「帰ってきた時効警察」第五回「生徒諸君!」第四回

2007年05月12日

「わにとかげぎす」第三巻 古谷実

 さて、2巻では、「孤独を罪と捕らえ初めた」富岡が、
自分に脅迫状を送ってまで夜警の仕事をしたがっていた雨川と
夢の女を捜していると言う大バカもの花川と働く羽目になった状況を受け入れ楽しみ始めたところから始まった。
 馬鹿馬鹿しいながらも一般人としての幸せを感じようとする富岡だったが、
ヤクザの情婦を好きになった雨川が彼女のために行動を起こし始めた時から
一気に禍々しい世界へと巻き込まれてしまう。

 この作者の特徴として、主人公の幸福と不幸のふり幅がでかすぎるというものがある。
太陽の下を歩こうと思っていたら、急に深くて暗い落とし穴に落ちてしまうように
極端な世界に突入してしまう。

 ヤクザの情婦にヤクザの金庫を盗むように頼まれた雨川は花川に協力を頼み
略奪と投棄に成功したかに見えた・・が、たまたま、そこで、父親を殺したばかりの頭のイカレた男と出会ってしまう。拉致と脅迫・・
 仕事に戻らない雨川達の事が心配になった富岡は、なりゆきから羽田(富岡を大好きな隣人の女)と一緒に捜索に向かい、2人を救出するのだが・・(ここまでが2巻)

 オチをつけたのは雨川だった。
男を殺し少年院へ。
花川は金庫に入っていた金を持って逃亡・・・
事件に関わってしまった富岡は仕事も失い、自分を責める日々・・・
 だが、リアルに死の恐怖と直面した富岡はそのショックをきっかけにして
人生の方向転換を試みる。
そんな富岡に以前から熱い気持ちを抱いていた羽田は
「わたしと付き合ってみませんか?」と引越し覚悟で提案、
迷いながらもその話に乗ってみた富岡の初めての男女交際が始まる。

 何で、羽田がこんなさえないおっさんに固執するのか・・それは好みとしかいいようがないんだが・・・
この2人の会話はじっくりと描かれる。
何だろう・・このおもしろさは・・・
銃を突きつけられた緊迫感の中で思わず出ちゃった「ユーモアのある会話」のようなな・・
追い詰められた者の口からしぼりだされるようなギリギリ感のある言葉が何ともいえないんだよな〜

 富岡は不幸に巻き込まれるのと同じように、幸福にも巻き込まれていく。
そして幸福そうなのに、見てるほうは常に不安感が捨てきれない。
幸福度が高ければ高いほど、振り子のように不幸の方にも勢い良く動くのではないか?という感覚が捨てきれないのだ。



 富岡はまた夜警の仕事に就職する。
そこで出会った斉藤君、11年もたった一人で夜警の仕事をしてきた。
悪いことを考えようとする男ではないが、友達も彼女もいなくて全然平気で生きていけると本気で思ってる男だ。
感覚が凍ってるというか心の動きが滞っていた男が、ストーカー被害で困っている若井さんとの出会いによって変化を見せる。

 斉藤は若井さんとの出会いによって人間らしい感覚が開いてきたともいえるのだが、それはダムが大雨によって突然決壊するような危険もはらんでいた・・・
「富岡さんもさんざん言ってたじゃない?
オレに変われ変われって・・俺本当に変わっちゃうよ?スカッと一発突き抜けちゃうよ?
どうなるかわからないけど・・・それでもちょっとはつきあってくれる?」
またしても不安な予感・・・
 でも、続きが見たい、すごく見たいぞ・・・

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