていった。


 アルフレッド殺害という目的を失ったトマは銃で自殺しようとしたが「取り違えられた男」の人生を完結させるためアルフレッドの身代わりになる決意をする。
トマはアルフレッドを閉じ込めると、髭を剃り、アルフレッドの背広を着て、殺し屋たちが待っている屋敷へと向かった。

 トマはアルフレッドが大切に保存しておいたアリスの薔薇の花を手に、殺されるのを待ちました。
カント氏の肖像画に別れを告げ、いつもパパがくれたキャンディと同じものを口に入れた。
・・・・銃声が響き、トマは倒れた。
名探偵トマ、死す・・・

 遺体となったトマを確認したのはアルフレッドでした。
トマの遺体は「どうだ?ついに人生を取り戻してやったぞ」というように満足げだった。
映画はトマの遺体が火葬され、トマの笑い声と共にその灰が空から蒔かれるところで終わります。

 監督のユーモアとちゃめっけが感じられるラストでした。
エンディングに流れる「ブン」と共に自分の人生までが軽やかになったような満足感で満たされましたョ〜。
過去・現在・そして妄想が複雑に入り組んでいる構成なのにすっきりと見られ、
映画がひとつの美しい結晶のようでした。
どの場面も繊細で切なくて、でも描きすぎない。
1時間32分に人生が詰まっていました。
この映画は是非見て欲しいです。


ねこちゃん

好きすぎるとなかなか文章にできないと言うか〜
言葉が見つけられずに毎日ほんの少しづつ書いてきた感じです。
でもこの作品に再会できて本当に良かった。
ホント、よくぞ放送してくれました。

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matakita821 at 16:41│Comments(2)TrackBack(2)映画 

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1. トト・ザ・ヒーロー  [ 象のロケット ]   2014年09月26日 20:00
ある老人ホームでトマ老人は追想にふけっていた。 悲しかったパパと姉アリスの死…。 アリスによく似た人妻との恋と悲しい別れ…。 そうだ、それというのもみんな隣りの息子のせいだ、とトマは拳銃を手に…。
2. トト・ザ・ヒーロー  [ のほほん便り ]   2014年11月11日 16:16
1991年カンヌ国際映画祭 カメラ・ドール(最優秀新人監督賞)、ユース映画賞受賞作品、だったのですね。初めて観た時、とても印象に残り、好きでした。ああ、ヨーロッパ映画だなぁ、と実感(ベルギー・フランス・ドイツ合作)でも、肝心な部分が理解できてなかった分、「ああ、

この記事へのコメント

1. Posted by ヨーコ   2014年09月24日 06:21
有名な映画だからタイトルだけは知っていたけど、出会ってないなぁ〜。
凄く興味深い内容だね。
こういう感じ好きだわ〜。
好きな映画程、変な風に伝わったらいけないって文章にするのに神経を使うよね。
2. Posted by きこり→ヨーコさん   2014年09月24日 21:20
コレはね〜不思議だけどおもしろい映画だよ。
基本、メロドラマっぽいかもしれないけど、表現が繊細ですごくシンプルだから
見やすいんだよね。妄想の絡み具合もほどよくて切ないの。
子役の子たちもすごくいいんだよ〜
好きな映画を言葉にするって難しいね。
書いても書いても違うような気がして、なかなか終れないよ〜

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