「東野圭吾ミステリーズ」 第4話 レイコと玲子「浪花少年探偵団」 第5話 しのぶセンセは入院中

2012年07月29日

「午後の遺言状」 1995年 監督・新藤兼人

 なんか不思議な雰囲気の映画だったなぁ・・・
タイトルからわかるように、これは「老い」、しかも目前に迫っているであろう「死に繋がっている老い」を描いております。

 老女優・森本蓉子(杉村春子)が自分の別荘で過ごした夏の10日ほどを描いておりますョ〜。
「森本蓉子」はかなりの高齢だけど、今も現役の女優。
夏になると、この蓼科高原に避暑のためにやってくるらしい。
迎えるのは30年も管理をまかされている豊子(乙羽信子)とその娘あけみ(瀬尾智美)。
蓉子と豊子の長い付き合いを感じさせるぞんざいながらも信頼が感じられる短い会話がいい。

 着いた途端、蓉子は去年、庭師の六兵衛が自殺したことを知らされる。
大工だった六兵衛は自分のために棺桶まで作り、その上に遺書と思われる「もうこれまで」と書いた紙、そして釘打ち用に打ちやすい手頃な大きさの石が置いてあったそうな。

 驚きながらも、淡々と六兵衛の死を受け入れた蓉子は、六兵衛が石を見つけたと思われる河原に案内してもらい、自分用に石を拾ってくる。なぜかちょっと楽しそうだ。
この淡々としたムードはこの映画全体で貫かれている。
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 豊子から、あけみは実は蓉子の夫・三郎(津川雅彦)の子だと打ち明けられても(「姦通だ!」とか「薄汚い!」とか多少は感情的になる場面はあるけど)翌日には受け入れた体で「あけみは自分にとっても娘だ」とあけみの結婚式に参加したりして、豊子もそんな蓉子の隣で笑っている。

 痴呆症になった昔馴染の女優・牛国登美江(朝霧鏡子)が夫・藤八郎(観世栄夫)と共に現れ、別荘で過ごした後心中したと知らされショックを受け、豊子と共に二人が死ぬまでの足跡をたどったりするが、そこにはルポライターの矢沢尚子(倍賞美津子)が同行し、カメラをパシャパシャやる中での追悼の旅となる。

 コレ、蓉子を女優って設定にしたことで、いろいろ逆にぼやけちゃったとこないかな〜?
淡々としているのは、蓉子が女優と言う性をもった女性だからなのか、気丈だからなのか、「死」と「老い」を達観しているからなのかよくわからないんだよね〜
まぁ、蓉子だけでなく、ここに出てくる登場人物は皆そのようなトーンで生きて死んでいく。
でも、まぁ、この「死」をテーマとした舞台には常にゆったりとした「ユーモア」が感じられて、見ているこちらも大らかな気持ちにさせられるのは確かだ。

 あけみの結婚というきっかけがあったにしろ、20年以上も秘密にしてきたあけみの出生の秘密をなぜ、豊子は話そうと思ったのか・・・
あともうちょっとなんだから墓まで秘密を持っていきゃーいいじゃん・・・とも思うけど、あともう少しだからこそ伝えたい思いがあるのかもしれない。

 豊子は「自分達は真剣に愛し合っていた」からこそあけみを産んだと訴えた。
豊子も蓉子も70代ぐらいか?
「死」をリアルに見つめ始めた今だからこそ、自分の人生は何だったのかひとつの答えが欲しくなるのかもしれない。
蓼科の田舎の農婦として生きたけど、愛を貫いたと思いたい豊子と、今までも女優としてしか生きてこられなかったし、これからも女優として生きていくと再確認した蓉子。

 ラストに蓉子が拾ってきた石を豊子が河原に捨てるのは、「死」を見据えていても自分は自分らしい「生」を全うし続けるし、蓉子にもそうあって欲しいという思いなのかな・・・
老いた二人だからこそ枯れて死を待つのではなく一時一時を強く生きて欲しいというメッセージを感じました。

 さて・・・・・「老い」、そして、同時に続いていく「若い命」を対比して描くためのあけみの存在だったようですが〜〜
突然河原で裸になって水浴び始めたり(しかも微妙にぼかしがかかっている。これは新藤監督の意志ではないだろうけど、ぼかしはホントヤダねぇ・・・しらけるわ〜)、「足入れの儀式(結婚式の前に花嫁と花婿がお祭り的に人々の前で(柵はあるけど)男女の営みをする儀式)」には、????ってなったぞ。
 
 設定がもうちょっと昔だったら、普通に見られたかもしれないけど1995年の時点で、蓼科でこのような儀式が?ってちょっと引っかかっちゃったな〜。
ここだけ観念の世界なのかしら〜?とか・・・・( ̄ー ̄?)
言いたいことはわかるんだが〜

 でも、音羽信子さんのふとした表情には何度もグッときました。
演技を超えた「本当」以上の本当が心に響いて、脚本や映画であることを忘れさせ、「命」を伝えてくれたと思います。
そういう意味で、気になるところはあるけど好きな映画だな〜と思いましたよ〜

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中学の頃、学校全体で映画館に行って映画鑑賞する行事があったけど(「八甲田山」とか〜?「デルス・ウザーラ」とか?)、なんとなくそれを思い出すような映画だった・・・(´∀`;)

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matakita821 at 19:10│Comments(2)TrackBack(0)映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by ユーミン   2012年07月30日 23:56
北海道も30℃を越えた所が有ると
ニュースで聞き・・『信じられんわ』と家族で話題になってました
こちらは35℃で融けそうな毎日です
でも噴水の有る公園で紫陽花が綺麗に咲いてて、びっくり・・こちらはもう葉が枯れ始めてます
随分前に新藤兼人監督の助監督時代からのドキュメントをBSで見ましたが偉大な方だったのですね
2. Posted by きこり→ユーミンさん   2012年08月01日 06:04
>北海道も30℃を越えた所が有ると
そうなんです。
連日33度とかで、夜も暑いしぐったりきています。
猫たちも夏バテなのか、まったく食べなくなって
しまって、病院に連れて行ったのですが
ずっと食べない時期が続いて心配しています。
>でも噴水の有る公園で紫陽花が綺麗に咲いてて、びっくり・・
咲き始める時期が遅いから、まだがんばってるのかな?
我が家の雑草だらけの庭でも咲いてくれてます(* ̄m ̄)

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