「ドン★キホーテ」 第10話 あばよ児童相談所2011年 DVD鑑賞日記 その19

2011年09月19日

「シャイン」  (1996年 オーストラリア) 監督・スコット・ヒックス

 「英国王のスピーチ」を見て、ジェフリー・ラッシュおじさんに興味を持ったので、以前から気になっていたこの映画を見てみました。
デヴィッド・ヘルフゴットという実在のピアニストのエピソードを元に作られた映画です。

 厳格な父ピーター(アーミン・ミューラー=スタール)から厳しい音楽教育を受けたデヴィッドは地域の音楽コンクールでの演奏を認められ、審査員だったローゼンの指導を受けるようになる。
ローゼンの元でデイヴィッドの才能は磨かれ、14歳の時にアメリカの音楽院に誘われるんだけど、父親はそれを許さず、ローゼンが各方面にお願いして留学資金を調達したにも関わらず、勝手に留学話を蹴ってしまう。

 この父親の口癖が「お前は恵まれてる」・・・
そして、家族が耳にタコができるぐらい聞かされている話が、ピーターの父親は音楽に理解のない人間で、やっとお金を貯めて買ったヴァイオリンを叩き割られたというもの。

 彼の断ち切られた音楽への情熱は息子デヴィットへと引き継がれ、デヴィッドは父の期待に応え続けた。
でも、ピーターはデヴィッドが自分の目の届かない世界へ飛び立つことを許さなかった。
ヘルフゴット家の回りは外部からの侵入避けのためか、有刺鉄線が張り巡らされてるんだけど、これは家の者が外に出られないようにしているようにも見える。

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 留学への道を閉ざされ、嘆くデビッド(ノア・テイラー)を抱きしめピーターは囁く。
「私を憎むな。人生は残酷だ。だが、それに耐えて生きるのだ。
デヴィッド、私の愛は誰よりも強い。他人は信用できん。私は永遠にお前を守ってやる」
多分、自分の父親に言われたであろう言葉で、今度は自分の息子を縛り付けるピーター。

 父親の愛の呪縛・・・それを現すようにデビッドの人生に何度も登場するのがラフマニノフのピアノ協奏曲・・・父はこの楽譜を宝物のようにしており、彼の愛する音楽を象徴するものだった。
ローゼンの指導を受け始める時も(多分10歳ぐらい)ラフマニノフを弾かせるよう頼んでいた(ローゼンが難しすぎると言ったので、結局折れたが)。
 父の夢を刷り込まれたデヴィッドにとっても、この曲を弾きこなすことがピアニストとしてのゴールであり、父の愛を得ることが出来る唯一の道に思えたのか・・・彼は何度もこの曲に臨み続けた。

 失意のデヴィッドは作家のキャサリンとの交流に慰めを見出し、彼女の励ましで徐々に自信を取り戻していく。
全豪器楽コンクールに出場することにしたデビッドはラフマニノフのピアノ協奏曲を弾くことにする。
でも結果は2位。また父親を失望させてしまった。

 その後、デヴィッドはロンドン王立音楽学校の奨学生に選ばれるんだけど、今度も、もちろんピーターは許さず彼を殴り続けた。
でも、もうデビッドを止めることはできなかった。
「出て行ったら二度とこの家には入れない。妹たちは兄を失うんだ。この家を破壊するのか?
出ていくと必ず罰が下るぞ」と阻む父に「許して、父さん」と告げて出ていくのでした。

 この、父を裏切ったという思いはデヴィッドの心を重石のように塞ぎ苦しめることになる。
でも、ロンドンの学校でもデヴィッドは教授から天才として将来を嘱望される存在となっていた。
んが・・・それ対して、日常生活を生きる知恵が欠落しているのかアンバランスな部分も目立っていた。
(左右別々の靴を履いていたり、下半身裸で郵便を取りに行ったり、子供のように素直すぎて友人に金を騙し盗られたり等)

 協奏曲コンクールに出ることになったデヴィッドは教授の指導の元、練習に励んだ。
選んだ曲は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第三番。
成果はどんどん顕れ、デヴィッドはラフマニノフの世界にのめり込んでいった。
この曲で優勝すれば、父に許してもらえる、家に迎え入れてもらえると思ったのかもしれない。

 コンクール当日、デビッドの神経は冴え渡り、すばらしい演奏を披露し優勝する。
しかし極限まで張り詰めたデヴィッドの神経は演奏を終えると同時に砕け散り、病院へと運ばれてしまう。
ドクターストップがかかり演奏ができなくなったデヴィッドは実家のある街に戻り、父に連絡をするんだけど拒絶されてしまう。

 この電話の前に、コンクールの時の演奏が録音されているテープと優勝メダルが父の元に届けられ、ピーターも演奏内容を聴いているはずなのに、それでもデヴィッドを許そうとしないんだよねぇ・・・
これは、芸術家として自分の手が届かないところに行ってしまった息子への嫉妬なのか・・・
息子の栄光も努力もシャットアウトしたピーターには、自分を裏切ったという事しか残らなかったのか・・

 演奏ができない自分は、もはや父に許されることも愛されることもない・・・
心を病んだデビッド(ジェフリー・ラッシュ)はその後10年以上も精神病院で生活することになった。
それでも、彼の心は音楽を求め続けた。

 父によって敷かれたピアニストという道だったけど、デヴィッドにとっては音楽が生きるすべてとなっていたんだよね。
何をすることもない病院での日々を送りながら、デヴィットの頭の中には常に音楽が流れ続け、指は見えない鍵盤を叩き続けた。

 その後、デヴィッドのファンだったという女性に引き取られるんだけど、日常生活をうまく送れない彼に付き合いきれなくなった彼女は知り合いのアパートにデヴィッドを預けてしまう。

 ピアノも入れてくれたので、デビッドは思う存分ピアノを弾くんだけど、ご近所から騒音へのクレームが入ったため大家からピアノに鍵をかけられてしまう。
ピアノを求めて外に出たデビッドは、あるバーで見つけたピアノを弾き、客たちから拍手喝采を受ける。これが、デヴィッドの人生の転機となった。

 その店の専属ピアニストとなったデヴィッドはいつしか注目を集め、その記事を読んだ父親が彼の元にやって来る。
あの時の優勝メダルをデヴィッドの首にかけ、抱きしめた父は言った。
「愛しているよ」
その言葉にどれほど苦しめられたことか・・・そしてどれほど求め続けたことか。

 多分、ピーターは愛の伝え方をわからなかったのだろう。
子供の時から何度も聞かされた「壊されたヴァイオリン」の話。
それは恨みの言葉でありながら、ピーターが父に愛を求める言葉であり、その愛をデヴィッドに伝えたいという、いろんな思いが込められていたように思う。
初めて父に抱きしめられたデヴィッドには、混乱しながらも、それが伝わったんじゃないかな・・
父は自分を憎む顔で愛を伝えていたんだと。

 もっと早く、ピーターが彼を抱きしめてくれていたら、彼の心はここまで壊れてしまわなかったかもしれない。
父を憎む気持ちと愛されたい気持ち、許したい思いと許されたい思いに苦しみ続けた日々・・・
でも、すべては時の彼方・・・・

 今、彼は生きて、演奏を続けている。
日常生活を正常に送るのは相変わらず難しいけど、苦しみの中でも音楽を求め続けた彼の心は今、子供のように澄み、音楽そのもののように自由に跳ねている。

 その後、星占い師のギリアン(リン・レッドグレイヴ)と知り合ったデヴィッドは結婚し、彼女の支えでコンサート活動を再開する。
喝采を受けるデヴィッドの目には音楽と共に生きる喜びが溢れ輝いていました。

 人生は長い。そして複雑で謎に満ちているけど、生き続ける価値はある。
生き続けた者にだけ見える世界があると思う。
見終わった後そんなことを思いました。
いや〜見て良かった。
ジェフリー・ラッシュさんも父親役のアーミン・ミューラー=スタールさんもすばらしかった。
演技を超えた真実の物語として訴えかけてきました。多くの人に見て欲しい映画です。

ねこちゃん
青年デヴィッドを演じたノア・テイラーさんも良かったな〜
にゃんと「チャーリーとチョコレート工場」にも出てたのね。
いったいどんなだろ?と思ったら、チャーリーのお父さん役?なんか印象ないんだけどぉ〜
 

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matakita821 at 12:22│Comments(2)TrackBack(0)映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by 紅緒まま   2011年09月21日 15:01
シャインを観たのはいつだったかなぁ?ずいぶん前です。
もう一度観たくなりました。
ノア・テイラーさんはあの「チャーリー」のお父さんですか?歯磨きチューブのチューブを工場で締めていた人ですよね??あまり記憶が〜線が細くて
顔に見覚えはあるのですが、他にどこで見てるのかな??です。
シャインに出ていたとは・・・
2. Posted by きこり→紅緒ままさん   2011年09月21日 18:23
「シャイン」心に残る映画になりました。
ヘッドホンをつけて音楽を聞きながらトランポリンを楽しそうに跳ねるデヴィッドの姿になぜかじ〜んとしてしまいました。
>ノア・テイラーさんはあの「チャーリー」のお父さんですか?
そうらしいんですよ〜
でも、チャーリーのお父さんって特に印象に残ってないんですよね〜むしろおじいちゃんの方が憶えてたりして・・(笑

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