2014年1月に見た映画「ル・アーヴルの靴みがき」 2011年 仏/独/芬 監 アキ・カウリスマキ

2014年02月05日

ドラマ10 「紙の月」 最終回 誰のための愛

「my name is rika umezawa・・・」
間違って・・・罪を犯し・・・逃げ続けた梨花。
でも、やっと本当の自分自身と向き合う準備ができた。
その姿は、たとえ泥だらけで石を投げられるような存在だとしても、
梨花はやっと手に入れた自分自身を手放すことはないだろう。
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 さて、振り返ってみますか・・・
『光太に年下の彼女ができても、私達の関係は変わらなかった。
私達の間には彼女にはない強い絆がある。
そう思いこむことで幻の現実にしがみついていた』

もはやお互いの関係に虚しさしか感じていないのに・・・

 事件発覚後、正文(光石研)は光太(満島真之介)に会っていた。
梨花から連絡が入っていないか、そしてなぜ梨花が光太のために犯罪を犯したのかを知るためだった。
「彼女はそんなに簡単に・・・何ていうのかな、他の男とどうこうなるような人じゃないんだ。
それがどうして・・・」正文
「わかりません・・・」光太
「何か思い当たるようなことはないかな。君じゃなきゃダメだっていうような」
「わかりません」
「君の主観でいいんだよ。彼女の言葉とか、行動とか・・・」
「わかりません」
そんなはずないだろ!!・・・・君は梨花と2年以上も」
「本当にわからないんです!どうして僕だったのか」
「・・・・・・・・・」
「もしかしたら、彼女にとっての僕はアフリカの子供だったんじゃないかなと思った時もありました。
彼女が昔はまっていたっていうボランディアの。
学校に行けないアフリカの子供です」 

 ちゃんとわかってたんだね。光太にも。
梨花が求めていたのは自分ではない、自分を通した何かだということが。

紙の月子守唄


 正文の帰国が再来月に決まった。 
「また、二人で暮らしていけるね」正文
「・・・・・・・・・・・」梨花

 もう夫とは暮らしていけない。
というよりも、梨花にとっては光太と過ごす時間の方が現実で、正文の妻である生活が仮想のように思える。
その事を光太に相談しようとしたけれど、拒否されてしまった。
彼が若い恋人といるのは明白だった。

「どうしてよ・・・
私がこれまで、こんなお願いしたことある?
今日会いたいってたった一度の頼みも断るの?どうして断れるの?!

 あんなにいろいろしてあげたじゃない!
望むものをすべて買ってあげたじゃない!
声にならない心の叫び・・・
この時、初めて梨花は自分が人の心をお金で買おうとしていたことに気付いたんじゃないでしょうか。
そして、決してお金では買えないということも。

 梨花はその思いを今は呆けて自分のことを娘と思い込んでいるたま江(富士真奈美)に語るのでした。
「愛してるのね、彼のことを。
涼子は惚れっぽいから心配よお・・・
でも親の言う事なんかバカにして、聞きゃしないんだろうけど。
でもねぇ、涼子・・・・
あなたはその前に自分を愛せてるの?
誰かを愛するには、まず自分を愛さなくちゃダメ。
誰かに愛されることばかり考えるんじゃなくて、自分が自分を認めて愛してあげなさい。
自分を愛せない人がね、一番不幸なのよ・・・」たま江

 自分が嫌いだった梨花・・・
誰かに愛されれば、自分も自分を愛することができると思っていた。
だから愛が欲しかった。
必死で、罪を犯してでも愛して欲しかった。

 光太から別れを切りだされた。
「俺・・・ここから出て行きたい・・・ここから出して・・・お願い・・」
「「ここ」って・・どこ?」

 檻に閉じ込めても、こころを繋ぎとめることはできない。
いつのまにか梨花は正文にされていたことを、光太にしていたんだね。

『私はようやく気付いた。
私が私を愛してこなかったことが、すべての始まりだったのだ』


 気持ちが無くなっても金蔓としての梨花を利用するんじゃ?と思ったけど、
光太はそこまでのワルではなかったようです。
新しい恋人と出会って身の丈に気づいたのか、この関係が自分を破滅させると判断したのか・・・

 さて、木綿子(水野真紀)の夫・真一(甲本雅裕)の浮気問題ですが・・・
前回、携帯のロックを解除してメールを読み驚愕する場面で終ったけど、そのパスコードは浮気相手の誕生日だったらしい。
かなり落ち込んでいるはずなのに、「私、間違ってないから。堂々としている」と亜紀(西田尚美)に伝える木綿子。

 「間違っていない」「自分は正しい」・・・
そりゃそうなんだけどさ。裏切ったのは夫なんだから。
でも「正しさ」を振りかざされちゃ何も言えないよ。
「節約」だって「正しい」。
でもその「正しさ」が家族を追い詰めている現実を木綿子は見ようとしなかった。
節約に励む=「自分」になっちゃってるから、それを手放したら空っぽになってしまう。

 そんな時、娘ちかげ(原涼子)の万引きが発覚。
盗んだのは子供用のおしゃれセット。
平謝りに謝った後、ちかげに怒り爆発。

「言ったって買ってくれないでしょ!」ちかげ
「当たり前でしょ!あんな必要ないもん!」
「ママは私が仲間外れになってもいいの?!ちかげん家は貧乏だからって言われてもいいの?!」
「ビシッ!(歩行者も思わず立ち止まるビンタ)」
「うわあああ〜〜ん!!」

 この件で真一はやっと木綿子に本音を伝えることができました。
「もういいんじゃないか、節約は・・・」
「二人で話し合って決めたんじゃないの?!お小遣いとかTVの時間とか、節約にもなるし教育にもいいって」
「確かにそう話し合ったよ。
節約して、貯金も増えればちかげの将来も安心だって。
でもさ、その将来のために、今金に振り回されるのは本末転倒だろう?」
「私がいつお金に振り回されたのよ?」
「・・・・・・・いつもだよ。何でもかんでも金、金・・・
疲れて帰ってきて、安い飯食わされて、好きなように風呂も入れなくてさ・・・もう、うんざりなんだよ」
「だから・・・浮気してるの?!」

 話は浮気問題に移行したんだけど、女性として悲しむというよりも浮気相手に大金を使ったことを責めてしまうという・・・
「彼女にかけたお金、全部返しなさいよ!」
「・・・・・結局・・・・金なんだな・・・」

 寂しい・・・
木綿子の価値観はお金が一番だから、ついこういう言い方になっちゃうんだろうけどさ。
相手の女のことで責めてくれた方が真一的にも納得がいったよね・・・

 亜紀の方は、娘の沙織(南乃彩希)に呼び出されてはおねだりされるものを買い与える日々・・・
そして押入れに隠した衝動的に買い物をした品々を岩田(長谷川初範)に見つけられてしまいました。
「お前、治ってないだろう、買い物依存症。
コレ、着ろよ、全部着ろよ!
コレ開けずに隠しておくから、どんどん自己嫌悪に陥るんだよ!
お前は必要だから買ったんだよ!不安だから買ったんじゃない!もう・・自分を責めるのはやめろよ」
「やめてよ!」

 亜紀が依存症のスパイラルから抜け出すきっかけは母親としての思いだったのかな・・
ねだれば望みは叶うと思い込ませてしまった娘に間違いを教えなければならない、
自分の犯した過ちを伝えることが母親としてできること・・
そして自分が浮かび上がれるとしたら、今しかないと。

「ごめんね。あなたが悪いんじゃない。私が悪いの。
ごめん・・・・ごめんなさい・・・
私、買い物依存症で離婚されたの。
不安になると買い物して・・・カード破産しそうになって・・・
かっこよくなんかないの。全然ダメなお母さんなの。
それでもあなたのお母さんでいたかった・・・」亜紀
「・・・・・もう帰る。母親なんていらない」

 辛いけど、亜紀はやっと今の自分を受け入れることができたんだと思う。
みっともなくても、カッコ悪くても、その自分を受け入れて生きていくしかないんだよね。

 ついに正文が帰国。家に戻ってきました。
ぎこちない雰囲気で迎える梨花・・・

 そして、梨花は上司の井上(佐戸井けん太)から10日間の休みをとるよう言われました。
他の支店で横領が発覚し、全店一斉検査が入ることになったらしいのさ〜!

『ここまでだった。
何でもできる。どこへでも行ける。
そう思って走ってきたけれど、私が行けるのはここまで。
それでも私はまだ、この先に進むことを選んだ』


 梨花は夫にはシンガポールにいる友達に会いに行くと嘘をついて、ひとりで逃亡を計画。
でも、夫が一緒に旅行しようって言いだしちゃった。
しかたないから夫と4日ぐらい過ごした後、離れることに。

 顧客のみなさんには休暇を取る事だけを伝え、横領ノートは処分。
高価な服やアクセサリーを売り払ったら、残ったのは20万ほどだった。

 夫と共に成田を立つ日、梨花は母親と光太に電話をいれた。
「お母さん、お父さんと仲良くね。元気でね」

「あのマンション、できるだけ早く出てね。
それから、もしこれから、誰かが尋ねてきて私のこと聞いても、
『何も知らない。関係ない』って言って」
「え?どういうこと?どっか行くの?」光太
「夫がまた海外になったから、付いていくの。さっき言ったこと、お願いね。
・・・・じゃあ、元気でね」
「梨花さん、ありがとう。いろいろとありがとう・・・」

 ちょっとは報われたんじゃないのかな・・・
梨花が欲しかったのは、こんなふうに相手と繋がることができたという実感、
自分が必要とされていると感じられる瞬間。
不思議な関係だったけれど、二人とも後悔はしていないと思う。

 
 そして・・・梨花を失うかもしれないという思いが正文に気付きを与えていました。
梨花がプレゼントした時計を嬉しそうに身に着けている夫は、明らかにあの頃の夫とは違っている。 

「この前の夜、ちょっと話したよね。
『もし、子供が生まれていたら』とか・・・
『もし、なんてない』って言ったけど、最近、もし俺が、きちんと君と向かい合っていたら、
何か変わったのかなって思う事があるんだ。
俺は、俺がいないと君が生きていけないって思う事で自分を支えようとしてたんだと思う。
君を失うかもしれないと思って初めて、自分の身勝手さに気づいた。
ほんとに勝手だよね」正文
「・・・・・・・・・・・・・」梨花
「・・・・・・・ごめん。君が必要なんだ」
「・・・・・私、ずっと感謝してた。結婚してからあなたがしてくれたこと。
でも、すっと、あなたに伝えてなかったのよね。私がバカだったの」
「違うよ」
「・・・・・ごめんなさい。今まで本当にありがとう」

 やっと欲しかった言葉がもらえたのに。やっと夫婦になれたのに。
遅かった。
もし、あの時・・・って思うけれど、梨花が光太と出会ったから、そして罪を犯したから、
二人はお互いを許す時間が持てたんだと思う。しかたがなかったんだよ。

 そして、梨花は逃亡。
銀行はついに横領に気づきました。
銀行側は横領の事実を隠し、隠密に梨花の居場所とお金を探すつもりだったようですが、梨花の身を心配した正文が警察にかけこみ世間の知るところとなりました。

 マスコミの直撃を受けた平林(ミッキー・カーチス)は梨花のことをかばい、
たま江は「梨花さんは天使様よ」と伝えた。

 正文は梨花の夫として隠れることなく対応しました。
「私の責任だと思っています。私が彼女を追い詰めたんです」
「奥様から何か連絡ありましたか?日本へ戻ってくると思われますか?」
「戻ってくるまでずっと待ちます。何があっても、彼女は私の妻ですから。
彼女と一緒に罪を償っていくつもりです」

 あの夫が変われば変わるもんだよ・・・
正文は、やっと梨花という人間に向き合うことができたんだね。
そしてふがいなかった自分自身とも。

 亜紀と木綿子も・・・・
「何が欲しかったのかわからなくなっちゃった。
同じだね。私も梨花ちゃんも。
梨花ちゃんはお金使って、私は節約して、幸せになろうとしていただけ・・・
こうすればこうなれるって信じて、他を見ないようにしてきたのは、きっと同じ」木綿子
「全然違うよ。木綿子がしたのと梨花のとは全然違う。犯罪なんだから」亜紀
「でも、梨花ちゃんは苦しんで・・・」
「それはわかるよ。でも梨花はこのままじゃ絶対ダメ。
ちゃんと戻ってきて捕まらないと。
そうしないと、救われないんだよ。
どうしてなんだろうね・・・何でいつも幸せになる方法間違えちゃうんだろう・・」

「昔、結婚する時お兄ちゃんに『幸せになれよ』って言われたの思いだした。
結婚したから、これからは二人でっていうんじゃなくて、
『一人の人間として幸せになりなさい。そして幸せにしてあげなさい。
本当は人間は誰でも簡単に幸せになれるんだよ』って」木綿子

 人はつい欠けたものだけを数えてしまうのかもしれない。
そして足りないものがあるから幸せになれないと思い込んでしまう。
でも、本当は空高く届かない場所にあると思ったものは、すでに自分の中にあるのかもしれない。
見ようすれば違う人生が待っていたのかもしれない。

 梨花は国境の近くまで来て、動けずにいました。 
『ビザなしでこの国にいられる期限が迫っていた。
わずかな希望を求めて、私は国境の町に来ている。
動け!
国際手配されていなければ、イミグレーションを通れる可能性もある。
また進み続けることができる。
動け!・・・・・動け!
けれど・・・・私はいったいどこへ行きたいのだろう・・・』


 突然の雨・・・その雨は梨花の背中を押してくれるはずだった。
でも、雨が止んでも梨花は動けずにいた。

『信じられない罪を犯してしまった時、果てのない旅が始まったと思っていた。
でも、本当は、答えはずっと私の中にあったのだ』


 ずっと立ち尽くしている梨花を指さしながら出入国審査場の職員が書類を手に確認し合っている。
もう逃げられない。
梨花は本当の自分に向かって歩き出しました。

『自分を探して逃げるのではなく、愛してみよう。
その時私は、本当にどこへでも行けるのだから』


 ううう〜〜終ってしまいました。
梨花のどこか解放されたような笑顔が印象的なラストでした。
途中、ちょっと不安になっちゃったこともあったけど、やっぱりこのドラマ好きだワ。

 原田知世さんがすばらしかった。
一貫した清らかな存在感がメロドラマに陥ることなく、梨花の心のさすらいをみせてくれたと思います。
彼女が追いかけているものを、私も追わずにはいられなかった。
そして何ともいやらしいストレスを与えていた夫を演じた 光石研さんも良かったなぁ・・・
梨花への愛情を再確認して変わろうとする夫、光石さんだからこそ嘘がない感じで伝わってきた。
梨花と共に描かれる亜紀・木綿子のエピソードもバランスが良かったと思います。
原作も読んでみたいな〜

 第一回 名前のない金
 第二回 満たされた渇き
 第三回 清らかな罪
 第四回 楽園の終わり

usagi

宮沢りえさん主演の映画は2015年公開予定。
また違った雰囲気なんだろうな・・楽しみ。

『ドラマ10』は4月までお休みか〜
ちょっと寂しいわね〜

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