「最後から2番目の恋」 第11話 (最終話) まだ恋は終わらない春を待つ猫たち

2012年03月27日

第35回 創作テレビドラマ大賞受賞作 『夜明けのララバイ』

 連ドラが終わって、ちょっと寂しくなった私が、TV欄で見つけて引っかかったドラマ・・・
主演の谷村美月さんと蓮佛美沙子さんに惹かれて見てみました。

 21歳の叶江(谷村美月)は2度の薬物使用により保護観察中。
母親は(多分)彼女が幼い頃に海で自殺しており、天涯孤独の身の上(多分)。
友達はいない。呼び出されれば定期的にホテルで会う男がいるが、お金を介在した関係だ。
生きていることの意味が見いだせず、今自分は生きているのか、生きていていていいのかも、わからない。
そのことを確認するために、カミソリで切り、血を流す・・・腕にはカットした痕が何本もある。
「君はいつもそう。
排他的なフリしているけど、常に人を欲している。
人に飼われたくはないけど、餌は欲しい。
プライドのないノラ猫だなぁ・・・現に今日も切ってんじゃん・・・
ねぇ、死ぬの?生きるの?どっちなの?」

 そんな叶江が、ある夜、美しい少女に出会った。
土の中に何かを埋めた後、思いつめたように見つめ、去って行った彼女の表情に心惹かれた。
掘り返してみると、スタンプカードの他に病院の診察券があった。

 それらを捨てることができずポッケに入れていた叶江が、翌日仕事を終えて帰ろうとしたら、その少女が埋めた場所を掘りかえしていた。
「貧乏くせぇ・・・捨てたもんに未練残すなんて、貧乏くせぇよ、お嬢さん」叶江
思わず声をかけてしまった・・・

 少女は緑里(蓮佛美沙子)と言って、叶江よりひとつ年上だった。
どこか幼さが残る無邪気な緑里と叶江の付き合いがその夜から始まった。
お互いの事情も住んでる場所も知らなかったけど、関係なかった。

 さて、叶江は定期的に保護司と面会するために家に行くことになってるだが、上田耕一さん演じるこのおじさんが、なかなかいい味を出しておりました。
叶江に接する態度が親戚のおじさんみたいなほどよい距離感で、暖かすぎない優しさがいいんだわ〜。
おちゃめで、ちょっと隙がある感じ。
ツッコミどころがあるのが救いになってるっつーか・・
『バッカじゃないの』と思いながらも、すげなくできない感じっつーの?
いつのまにか相手の心を包んでいる・・そんな年輪を自然に感じさせてくれました。

「叶江さん、大丈夫ですよ。これからですよ、人生は」
そんな事言われても「はぁ・・」としか答えられないけど、叶江の中では、実は〇が付いている。
でも、その思いを表現したくないものも叶江のなかにはある。
それが、緑里と付き合いだしてから、ちょっとづつ変わってくる。

 それでも、ふとした拍子に、あの日、母が歌っていた「海はひろいな おおきいな」という歌声が頭の中で響き、いたたまれなくなる。
海に行ったことがないという緑里に誘われ、あの日以来、初めて叶江は海を見た。
緑里がそばにいてくれたからか、時が流れていたからか、あの悲しい記憶が過去になっていることに叶江は初めて気づいたようです。

 出会いっておもしろいですね。
緑里と出会わなければ、叶江はずっと海に来ることができずにいたかもしれない。
半ば強引に緑里に連れられて来たことによって、穏やかでいられる自分に気づくことができた。

 でも、そこで緑里が倒れ病院に運ばれたため、叶江は彼女の母親(竹下景子)から事情を知ることになった。
生れた時から病気を抱え、入退院を繰り返して来た緑里は、医師から余命宣告を受け、先日その日が過ぎたばかりだった。
 夜中にそっと病院を抜け出して、叶江と会っているのに看護師さんも彼女も気づいていたが見守ってきたらしい。

「正体バレちゃったね・・・正解は、ただの病人でした。
あの時、あの夜さ、死のうと思った。私がこの世に生きた証を全部消して・・
あの時は、本気でそう思った。でも、死ねなかった。人間て弱いよね・・・」緑里

「ねぇ・・何歳まで生きれば、人は幸せな人生だったって言えるんだろう・・」緑里
「そりゃあ・・80とか・・?」叶江
「じゃあ、79で死んだ人は不幸だね」緑里
「そんな事はねぇよ」叶江
「じゃあ、何歳?78、77、76・・・それとも50?」緑里
「わかんねぇよ」叶江
「私はね、二十歳でも、10歳でも、一生懸命生きたって言えれば、それはそれで幸せな人生だと思う」緑里
「でも、俺は・・オレは緑に生きていて欲しい。こうやってずっとくだらない話していたい」叶江

 誰かの生を心から願うことは、自分の生への思いにも繋がっている。
死に近づいている緑里の存在が、叶江の生に初めて輪郭を与えてくれた。
本当の自分を晒し、リストカットだらけの腕を見せた叶江の腕をとった緑里はその手を枕に愛おしげに目を閉じました。
叶江の存在が緑里にとっても救いであったことを現した、美しい場面だったと思います。

 有体に言えば、生きる意味を見いだせずにいた女の子が少女の死をきっかけに「生きている自分」「生きて行こうとする自分」に気づくという物語ですが、平凡な作品に終わらなかったのは、描きすぎない、ドライだけれどほどよい湿り気の感じられる温度と主演の二人の女優のフレッシュで繊細な演技のおかげだったと思います。

 緑里が死んでいく場面は描かず、空のベッドと、微笑みながら無言で伝える母親の表情、それを受けて頭を下げて去っていく叶江の姿で見せたのも良かった。

 緑里の死で、叶江は初めて涙を流すことができた。
彼女は叶江に涙を流させるために、来てくれたのかもしれない。
その涙は心の奥に詰まっていた過去の悲しみを洗い出し、自分はここに立っている、生きているという事を思い出させてくれた。
 一人で歩いていく叶江の背中に緑里との出会いと別れで生まれた、ほのかな灯りのような「生」への思いが感じられました。

 キャストとスタッフによって丁寧に作られた美しい布のような、いいドラマだったと思います。
S.E.N.S.の音楽も静かに寄り添うようにドラマを盛り上げていました。
できれば、再放送してもっと多くの方に見てもらいたいな〜

ねこちゃん
このドラマを見て、ちょっと気になるドラマだった4月から始まる谷村美月さん主演の『たぶらかし』が、かなり気になるドラマに。
楽しみだぞ( ̄∀ ̄)

matakita821 at 20:20│Comments(8) このエントリーをはてなブックマークに追加 2012年ドラマ 

この記事へのコメント

1. Posted by Tsukasa   2012年12月04日 12:11
はじめまして。突然の書き込み、失礼いたします。
私もこのドラマ「夜明けのララバイ」を偶然観ました。もの凄く感動していしまい、もう1度観たいとずっと思っているのですが、再放送の予定もなさそうですし困っています。もし録画しておられましたら、DVDやブルーレイで譲っていただくことは出来ないでしょうか?
突然不躾なお願いをして申し訳ありません。よろしくお願いいたします。
2. Posted by きこり→Tsukasaさん   2012年12月04日 18:41
コメントありがとうございます。
地味な作品でしたが、心に残る佳作でしたよね。
一人歩いていく叶江の後ろ姿が、爽やかで、そして切なくて、印象に残りました。
って、DVDの件ですが、私は基本録画派なので記事を書いたものはすべて録画しているのですが、すいません、書いたらすぐ削除してしまうもんで、残ってないのです。お役に立てなくてごめんなさい。
NHKのオンデマンドでも見られないですかね?
DVD化になるといいですよね。
3. Posted by みろ   2015年07月13日 23:23
5 今ならここで観れるようですよ

http://cgi2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009050377_00000
4. Posted by きこり→みろさん   2015年07月14日 19:54
>今ならここで観れるようですよ
そうなのですね〜
ありがとうございます。
5. Posted by 伊藤琴子   2020年01月23日 18:41
5 だいぶまえに偶然見て最後は泣きましたハードデスクに録画して毎日のように観ては泣いてでしたある日突然娘に削除されていて大大ショックでした いつか再放送されるのではと毎日のようにテレビ欄を見たものでした 私もだいぶ年を取ってしまいましたが何故か思い出に残る作品でした 是非再放送お願いしますDVDも出て無いようなので 宜しくお願いします
6. Posted by 琴姫   2020年01月23日 18:50
5 8年前のドラマでしたか なぜか思いでぶかいドラマでした連佛さん始めて知りましたがそれからファンになりました 再放送は無いのかま毎日のようにテレビ欄を見ていた毎日でしたが残念ながら予定はなかったみたいですね是非再放送お願いします
7. Posted by きこり→伊藤琴子さん   2020年01月25日 15:20
コメントありがとうございます。
このドラマDVD化もされていないんですね
2012年の放送だったので私も忘れてしまいましたが
NHK放送だったらオンデマンドでもしかしたら見られるかもしれませんよ
8. Posted by きこり→琴姫さん   2020年01月25日 15:22
重ねてコメントありがとうございます。
私は放送する側ではないので希望をかなえてさしあげることはできませんが・・
また再放送があるといいねすね。

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