2010年09月28日
ドラマWスペシャル なぜ君は絶望と闘えたのか 後編 ※ 追記あり
第一審判決公判の後、控え室で町田(眞島秀和)を迎えた酒井検事(田口浩正)は控訴の決意を伝えました。
「町田さん、私にも小さな娘がいます。
母親の元に必死に這って行く赤ん坊を床に叩きつけて殺す、
そんな人間が罰せられない司法など必要ない!
私は本気でそう思っています。
今日の判決を認める訳にはいきません。
たとえ上司が反対しても、私は控訴します。
100回負けても、101回目もやるつもりです。
町田さん、一緒に闘いましょう!」
声をあげて泣き続ける佳織の母和子(市毛良枝)に、町田は
「お母さん、すいません、すいません・・すいません」と頭を下げ続けました。
その後、町田は、北川(江口洋介)の友人である報道ディレクター東野(小澤征悦)の番組で、現在の自分の思いを伝えることにしました。
飛行機で移動中、一人の客室乗務員(井川遼)が町田に近づき、小さな福入だるまを手渡しましたぞ・・
「これは、私達乗務員全員の気持ちです。
こんなものですが・・・お守りに。がんばってください」
小さなエピソードだったけど、井川さん演じる客室乗務員の真摯な態度に心打たれました。
直接伝えることはできないけれど、同じように思ってる方は、日本全国にいたと思いますよ。

「町田さん、私にも小さな娘がいます。
母親の元に必死に這って行く赤ん坊を床に叩きつけて殺す、
そんな人間が罰せられない司法など必要ない!
私は本気でそう思っています。
今日の判決を認める訳にはいきません。
たとえ上司が反対しても、私は控訴します。
100回負けても、101回目もやるつもりです。
町田さん、一緒に闘いましょう!」
声をあげて泣き続ける佳織の母和子(市毛良枝)に、町田は
「お母さん、すいません、すいません・・すいません」と頭を下げ続けました。
その後、町田は、北川(江口洋介)の友人である報道ディレクター東野(小澤征悦)の番組で、現在の自分の思いを伝えることにしました。
飛行機で移動中、一人の客室乗務員(井川遼)が町田に近づき、小さな福入だるまを手渡しましたぞ・・
「これは、私達乗務員全員の気持ちです。
こんなものですが・・・お守りに。がんばってください」
小さなエピソードだったけど、井川さん演じる客室乗務員の真摯な態度に心打たれました。
直接伝えることはできないけれど、同じように思ってる方は、日本全国にいたと思いますよ。

ニュース番組に出演した町田は、判決が過去の少年事件の判例を基準に行なわれたこと、
そして、被告の家庭環境の不遇が情状酌量の理由となることへの疑問を冷静に話しました。
さらに、事件後、少年法で守られる加害者に対して、被害者や被害者家族の人権はまったく顧みられなかったことや事件の真実の姿が報道を通すことによってぼやけてしまうと訴えました。
「妻は死後、強姦されています。
しかし、報道では『乱暴目的』という言い方になるんです。
これでは真実が伝わらず、どれだけ事件が悲惨だったかわかりません。
どれだけ犯人がひどいことをしたかが伝わらなければ、妻と娘は浮かばれない、
私は、そう思いました。
だから、妻が強姦されたことを自分の口から述べたんです」
よく、婦女暴行事件でも『いたずら』って表現されますよね。
これは、被害者に対する配慮的なものなのかな・・と、自分の頭の中で変換していましたが、
この表現では被害者の本当の苦痛は見えてこないように思います。
でも真実を伝えたくない場合もあるだろうし、町田さんのようにあえて真実を伝える場合もある。
一番に大切にすべきなのは、被害者の思いなんですよね。
この年、『犯罪被害者保護三法案』が国会で可決されました。
このことにより、『遺族傍聴席の確保』『公判記録の閲覧とコピーする権利』
『公判での被害者の意見陳述権』が認められた。
私が無知で知らなかったんですが、『認められた』って・・・
こんなことも認められてなかったんですね。
ここまで被害者の立場がないがしろにされていたとは・・・
2000年9月7日、控訴審 第一回公判。
この日、被告人に見えないようにという条件付きではあったが、法廷内に遺影の持ち込みが許可された。
これは広島高裁史上、初のできごとだったそうです。
社会的関心の非常に高いこの裁判のために検察と警察は協力し必死に捜査にあたりました。
その成果として、被告の秋山がまったく反省していないことを示す、文通相手に送った手紙を証拠として提出しました。
法廷で読まれた秋山の手紙は『死刑』から逃れることをおもしろおかしくちゃかしたような内容で、第一審で弁護側が訴えた『改悛の情がみられる』という陳述とは相反するものでした。
ここで北村の部下である山下(ミムラ)の声が入ります。
手紙の相手の文面は公表せず、どんな内容に対する返事かもわからないのに秋山の手紙だけを取り上げるのはおかしいと。
「検察は世論の反感を買うような秋山の文面だけをピックアップしている」山下
「TVのワイドショーとかは、喜びそうだな」同僚
「そうなんです!話題作りのために騒ぎ立てるのっておかしくないですか?」山下
何かが変わってきている・・・
裁判が世間の注目を集める中で、マスコミは秋山の手紙をセンセーショナルに扱い、
秋山の死刑を訴え続ける町田を、『死刑肯定派』の代表のように取り上げました。
さて、2000年のクリスマスイブ・・・北川は編集部で残業中。
そこに元恋人の有紀(木村多江)から電話が・・・
「前編」の始めの方で足をくじいた北川は、医師をしている有紀と病院で再会。
その時、今でも忘れられない彼女が、結婚して子供もいることを知ったのよね〜
その彼女から息子が大変だから助けてという電話が入りました。
感染性の胃腸炎で病院に運ばれたらしい。
結婚してるのに、何で旦那さん呼ばないで、北川呼ぶんだ?って思ったけど、
どうやら、この子、北川との子供みたいなんだよな〜
で、北川には告げず、一人で産んで育ててるような・・
その事に北川も気づいたようです。
このエピソード必要か?って「前編」見てる時思ったけど、町田との出会いによって北川も変わったってことなんでしょうね・・
12月26日 控訴審 第十一回公判 被害者遺族意見陳述
「妻と娘の最期を知っているのは、秋山君、君だけです。
妻は君に首を絞められ、息絶えるまでの間、どんな表情をし、どんな言葉を残したのか。
母親を目の前で殺された娘は、どんな泣き声だったのか、君はそれを忘れてはならない。
妻と娘の最期の姿、それが君の犯した罪だからです。
君が殺した人の夢や希望、人生そのものを奪ったことが罪なのだから。
君は妻と娘について何ひとつ知らない。
ただ唯一、君が妻と娘の人生を知るすべとして、妻と娘の最期の姿がある。
だから、決して忘れてはならない。
君の犯した罪は万死に値します。
いかなる判決が下されようとも、このことだけは忘れないで欲しい」町田
2002年3月14日 控訴審の判決は「控訴を棄却」。
裁判官は秋山の行為を強く断罪はしましたが、計画的殺人とは認めませんでした。
さらに証拠の手紙は、相手の手紙に触発されて書いたものと結論づけ、
被告人に反省の情が不十分なのは明らかだが、反省の情が芽生えると判断した現判決が誤りとまではいえないというものでした。
若いから、いずれ反省の気持ちが生まれることを期待するってことかい?
でも、今現在反省していないのが明らかなら罰するべきでは?
閉廷後も椅子に座り続けている町田に、裁判官は頭を下げました。
審議を重ね、裁判官として迷った末に出した苦汁の結論だったということなのかな・・
「今度の負けはただの負けじゃない気がする」北川
「つまり・・何かが変わった・・ってことか?」東野
「司法に人間の匂いがしてきたってことだ」北川
検察は上告したが、最高裁からの連絡はなかった。
そして3年の月日が流れ・・・2005年秋、最高裁は2006年3月14日に弁論を開くことを決定。
しかし当日、新しく秋山の担当となった弁護士団は準備不十分を理由に欠席しました。
「今まで7年間に渡って、裁判を傍聴してきましたが、これほどの屈辱を受けたのは、今回が初めてです。
私たち遺族は、必死の思いで裁判に向きあっています。
時間と経費をかけ、傍聴に来ているんです。
今日の弁護人の欠席が、裁判を遅らせるための策だとしたら、絶対に許せません」町田
改めて、弁論期日は4月18日と決まったが、その前日、弁護団の高岡(益岡徹)は記者会見を開き、新事実を主張しました。
佳織さん宅に侵入したのは強姦目的ではなく、亡くした母親に甘える気持ちからであり、
殺害してしまったのはそっと抱きついた時、激しく抵抗されてパニック状態に陥り、静止しようとして誤って死なせてしまったからだった。
夏海ちゃんについても、泣き止ませようとしたが泣き止まず、首に蝶々結びをしてあげているうちに死なせてしまった。
殺意はまったくなく、被告人の行為は「傷害致死」にあたるというものでした。
こんなことが通ったら、司法も人間も終りだよ・・・
改めて思うけど、裁判ってのは「真実」を明らかにする場ではないんだね・・
勝つか負けるか・・・
最高裁判決日・・・
最高裁は、第一審の『無期懲役』判決を破棄。
広島高裁へ再審理を命令しました。
ここまで来るのに、7年・・・
再審理が始まって終わるまでは2年ぐらいかかるかもしれない・・・
長い・・・長すぎる・・・
この裁判は、世論的には人権派弁護士団による『死刑反対派』VS『死刑肯定派』の様相を呈しており、死刑制度の是非を問うまでに発展していました。
「僕はべつに、死刑制度をどうのこうの思ってる訳ではありません。
ただ、この事件、佳織と夏海の事件に関しては、あの被告は当然死刑になるべきだと考えてるだけです」町田
秋になり、町田は出張のついでに、久しぶりに東京の北川を訪ねました。
町田にとって北川とは、自分が自分であることを再確認できる存在なんじゃないでしょうか・・
裁判だけでなく、町田自身もマスコミに注目され、佳織さんと夏海ちゃんのため裁判が、犯罪被害者の権利問題や死刑制度の是非、少年法の改正・・・様々な立場から関わる人々が増え、行方を見守っている。
そんな中、北川は最初から、被害者家族として闘う町田を見つめてきた。
兄のような存在でもあり、彼と会うことで町田はブレずにいられたようにも思います。
楽しく夕食を終えた後、雨宿りをしている店の前でドリカムの歌が聞こえてくると、
冷静だった町田の顔が耐えるようにゆがみ、涙が溢れました。
「すいません・・・好きだったんです・・・佳織・・この曲・・・」
「歩こう・・・歩こう」北川
町田は、佳織さんの結婚指輪をペンダントにして、いつも身につけていました。
愛する人を思うと同時に悲しみや苦しみに襲われる。
そんな中でも、大切な人の記憶は失われていく・・・町田は新たな悲しみを感じ始めていました。
「二人の笑顔は、はっきり憶えてるんですよ。
でも、それがどんな時の笑顔だったのか、どうしてその時笑っていたのか、
それが、時々思い出せなくなる時があるんです。
いつか薄れていくんでしょうか・・消えていくんでしょうか・・思い出って」町田
「記憶は消えていく。それはしかたがないことかもしれない。
でも、思いは残るんじゃないかな。
二人の笑顔を忘れなければいい。笑顔は錆びたりはしない」北川
2007年5月24日、差し戻し控訴審 初公判。
被告人の秋山は26歳になっており、町田道彦も31歳になっていた。
第三回公判、被告人質問2日目、弁護人の高岡が事件直後の状況を尋ねる中、
秋山は佳織さんと夏海さんを押入れに入れたのは「四次元ポケットだから」
「ドラえもんが願いを叶えてくれる」と思ったと答えました。
さらに、佳織さんの死後、姦淫したのは『魔界転生』にならった復活の儀式だったと発言したのです。
この発言が報道されると、世論は弁護団バッシングの流れとなり、マスコミもそれを煽るような報道を繰り返し、過熱化していきました。
ネット上でも弁護団は激しく叩かれ、日弁連に脅迫状が送り付けられる事態にまでなりました。
ここで北川の知り合いの弁護士吉崎(柄本明)の声が入ります。
「俺達はどんな凶悪犯だろうが、被告となった人間を弁護するのが仕事なんだ!
なのにあの叩かれようは目に余る!!
悪いヤツラは皆殺せ、そんなことがまかり通れば裁判などは必要なくなってしまう。
多くの冤罪も弁護士が暴いたってこと忘れるな。
いいか、北川、今のままじゃ、この国はおかしくなってしまうぞ。
世論が裁判を動かしてはならん。そうだろう?」
『町田道彦の妻子の命を奪った事件だということを片時も忘れてはならない。
死刑制度の賛否も、マスコミのメディアスクラムによる弁護団への攻撃も、
町田道彦には関わりのないことだった』北川
9月20日、差し戻し控訴審 第十回公判 被害者側意見陳述
感情に流されることなく、家族への深い愛情とその未来が断ち切られた悲しみと無念さを訴えた町田の陳述は弁護団の心にさえ響きました。
「私は家族を失って、家族の大切さを知りました。
妻と娘から、命の尊さを教えてもらいました。
私は、人の人生を奪うこと、人の命を奪うことが、いかに卑劣で許されない行為かを痛感しました。
だからこそ、人の命を身勝手に奪った者は、その生命をもって償うしかないと思っています。
それが私の正義感であり、私の思う社会正義です。
そして、司法は社会正義を実現し、社会の健全化に寄与しなければ、存在意義がないと思っています。
私は、妻と娘の命を奪った被告に対し、死刑を望みます。
そして正義を実現するために、司法には死刑を課していただきたくお願い申し上げます」
この後、突然、弁護団から被告人質問のための時間が要求されました。
弁護団としては、秋山から町田への償いの言葉を引き出そうとしたのかもしれませんが、
秋山の口から出たのは「拘置所で会って、本当の自分を見て欲しい」という自己本位なものでした。
さらに、検察とのやりとりで感情的になった秋山は「ナメないでいただきたい」と挑発的発言すらしたのです。
公判後、町田は初めて北川の前で怒りを露にしました。
「僕は被害者です。妻と娘を奪われたんだ・・
なんで・・・いつまでも許さない、悪い被害者だって・・世の中には・・
僕と同じ目に合ったら、誰だって死刑を要求するはずです!!
死刑なんて廃止すべきだと、僕はそう考えていたと思います。
もし、佳織と夏海が生きていたら、僕はそう考えていた・・
仇を討つことのどこがダメなんですかーーーーー!!
仇を討ちたいって思うことの、何が悪いんですかっ!
僕は二度と、佳織と夏海を抱きしめられないんです・・
何でこんなこと・・・誰もわかってくれないんだよ・・・
マスコミはもう、僕だけの味方をしないでください。
だって変でしょう?
秋山は裁判官より先にマスコミに死刑にされてるじゃないですか?
秋山は死刑だって、マスコミが言ってる!
変でしょ?変ですよね?絶対変です!
秋山は死刑になるべきだ!その後のことは、僕には何も考えられません・・・
想像できないんです・・・ただ苦しいだけなんです・・
すいません・・・どうかしてます、僕・・・」町田
「いいんだ。やっと今、君に届いた気がしてる。情けない!今頃・・・」北川
一人の人間としての、愛する者を奪われた者の心の叫び・・・
北川は、自分が出会った青年町田の姿を書き留めずにはいられませんでした。
制約の中で書く事を良とせず、北川は会社に退職願を出し、フリーのライターとして書き続ける道を選びました。
そして・・・差し戻し控訴審 判決公判の日がきました。
裁判長は第一審判決を破棄し、「死刑」の判決を下しました。
その理由は、弁護団が被告人から聞き出したとされる新事実は信用することができない。
さらに被告人は改善更生を願った一審二審の判決に応えることなく、虚偽の供述構築のために時間を費やした。
「結局、上告審判決の言う死刑の選択を回避するに足りる、特に酌量すべき事情は認められなかった。
以上の次第であるから、第一審判決の量刑は死刑を選択しなかった点において
軽すぎると言わざるを得ない。
主文、第一審判決を破棄する。被告人を死刑に処する」裁判長
裁判所から出てきた町田に殺到する記者たち・・・
しかし、町田の目は北川を探していました。
そして、力強く見つめる北川を見つけた町田は、静かにうなづいていました。
終わった・・んじゃなくて、これでやっと明日を見つめることができるんだよね。
これから、町田さんの人生は、やっと動き出すことができる。
その翌日、北川は広島拘置所にいる秋山を訪ねました。
面会した秋山は法廷で会った秋山と違っていました。
控訴審で秋山が陳述したことは、弁護団の作り話ではなく、初めて明かした彼の真実でした。
「僕は町田さんに本当にお詫びしたい。
死んだ二人にも謝りたい。
過去の過ちを何百遍でもすいませんと言いたい。
僕は殺めた命に対して、命をもって償うのは当たり前だと思っています」
罪と釣り合いの取れる罰を与えることは、もしかしたら加害者の救いにもつながるのかもしれないと思いました。
秋山の時のように弁護団が『死刑反対』の立場を強固にするために、『死刑』の可能性を排除してしまったら、被告人が犯した罪と向きあう機会を奪ってしまうことにならないだろうか・・・
北川は書き上げた原稿を、町田の元に届けました。
「佳織さんと夏海ちゃんへの君の思いを知るうちに、守る人がいることはなんて美しいことなんだろうと思った。
書きたくなった。俺は君たちのことを書きたいと思った。
それで決心がついた。自分が描きたいことを書こう、それで」北川
「・・・会社を。
でも・・僕は、北川さんが書かれたようなりっぱな人間じゃありません」町田
「嘘は何ひとつ書いてないよ。君が成長した自分に気づいてないだけだ」北川
「成長・・・・
そう言っていただけるのは嬉しいですけど・・・
僕はそんな成長より、家族がいて、ごく当たり前の会話をして、
一緒にごはんを食べて、風呂に入って、
おやすみなさい、おはようっ言って、一緒に笑ったり怒ったり感動して、
何にも・・何にも特別なことが起こらない時が過ぎて、
一緒に年をとっていって、誕生日やクリスマスをお祝いして・・それで」町田
北川の涙は止まりませんでした。
「すまない・・すまない・・・」
こんな辛い成長なんて、ない方がいい。
でも、人は絶望の中ですら成長する。
それは、町田さんが苦しみから目を背けることなく、支えてくれた人々との出会いを糧にして闘い続けたから。
それが町田さんの家族への深い愛情の証明だったのでしょう。
重いけれど、見ずにはいられない・・そんなドラマでした。
変に視聴者の感情を煽るような演出がなく、淡々と描いてくれたのが良かった。
それと、ひとつの考えに偏らないよう、所々で疑問を投げかける人物を登場させてくれたお陰で、より深く考えながらドラマの世界を味わえたと思います。
確かな演技力の役者さんばかりで、安心して見られましたが、
特に町田道彦を演じた眞島秀和さんの存在感には圧倒されました。
このドラマで町田道彦という人間を生ききってくれたと思います。
原作者の門田さん、ドラマ制作に関わったすべてのみなさん、そしてドラマ化を許可されたご遺族の皆様の勇気に心から敬意を表したいと思います。
そして、長かった闘いを終えた(被告弁護団は上告し、現在も係争中のようですが)町田さんのこれからの人生が穏やかで幸せに満ちたものであって欲しいと祈ります。
なぜ君は絶望と闘えたのか 前編
2012年2月21日追記
2012年2月20日、「光市母子殺害事件」で殺人・強姦致死の罪に問われていた大月孝行被告(犯行当時18歳)の上告審判決で最高裁は被告の上告を棄却し、被告の死刑が確定した。
妻と娘を奪われた木村洋さんの13年に渡る長すぎる戦いにやっとひとつの区切りがついた。
木村さんが会見で、「死刑は厳粛に受け止めたい」と口にされていたように、死刑確定は喜ぶべきことではないけれど、これでやっと被告が自分自身の罪と向き合うことができる機会を与えられたことは良かったと思う。
死刑制度の是非については、冤罪の問題や、罪を認識し心から悔いている者には生きて償う道もあるのではないかとの思いから、はっきりした答えは、今の私には出せない。
でも、この事件に関しては、被告に更生の余地はないと思うし、何の罪もない弥生さんと夕夏ちゃんの命、そして彼女たちと生きるはずだったご家族の未来を奪った罪は許されるべきではない、被告自身の命で償って欲しいと思う。
罪と、それに見合う罰という事を考える場合、私が一番に望むのは、罪の認識ということだ。
死刑が確定したことによって、大月被告は、初めて「死」と「生」をリアルに感じ、弥生さんたちが味わった殺される恐怖を知るのではないだろうか。
死刑執行までの間おびえ続ける日々・・・それは非人間的な残酷すぎる罰だろうか・・・
その時間が大月被告の罪の認識に繋がるかどうかもわからない。
でも、どうか、その残された時間を、人間に戻る(なる)ために使って欲しいと思う。
亡くなられた木村弥生さんと夕夏さんの魂が安らかに眠られますよう、そして、木村さんのこれからの人生が、穏やかで生きる喜びが感じられる時間であってほしいと心より祈っております。

そして、被告の家庭環境の不遇が情状酌量の理由となることへの疑問を冷静に話しました。
さらに、事件後、少年法で守られる加害者に対して、被害者や被害者家族の人権はまったく顧みられなかったことや事件の真実の姿が報道を通すことによってぼやけてしまうと訴えました。
「妻は死後、強姦されています。
しかし、報道では『乱暴目的』という言い方になるんです。
これでは真実が伝わらず、どれだけ事件が悲惨だったかわかりません。
どれだけ犯人がひどいことをしたかが伝わらなければ、妻と娘は浮かばれない、
私は、そう思いました。
だから、妻が強姦されたことを自分の口から述べたんです」
よく、婦女暴行事件でも『いたずら』って表現されますよね。
これは、被害者に対する配慮的なものなのかな・・と、自分の頭の中で変換していましたが、
この表現では被害者の本当の苦痛は見えてこないように思います。
でも真実を伝えたくない場合もあるだろうし、町田さんのようにあえて真実を伝える場合もある。
一番に大切にすべきなのは、被害者の思いなんですよね。
この年、『犯罪被害者保護三法案』が国会で可決されました。
このことにより、『遺族傍聴席の確保』『公判記録の閲覧とコピーする権利』
『公判での被害者の意見陳述権』が認められた。
私が無知で知らなかったんですが、『認められた』って・・・
こんなことも認められてなかったんですね。
ここまで被害者の立場がないがしろにされていたとは・・・
2000年9月7日、控訴審 第一回公判。
この日、被告人に見えないようにという条件付きではあったが、法廷内に遺影の持ち込みが許可された。
これは広島高裁史上、初のできごとだったそうです。
社会的関心の非常に高いこの裁判のために検察と警察は協力し必死に捜査にあたりました。
その成果として、被告の秋山がまったく反省していないことを示す、文通相手に送った手紙を証拠として提出しました。
法廷で読まれた秋山の手紙は『死刑』から逃れることをおもしろおかしくちゃかしたような内容で、第一審で弁護側が訴えた『改悛の情がみられる』という陳述とは相反するものでした。
ここで北村の部下である山下(ミムラ)の声が入ります。
手紙の相手の文面は公表せず、どんな内容に対する返事かもわからないのに秋山の手紙だけを取り上げるのはおかしいと。
「検察は世論の反感を買うような秋山の文面だけをピックアップしている」山下
「TVのワイドショーとかは、喜びそうだな」同僚
「そうなんです!話題作りのために騒ぎ立てるのっておかしくないですか?」山下
何かが変わってきている・・・
裁判が世間の注目を集める中で、マスコミは秋山の手紙をセンセーショナルに扱い、
秋山の死刑を訴え続ける町田を、『死刑肯定派』の代表のように取り上げました。
さて、2000年のクリスマスイブ・・・北川は編集部で残業中。
そこに元恋人の有紀(木村多江)から電話が・・・
「前編」の始めの方で足をくじいた北川は、医師をしている有紀と病院で再会。
その時、今でも忘れられない彼女が、結婚して子供もいることを知ったのよね〜
その彼女から息子が大変だから助けてという電話が入りました。
感染性の胃腸炎で病院に運ばれたらしい。
結婚してるのに、何で旦那さん呼ばないで、北川呼ぶんだ?って思ったけど、
どうやら、この子、北川との子供みたいなんだよな〜
で、北川には告げず、一人で産んで育ててるような・・
その事に北川も気づいたようです。
このエピソード必要か?って「前編」見てる時思ったけど、町田との出会いによって北川も変わったってことなんでしょうね・・
12月26日 控訴審 第十一回公判 被害者遺族意見陳述
「妻と娘の最期を知っているのは、秋山君、君だけです。
妻は君に首を絞められ、息絶えるまでの間、どんな表情をし、どんな言葉を残したのか。
母親を目の前で殺された娘は、どんな泣き声だったのか、君はそれを忘れてはならない。
妻と娘の最期の姿、それが君の犯した罪だからです。
君が殺した人の夢や希望、人生そのものを奪ったことが罪なのだから。
君は妻と娘について何ひとつ知らない。
ただ唯一、君が妻と娘の人生を知るすべとして、妻と娘の最期の姿がある。
だから、決して忘れてはならない。
君の犯した罪は万死に値します。
いかなる判決が下されようとも、このことだけは忘れないで欲しい」町田
2002年3月14日 控訴審の判決は「控訴を棄却」。
裁判官は秋山の行為を強く断罪はしましたが、計画的殺人とは認めませんでした。
さらに証拠の手紙は、相手の手紙に触発されて書いたものと結論づけ、
被告人に反省の情が不十分なのは明らかだが、反省の情が芽生えると判断した現判決が誤りとまではいえないというものでした。
若いから、いずれ反省の気持ちが生まれることを期待するってことかい?
でも、今現在反省していないのが明らかなら罰するべきでは?
閉廷後も椅子に座り続けている町田に、裁判官は頭を下げました。
審議を重ね、裁判官として迷った末に出した苦汁の結論だったということなのかな・・
「今度の負けはただの負けじゃない気がする」北川
「つまり・・何かが変わった・・ってことか?」東野
「司法に人間の匂いがしてきたってことだ」北川
検察は上告したが、最高裁からの連絡はなかった。
そして3年の月日が流れ・・・2005年秋、最高裁は2006年3月14日に弁論を開くことを決定。
しかし当日、新しく秋山の担当となった弁護士団は準備不十分を理由に欠席しました。
「今まで7年間に渡って、裁判を傍聴してきましたが、これほどの屈辱を受けたのは、今回が初めてです。
私たち遺族は、必死の思いで裁判に向きあっています。
時間と経費をかけ、傍聴に来ているんです。
今日の弁護人の欠席が、裁判を遅らせるための策だとしたら、絶対に許せません」町田
改めて、弁論期日は4月18日と決まったが、その前日、弁護団の高岡(益岡徹)は記者会見を開き、新事実を主張しました。
佳織さん宅に侵入したのは強姦目的ではなく、亡くした母親に甘える気持ちからであり、
殺害してしまったのはそっと抱きついた時、激しく抵抗されてパニック状態に陥り、静止しようとして誤って死なせてしまったからだった。
夏海ちゃんについても、泣き止ませようとしたが泣き止まず、首に蝶々結びをしてあげているうちに死なせてしまった。
殺意はまったくなく、被告人の行為は「傷害致死」にあたるというものでした。
こんなことが通ったら、司法も人間も終りだよ・・・
改めて思うけど、裁判ってのは「真実」を明らかにする場ではないんだね・・
勝つか負けるか・・・
最高裁判決日・・・
最高裁は、第一審の『無期懲役』判決を破棄。
広島高裁へ再審理を命令しました。
ここまで来るのに、7年・・・
再審理が始まって終わるまでは2年ぐらいかかるかもしれない・・・
長い・・・長すぎる・・・
この裁判は、世論的には人権派弁護士団による『死刑反対派』VS『死刑肯定派』の様相を呈しており、死刑制度の是非を問うまでに発展していました。
「僕はべつに、死刑制度をどうのこうの思ってる訳ではありません。
ただ、この事件、佳織と夏海の事件に関しては、あの被告は当然死刑になるべきだと考えてるだけです」町田
秋になり、町田は出張のついでに、久しぶりに東京の北川を訪ねました。
町田にとって北川とは、自分が自分であることを再確認できる存在なんじゃないでしょうか・・
裁判だけでなく、町田自身もマスコミに注目され、佳織さんと夏海ちゃんのため裁判が、犯罪被害者の権利問題や死刑制度の是非、少年法の改正・・・様々な立場から関わる人々が増え、行方を見守っている。
そんな中、北川は最初から、被害者家族として闘う町田を見つめてきた。
兄のような存在でもあり、彼と会うことで町田はブレずにいられたようにも思います。
楽しく夕食を終えた後、雨宿りをしている店の前でドリカムの歌が聞こえてくると、
冷静だった町田の顔が耐えるようにゆがみ、涙が溢れました。
「すいません・・・好きだったんです・・・佳織・・この曲・・・」
「歩こう・・・歩こう」北川
町田は、佳織さんの結婚指輪をペンダントにして、いつも身につけていました。
愛する人を思うと同時に悲しみや苦しみに襲われる。
そんな中でも、大切な人の記憶は失われていく・・・町田は新たな悲しみを感じ始めていました。
「二人の笑顔は、はっきり憶えてるんですよ。
でも、それがどんな時の笑顔だったのか、どうしてその時笑っていたのか、
それが、時々思い出せなくなる時があるんです。
いつか薄れていくんでしょうか・・消えていくんでしょうか・・思い出って」町田
「記憶は消えていく。それはしかたがないことかもしれない。
でも、思いは残るんじゃないかな。
二人の笑顔を忘れなければいい。笑顔は錆びたりはしない」北川
2007年5月24日、差し戻し控訴審 初公判。
被告人の秋山は26歳になっており、町田道彦も31歳になっていた。
第三回公判、被告人質問2日目、弁護人の高岡が事件直後の状況を尋ねる中、
秋山は佳織さんと夏海さんを押入れに入れたのは「四次元ポケットだから」
「ドラえもんが願いを叶えてくれる」と思ったと答えました。
さらに、佳織さんの死後、姦淫したのは『魔界転生』にならった復活の儀式だったと発言したのです。
この発言が報道されると、世論は弁護団バッシングの流れとなり、マスコミもそれを煽るような報道を繰り返し、過熱化していきました。
ネット上でも弁護団は激しく叩かれ、日弁連に脅迫状が送り付けられる事態にまでなりました。
ここで北川の知り合いの弁護士吉崎(柄本明)の声が入ります。
「俺達はどんな凶悪犯だろうが、被告となった人間を弁護するのが仕事なんだ!
なのにあの叩かれようは目に余る!!
悪いヤツラは皆殺せ、そんなことがまかり通れば裁判などは必要なくなってしまう。
多くの冤罪も弁護士が暴いたってこと忘れるな。
いいか、北川、今のままじゃ、この国はおかしくなってしまうぞ。
世論が裁判を動かしてはならん。そうだろう?」
『町田道彦の妻子の命を奪った事件だということを片時も忘れてはならない。
死刑制度の賛否も、マスコミのメディアスクラムによる弁護団への攻撃も、
町田道彦には関わりのないことだった』北川
9月20日、差し戻し控訴審 第十回公判 被害者側意見陳述
感情に流されることなく、家族への深い愛情とその未来が断ち切られた悲しみと無念さを訴えた町田の陳述は弁護団の心にさえ響きました。
「私は家族を失って、家族の大切さを知りました。
妻と娘から、命の尊さを教えてもらいました。
私は、人の人生を奪うこと、人の命を奪うことが、いかに卑劣で許されない行為かを痛感しました。
だからこそ、人の命を身勝手に奪った者は、その生命をもって償うしかないと思っています。
それが私の正義感であり、私の思う社会正義です。
そして、司法は社会正義を実現し、社会の健全化に寄与しなければ、存在意義がないと思っています。
私は、妻と娘の命を奪った被告に対し、死刑を望みます。
そして正義を実現するために、司法には死刑を課していただきたくお願い申し上げます」
この後、突然、弁護団から被告人質問のための時間が要求されました。
弁護団としては、秋山から町田への償いの言葉を引き出そうとしたのかもしれませんが、
秋山の口から出たのは「拘置所で会って、本当の自分を見て欲しい」という自己本位なものでした。
さらに、検察とのやりとりで感情的になった秋山は「ナメないでいただきたい」と挑発的発言すらしたのです。
公判後、町田は初めて北川の前で怒りを露にしました。
「僕は被害者です。妻と娘を奪われたんだ・・
なんで・・・いつまでも許さない、悪い被害者だって・・世の中には・・
僕と同じ目に合ったら、誰だって死刑を要求するはずです!!
死刑なんて廃止すべきだと、僕はそう考えていたと思います。
もし、佳織と夏海が生きていたら、僕はそう考えていた・・
仇を討つことのどこがダメなんですかーーーーー!!
仇を討ちたいって思うことの、何が悪いんですかっ!
僕は二度と、佳織と夏海を抱きしめられないんです・・
何でこんなこと・・・誰もわかってくれないんだよ・・・
マスコミはもう、僕だけの味方をしないでください。
だって変でしょう?
秋山は裁判官より先にマスコミに死刑にされてるじゃないですか?
秋山は死刑だって、マスコミが言ってる!
変でしょ?変ですよね?絶対変です!
秋山は死刑になるべきだ!その後のことは、僕には何も考えられません・・・
想像できないんです・・・ただ苦しいだけなんです・・
すいません・・・どうかしてます、僕・・・」町田
「いいんだ。やっと今、君に届いた気がしてる。情けない!今頃・・・」北川
一人の人間としての、愛する者を奪われた者の心の叫び・・・
北川は、自分が出会った青年町田の姿を書き留めずにはいられませんでした。
制約の中で書く事を良とせず、北川は会社に退職願を出し、フリーのライターとして書き続ける道を選びました。
そして・・・差し戻し控訴審 判決公判の日がきました。
裁判長は第一審判決を破棄し、「死刑」の判決を下しました。
その理由は、弁護団が被告人から聞き出したとされる新事実は信用することができない。
さらに被告人は改善更生を願った一審二審の判決に応えることなく、虚偽の供述構築のために時間を費やした。
「結局、上告審判決の言う死刑の選択を回避するに足りる、特に酌量すべき事情は認められなかった。
以上の次第であるから、第一審判決の量刑は死刑を選択しなかった点において
軽すぎると言わざるを得ない。
主文、第一審判決を破棄する。被告人を死刑に処する」裁判長
裁判所から出てきた町田に殺到する記者たち・・・
しかし、町田の目は北川を探していました。
そして、力強く見つめる北川を見つけた町田は、静かにうなづいていました。
終わった・・んじゃなくて、これでやっと明日を見つめることができるんだよね。
これから、町田さんの人生は、やっと動き出すことができる。
その翌日、北川は広島拘置所にいる秋山を訪ねました。
面会した秋山は法廷で会った秋山と違っていました。
控訴審で秋山が陳述したことは、弁護団の作り話ではなく、初めて明かした彼の真実でした。
「僕は町田さんに本当にお詫びしたい。
死んだ二人にも謝りたい。
過去の過ちを何百遍でもすいませんと言いたい。
僕は殺めた命に対して、命をもって償うのは当たり前だと思っています」
罪と釣り合いの取れる罰を与えることは、もしかしたら加害者の救いにもつながるのかもしれないと思いました。
秋山の時のように弁護団が『死刑反対』の立場を強固にするために、『死刑』の可能性を排除してしまったら、被告人が犯した罪と向きあう機会を奪ってしまうことにならないだろうか・・・
北川は書き上げた原稿を、町田の元に届けました。
「佳織さんと夏海ちゃんへの君の思いを知るうちに、守る人がいることはなんて美しいことなんだろうと思った。
書きたくなった。俺は君たちのことを書きたいと思った。
それで決心がついた。自分が描きたいことを書こう、それで」北川
「・・・会社を。
でも・・僕は、北川さんが書かれたようなりっぱな人間じゃありません」町田
「嘘は何ひとつ書いてないよ。君が成長した自分に気づいてないだけだ」北川
「成長・・・・
そう言っていただけるのは嬉しいですけど・・・
僕はそんな成長より、家族がいて、ごく当たり前の会話をして、
一緒にごはんを食べて、風呂に入って、
おやすみなさい、おはようっ言って、一緒に笑ったり怒ったり感動して、
何にも・・何にも特別なことが起こらない時が過ぎて、
一緒に年をとっていって、誕生日やクリスマスをお祝いして・・それで」町田
北川の涙は止まりませんでした。
「すまない・・すまない・・・」
こんな辛い成長なんて、ない方がいい。
でも、人は絶望の中ですら成長する。
それは、町田さんが苦しみから目を背けることなく、支えてくれた人々との出会いを糧にして闘い続けたから。
それが町田さんの家族への深い愛情の証明だったのでしょう。
重いけれど、見ずにはいられない・・そんなドラマでした。
変に視聴者の感情を煽るような演出がなく、淡々と描いてくれたのが良かった。
それと、ひとつの考えに偏らないよう、所々で疑問を投げかける人物を登場させてくれたお陰で、より深く考えながらドラマの世界を味わえたと思います。
確かな演技力の役者さんばかりで、安心して見られましたが、
特に町田道彦を演じた眞島秀和さんの存在感には圧倒されました。
このドラマで町田道彦という人間を生ききってくれたと思います。
原作者の門田さん、ドラマ制作に関わったすべてのみなさん、そしてドラマ化を許可されたご遺族の皆様の勇気に心から敬意を表したいと思います。
そして、長かった闘いを終えた(被告弁護団は上告し、現在も係争中のようですが)町田さんのこれからの人生が穏やかで幸せに満ちたものであって欲しいと祈ります。
なぜ君は絶望と闘えたのか 前編

2012年2月20日、「光市母子殺害事件」で殺人・強姦致死の罪に問われていた大月孝行被告(犯行当時18歳)の上告審判決で最高裁は被告の上告を棄却し、被告の死刑が確定した。
妻と娘を奪われた木村洋さんの13年に渡る長すぎる戦いにやっとひとつの区切りがついた。
木村さんが会見で、「死刑は厳粛に受け止めたい」と口にされていたように、死刑確定は喜ぶべきことではないけれど、これでやっと被告が自分自身の罪と向き合うことができる機会を与えられたことは良かったと思う。
死刑制度の是非については、冤罪の問題や、罪を認識し心から悔いている者には生きて償う道もあるのではないかとの思いから、はっきりした答えは、今の私には出せない。
でも、この事件に関しては、被告に更生の余地はないと思うし、何の罪もない弥生さんと夕夏ちゃんの命、そして彼女たちと生きるはずだったご家族の未来を奪った罪は許されるべきではない、被告自身の命で償って欲しいと思う。
罪と、それに見合う罰という事を考える場合、私が一番に望むのは、罪の認識ということだ。
死刑が確定したことによって、大月被告は、初めて「死」と「生」をリアルに感じ、弥生さんたちが味わった殺される恐怖を知るのではないだろうか。
死刑執行までの間おびえ続ける日々・・・それは非人間的な残酷すぎる罰だろうか・・・
その時間が大月被告の罪の認識に繋がるかどうかもわからない。
でも、どうか、その残された時間を、人間に戻る(なる)ために使って欲しいと思う。
亡くなられた木村弥生さんと夕夏さんの魂が安らかに眠られますよう、そして、木村さんのこれからの人生が、穏やかで生きる喜びが感じられる時間であってほしいと心より祈っております。

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1. ドラマWスペシャル『なぜ君は絶望と闘えた... [ レベル999のマニアな講義 ] 2010年09月28日 18:52
内容紆余曲折の末、第一審の判決は、、、、、“無期懲役”予期していたこととはいえ、町田(眞島秀和)にとって、それは、絶望的な判決だった。マスコミを前にして町田は、毅然とし...
2. 「なぜ君は絶望と闘えたのか」前、後編☆☆☆☆ [ ドラマでポン ] 2010年09月29日 14:42
「僕がこの手で殺します」 あの判決もこの記者会見も、覚えがあります。ニュースで見ました。反面、私にとっての町田さんはいつでも「遺族」で「被害者の夫」で、彼にも仕事や日常の??..
この記事へのコメント
1. Posted by う〜みん 2010年09月28日 15:55
ドラマは見てませんが光市の事件は本当に衝撃的な事件でしたよね。私にとっては少年法についてや被害者報道について考えるきっかけになった事件でした。
人を殺しても少年だと名前も写真も報道されないのに被害者は名前も写真も報道される。何かおかしいですよね。少年事件に限らず被害者側に名前や写真を報道してよいか聞くシステムにはできないのかと思います。そんなことやってたら何も報道できないという意見もあるかもしれませんがとりあえずは匿名で報道すればいいと思うんですが..
少年法についても被害者側にはもう少し情報を開示してもいいのじゃないかなと思います。更正させるためと言われてもどういう状況で被害にあったのかとか加害者が本当に反省しているのかとか被害者側が知りたいと思うのは当然だと思うし加害者が心から罪を悔いているとわかって初めて気持ちの整理がつき立ち直ろうと思える被害者もいると思うんです。
日本最近になってようやく被害者救済の動きが出て来ましたよね。一日も早く制度を整えて今まで蚊帳の外に置かれていた被害者側に対するケアするシステムを作ってほしいと思います。
人を殺しても少年だと名前も写真も報道されないのに被害者は名前も写真も報道される。何かおかしいですよね。少年事件に限らず被害者側に名前や写真を報道してよいか聞くシステムにはできないのかと思います。そんなことやってたら何も報道できないという意見もあるかもしれませんがとりあえずは匿名で報道すればいいと思うんですが..
少年法についても被害者側にはもう少し情報を開示してもいいのじゃないかなと思います。更正させるためと言われてもどういう状況で被害にあったのかとか加害者が本当に反省しているのかとか被害者側が知りたいと思うのは当然だと思うし加害者が心から罪を悔いているとわかって初めて気持ちの整理がつき立ち直ろうと思える被害者もいると思うんです。
日本最近になってようやく被害者救済の動きが出て来ましたよね。一日も早く制度を整えて今まで蚊帳の外に置かれていた被害者側に対するケアするシステムを作ってほしいと思います。
2. Posted by きこり→う〜みんさん 2010年09月28日 18:27
>少年だと名前も写真も報道されないのに被害者は名前も写真も報道される。何かおかしいですよね。
本当におかしいと思います。
被害者だというのに名前も顔もあっという間にニュースに乗せられ、自宅まで知られてしまう。
「知る権利」といいますが、人の生活を暴く権利はないと思いますが・・・
近年の犯罪ニュースのエンターティメント化は理解できないし、不快に思います。
押尾事件もそうですが、死人に口なしがまかり通るなんて、死んでも死にきれませんよ。
私は少年事件でも、凶悪犯罪の場合、加害者の実名報道はあっていいと思います。
それだけのことをしたんだと、加害者に理解させるのも更生のひとつだと思います。
>被害者側にはもう少し情報を開示してもいいのじゃないかなと思います
そうですよね、どこまで情報の開示を望むのかは被害者によって違うと思いますが、基本、被害者側の選択が受け入れられる状態であって欲しいです。
前編で裁判は裁判所と司法、被告人の三者でやるものだという職員の声がありましたが、被害者だけが蚊帳の外なんて、どう考えてもおかしいですよ。
被害者の声に耳を傾けることは、加害者が犯した罪を認識することにも繋がるし、本当の意味での公平な審判につながるんじゃないのかなぁ・・・
私は加害者の更生よりも、辛い経験をした犯罪被害者の立ち直りを優先させる社会であって欲しいです。
本当におかしいと思います。
被害者だというのに名前も顔もあっという間にニュースに乗せられ、自宅まで知られてしまう。
「知る権利」といいますが、人の生活を暴く権利はないと思いますが・・・
近年の犯罪ニュースのエンターティメント化は理解できないし、不快に思います。
押尾事件もそうですが、死人に口なしがまかり通るなんて、死んでも死にきれませんよ。
私は少年事件でも、凶悪犯罪の場合、加害者の実名報道はあっていいと思います。
それだけのことをしたんだと、加害者に理解させるのも更生のひとつだと思います。
>被害者側にはもう少し情報を開示してもいいのじゃないかなと思います
そうですよね、どこまで情報の開示を望むのかは被害者によって違うと思いますが、基本、被害者側の選択が受け入れられる状態であって欲しいです。
前編で裁判は裁判所と司法、被告人の三者でやるものだという職員の声がありましたが、被害者だけが蚊帳の外なんて、どう考えてもおかしいですよ。
被害者の声に耳を傾けることは、加害者が犯した罪を認識することにも繋がるし、本当の意味での公平な審判につながるんじゃないのかなぁ・・・
私は加害者の更生よりも、辛い経験をした犯罪被害者の立ち直りを優先させる社会であって欲しいです。
3. Posted by う〜みん 2010年09月29日 13:35
「犯罪ニュースのエンターテイメント化」本当にそうですよね。加害者の事ならまだしも被害者の過去や私生活を暴いて被害者側を更に傷付けるような報道はやめてほしいと思います。それにああやって派手に報道するから模倣犯も増えるんじゃないかと思います。
そう言えば「スポットライト」でキャップが「深く掘り下げた報道」と言ってましたが今の報道は掘り下げる方向を間違えてるような気がします。何故事件が起きたのか、どうやったら同じような事件を防ぐ事ができるのかに関しては深く掘り下げてほしいけれど視聴率狙いの派手な報道は控えてほしいと思います。
そう言えば「スポットライト」でキャップが「深く掘り下げた報道」と言ってましたが今の報道は掘り下げる方向を間違えてるような気がします。何故事件が起きたのか、どうやったら同じような事件を防ぐ事ができるのかに関しては深く掘り下げてほしいけれど視聴率狙いの派手な報道は控えてほしいと思います。
4. Posted by じゃすみん 2010年09月29日 14:41
こんにちは!
流石wowow、抑えた中にも情熱のほとばしる素晴らしいドラマでしたよね。(時々字のでる演出が、NHK仕事の流儀みたいだったかも)
前編できこりさんも書いてらした様に、ひとりでも多くの人に、見てもらいたいそして考えてもらいたいと思えるドラマでした。
……でも自分ではもう苦しくて見直したくありません(><)
今日誘われて見た映画が、なんの偶然かこれまた遺族の苦しみを描いたものでもので(「瞳の奥の秘密」)、犯罪を元から断つ方法はないものなのかと、ただいま茫然自失中です。
あと上で書かれてる報道についてですが、例えば自殺についても、遺書にある以上の原因を推測したり、手法を紹介することは連鎖を招くので、本来は決してしてはいけないことなのだそうですが……実質野放しですよね。
殺人の報道に関しても、レイプの有無や刺した回数なんて周知してなんの益があるのやら。
普段のドラマで、お茶の間で何度も死体見ている状況も異常なんだなと改めて思ったりしました。
TBさせてイタダキマス♪
流石wowow、抑えた中にも情熱のほとばしる素晴らしいドラマでしたよね。(時々字のでる演出が、NHK仕事の流儀みたいだったかも)
前編できこりさんも書いてらした様に、ひとりでも多くの人に、見てもらいたいそして考えてもらいたいと思えるドラマでした。
……でも自分ではもう苦しくて見直したくありません(><)
今日誘われて見た映画が、なんの偶然かこれまた遺族の苦しみを描いたものでもので(「瞳の奥の秘密」)、犯罪を元から断つ方法はないものなのかと、ただいま茫然自失中です。
あと上で書かれてる報道についてですが、例えば自殺についても、遺書にある以上の原因を推測したり、手法を紹介することは連鎖を招くので、本来は決してしてはいけないことなのだそうですが……実質野放しですよね。
殺人の報道に関しても、レイプの有無や刺した回数なんて周知してなんの益があるのやら。
普段のドラマで、お茶の間で何度も死体見ている状況も異常なんだなと改めて思ったりしました。
TBさせてイタダキマス♪
5. Posted by きこり→う〜みんさん 2010年09月29日 21:11
>それにああやって派手に報道するから模倣犯も増えるんじゃないかと思います。
そうですよね。
報道というよりは、本当にショーのようになって、視聴者を変に煽ってるような雰囲気を感じます。
いつからこんなふうになってしまったのか・・・
視聴者が喜ぶと思ってやっているんだとしたら、
ナメられたもんです。
>何故事件が起きたのか、どうやったら同じような事件を防ぐ事ができるのかに関しては深く掘り下げてほしいけれど
本当にそう思います。
司法とは違った切り口から、犯罪を解明し、広く世間に訴える・・
報道には報道にしかできない方法で、犯罪を抑止することもできるんじゃないかと思っています。
そうですよね。
報道というよりは、本当にショーのようになって、視聴者を変に煽ってるような雰囲気を感じます。
いつからこんなふうになってしまったのか・・・
視聴者が喜ぶと思ってやっているんだとしたら、
ナメられたもんです。
>何故事件が起きたのか、どうやったら同じような事件を防ぐ事ができるのかに関しては深く掘り下げてほしいけれど
本当にそう思います。
司法とは違った切り口から、犯罪を解明し、広く世間に訴える・・
報道には報道にしかできない方法で、犯罪を抑止することもできるんじゃないかと思っています。
6. Posted by きこり→じゃすみんさん 2010年09月29日 22:45
こんばんわ〜!
8月からWOWOW契約したんで、ドラマを見られるようになりました〜
10月から入る「マークスの山」、11月からの「幻夜」もすごく楽しみです。
そうそう「プロジェクトランウェイ6」も始まりますもんね〜
>時々字のでる演出が、NHK仕事の流儀みたいだったかも
そうそう、何か普通の地上波のドラマとは違うぞ〜!って雰囲気で(笑
でも、これは本当に多くの人に見て欲しいドラマだと思いましたよ。
>遺族の苦しみを描いたものでもので(「瞳の奥の秘密」)
あらすじと解説をネットで読みましたが、見終わったあとドーンときそうな感じですね。
私も淡々と描いてるだけにラストの幸せそうな町田さん一家の姿が苦しくて・・もう二度とこの時は戻らないんだなと犯人の罪深さに呆然とするというか・・
>遺書にある以上の原因を推測したり、手法を紹介することは連鎖を招くので、本来は決してしてはいけないことなのだそうですが
常識の範囲内ってことなのかもしれないですが、
そんなのどっかに行っちゃったんでしょうね。
何のための報道なのか、流してしまえば後は関係ないって感じですよね。
自分自身に対しても思うことがあるんですが、「死」に対して鈍感になってるんじゃないでしょうか。怖いですよね。
8月からWOWOW契約したんで、ドラマを見られるようになりました〜
10月から入る「マークスの山」、11月からの「幻夜」もすごく楽しみです。
そうそう「プロジェクトランウェイ6」も始まりますもんね〜
>時々字のでる演出が、NHK仕事の流儀みたいだったかも
そうそう、何か普通の地上波のドラマとは違うぞ〜!って雰囲気で(笑
でも、これは本当に多くの人に見て欲しいドラマだと思いましたよ。
>遺族の苦しみを描いたものでもので(「瞳の奥の秘密」)
あらすじと解説をネットで読みましたが、見終わったあとドーンときそうな感じですね。
私も淡々と描いてるだけにラストの幸せそうな町田さん一家の姿が苦しくて・・もう二度とこの時は戻らないんだなと犯人の罪深さに呆然とするというか・・
>遺書にある以上の原因を推測したり、手法を紹介することは連鎖を招くので、本来は決してしてはいけないことなのだそうですが
常識の範囲内ってことなのかもしれないですが、
そんなのどっかに行っちゃったんでしょうね。
何のための報道なのか、流してしまえば後は関係ないって感じですよね。
自分自身に対しても思うことがあるんですが、「死」に対して鈍感になってるんじゃないでしょうか。怖いですよね。